「ねぇ、エルダーフラワーってどんな花なの?」
最近、日本にいる友人から、メールやLINEを通じて何回かこの質問を受けました。
というのも、先月の19日に行われたイギリス王室のハリー王子と、アメリカ人俳優メガン・マークルさんの結婚式でのウェディング・ケーキが「レモンとエルダーフラワー・コーディアルを使ったスポンジケーキ」だったからです。
エルダーフラワーは、5月半ばから6月初旬にかけて咲く、クリーム色がかった小さな花。日本では西洋ニワトコとよばれています。大きなものは樹高が10mほどにもなり、古くから薬用ハーブとして利用されてきた植物です。
人々はこの花を集め、レモンを加えて、たっぷりのお砂糖とともにシロップを作ります。そのシロップが「エルダーフラワー・コーディアル」と呼ばれるもので、水や炭酸水で薄めて飲んだり、お菓子作りにも利用されます。そして今回は、ロイヤル・ウェディングのケーキにも使われることになりました。
しかし、「これまでのイギリス王室の伝統にとらわれない」という言葉が、まるで枕詞のようにあらゆる要素について使われた今回のロイヤル・ウェディングでは、もちろん、ウェディング・ケーキもその例にもれません。
そして、ハリー王子とメガンさんが選んだのは、エルダーフラワー・コーディアルと、イタリア・アマルフィ産のレモンを使ったスポンジケーキだったというわけです。
ケーキを担当したのは、カリフォルニア出身で、ロンドンに「ヴァイオレット」というお店を開いているクレア・プタックさん。彼女が作ったウェディング・ケーキは、スポンジケーキをバタークリームで覆い、生花で飾り付けるという、これまでの伝統とはまったく違うものでした。クレアさんは、エルダーフラワーについて、「とてもイギリスらしさを感じさせる花」だとインタビューで語っています。
ちなみに、ケーキに使用されたエルダーフラワー・コーディアルは、イギリスのノーフォークにあるエリザベス女王の別邸「サンドリンガム・ハウス 」の敷地内にあるエルダーフラワーを使って作られたものだそうです。イギリス王室の発表によれば、ケーキに使用されたのはボトル10本分のコーディアルといいますから、ウェディングの時期、サンドリンガム・ハウス には、さぞやたくさんのエルダーフラワーが咲き誇っていたのでしょう。
このように、イギリス人が、そして私も大好きなエルダーフラワー・コーディアルは、スーパーなどで瓶入りのものが簡単に購入できます。また、最近では日本でも販売されているようですね。
市販のものは手軽ですし、一年中いつでも手に入って便利です。ただ、ホームメイドのものは香りが格別。一度それを知ってしまうと、やはり、この時期にエルダーフラワーを見かけると、コーディアルを手作りせずにはいられません。作り方はとても簡単ですので、もしも、エルダーフラワーを見つけたら、ぜひコーディアル作りを試してみることをおすすめします。
エルダーフラワー……10~20個(茎は入れずに、花のみ使用)
水……600ml
砂糖……900g
レモン……1個
クエン酸……30g
作り方:
1.摘み取ったエルダーフラワーについたゴミや虫を水で軽くあらって取り除く。
2.鍋に入れた600mlの水に砂糖を加え、砂糖が溶けるまで煮る。
3.2にクエン酸を加えて溶かす。
4.ボウルに花を入れ、そこに、レモンの皮と輪切りにしたレモンを入れる。
5.4の上から3を注ぐ。
6.ラップをして半日~1日置く(途中ときどきかき混ぜて様子をみて、香りが十分にシロップに移っていたらできあがり)。
7.ざるの上に手ぬぐいなどをかぶせてシロップを漉す。
8.煮沸消毒した瓶に入れて出来上がり。
*ミネラルウォーターや炭酸水で割って氷を入れ、スライスしたレモンやミントなどを加えて飲んだり、ワインやウォッカ等のアルコール類に加えてカクテル風にしてもおいしいです。
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最近、日本にいる友人から、メールやLINEを通じて何回かこの質問を受けました。
