イギリス・春を待ちわびる花、春を告げる花 | BRITISH MADE

English Garden Diary イギリス・春を待ちわびる花、春を告げる花

2017.02.16

ダファディル(Daffodil)をご存知でしょうか。

日本では「黄水仙」などとも呼ばれるラッパ水仙のことですが、これはイギリスの春を象徴する花です。

有名な詩人、ワーズワースの代表作のひとつと言われる「I Wandered Lonely as a Cloud」は、別名「The Daffodils」と呼ばれるポエム。この中で、踊るように咲いているラッパ水仙の黄金の群は、この国では誰もがすぐに思い浮かべることができる光景です。
水仙 この時期は窓辺にこの花を飾っている家も多い
以前、このコラムにも書きましたが、イギリスでは多くの人が秋になるとたくさんのラッパ水仙の球根を植えます(昨秋は私も60個ほど植えつけました)。この花は、どんな植え方をしても、たいていはちゃんと咲いてくれる(つまり手入れが簡単)。そして、球根の値段が安い、というのが人気の理由でもあります。

でも、イギリスの人々が水仙を好む一番の理由はやはり、この鮮やかな黄色が、春を告げてくれるシンボルだからでしょう。

庭でこの花が咲くのは3月以降のこと。寒くて暗く、そしてしとしと雨が続く2月は、まだやっと芽が伸びてきたところです。

とはいえ、この時期には、あちこちのスーパーで「イギリス産」と書かれたダファディルの切り花(つぼみの状態のもの)を見かけるようになります。

値段はとても安く、一束が1ポンド程度。これを人々は次々に、一束、また一束と買い物カゴに入れていきます。
つぼみの水仙 英国産ダファディルズはたいてのスーパーで気軽に購入できる
庭の水仙が咲くのはまだまだ。けれど、あのまぶしいほど鮮やかな黄色(=春)を待ちきれず、一足はやくスーパーに並ぶこの花を買わずにはいられないのです。

湿気が少なく日本に比べて切り花の保ちがいいイギリスでも、花の寿命はせいぜい1週間弱くらい。でも、安価なので、花が終わりそうになったら、また新しい束を買ってきて生け替えます。春を待ちわびるように、しばらくはそれを繰り返すのです。
活けた水仙 買ってきた翌日にはつぼみが開いて鮮やかな黄色を見せてくれる
花が咲ききるにつれて香気を増すこの花は、私がイギリスで初めて暮らした家のオーナーもお気に入りでした。イギリスの冬を何度か過ごしてみると「cheap and cheerfulで香りもいいから、この季節にはいつもこの花を買うの」と言っていた彼女の気持ちがよくわかります。

そして、3月に入り、ようやく庭や公園でこの花が咲く姿を見かけるようになると、人々は「ああ、やっとイギリスにも春が来た」とほっとするのです。

イギリス国内には1898年に設立されたという「The Daffodil Society」まで存在しています。また、ダファディルはウェールズの国花でもあります。ウェールズでは、3月1日がウェールズの守護聖人、聖デイヴィッドを記念する「St David’s day」です。その際に、国のシンボルであるリーク(ポロネギ)とともに、人々はダファディルの花を身につけて祝うのだそうです。
庭に植えた水仙 庭に植えた水仙が咲くまでには、もう少しの辛抱が必要
我が家でもキッチンの窓辺にこの花を飾っています。庭の水仙が咲くまで、この花たちをながめながら春を待つことにします。

Text&Photo by Mami McGuinness




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マクギネス真美

マクギネス真美

英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。

ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。

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