というのも、先月の19日に行われたイギリス王室のハリー王子と、アメリカ人俳優メガン・マークルさんの結婚式でのウェディング・ケーキが「レモンとエルダーフラワー・コーディアルを使ったスポンジケーキ」だったからです。
エルダーフラワーは、5月半ばから6月初旬にかけて咲く、クリーム色がかった小さな花。日本では西洋ニワトコとよばれています。大きなものは樹高が10mほどにもなり、古くから薬用ハーブとして利用されてきた植物です。
小さなクリーム色の花が集まったエルダーフラワー。近づくと、青く爽やかな香りがします。
イギリスでは、庭の隅にこの木を植えている家も少なくありません。また、広場や道端など、さまざまな場所に育っていて、とても身近な植物です。とはいえ、冬には幹と枝だけになってしまうので、ほかの木々との見分けはつきません。人々がこの木の存在に気づくのは、小さな花が房になってたわわに咲き、マスカットのような爽やかな香りを放つ今の季節です。イギリス人にとってこの花は、初夏の訪れを告げてくれる、特別な存在なのです。人々はこの花を集め、レモンを加えて、たっぷりのお砂糖とともにシロップを作ります。そのシロップが「エルダーフラワー・コーディアル」と呼ばれるもので、水や炭酸水で薄めて飲んだり、お菓子作りにも利用されます。そして今回は、ロイヤル・ウェディングのケーキにも使われることになりました。
レモンを入れすぎると、レモンの香りと味が強くなってしまうので、加減して。
イギリスの伝統的なウェディング・ケーキといえば、ドライフルーツがぎっしり入った、どっしりとしたケーキを、マジパンで包み、さらにその上を砂糖のアイシングで覆い、装飾を施すというものでした。一説によると、これはヴィクトリア女王の時代から続く習慣と言われますから、170年以上の長い歴史があります。しかし、「これまでのイギリス王室の伝統にとらわれない」という言葉が、まるで枕詞のようにあらゆる要素について使われた今回のロイヤル・ウェディングでは、もちろん、ウェディング・ケーキもその例にもれません。
そして、ハリー王子とメガンさんが選んだのは、エルダーフラワー・コーディアルと、イタリア・アマルフィ産のレモンを使ったスポンジケーキだったというわけです。
ケーキを担当したのは、カリフォルニア出身で、ロンドンに「ヴァイオレット」というお店を開いているクレア・プタックさん。彼女が作ったウェディング・ケーキは、スポンジケーキをバタークリームで覆い、生花で飾り付けるという、これまでの伝統とはまったく違うものでした。クレアさんは、エルダーフラワーについて、「とてもイギリスらしさを感じさせる花」だとインタビューで語っています。
ちなみに、ケーキに使用されたエルダーフラワー・コーディアルは、イギリスのノーフォークにあるエリザベス女王の別邸「サンドリンガム・ハウス 」の敷地内にあるエルダーフラワーを使って作られたものだそうです。イギリス王室の発表によれば、ケーキに使用されたのはボトル10本分のコーディアルといいますから、ウェディングの時期、サンドリンガム・ハウス には、さぞやたくさんのエルダーフラワーが咲き誇っていたのでしょう。
花を摘むのは、天気の良い日の早朝、できるだけ開きたての花を選ぶと良いと言われています。
私がエルダーフラワー・コーディアルを初めて知ったのは、イギリスに住んで初めての夏。友人の家でバーベキューを食べた時、大きなガラス製のジャグに、エルダーフラワー・コーディアルを炭酸水で割ったものが入っていました。一口飲んでみて、すぐに気に入ったのは、ただ甘いだけでなく、ほんのりとした酸味と爽やかさの中に、「大地の香り」を感じたから。まさに「自然をいただいている」といったこの香りと味が、エルダーフラワー・コーディアルの魅力だと思います。このように、イギリス人が、そして私も大好きなエルダーフラワー・コーディアルは、スーパーなどで瓶入りのものが簡単に購入できます。また、最近では日本でも販売されているようですね。
市販のものは手軽ですし、一年中いつでも手に入って便利です。ただ、ホームメイドのものは香りが格別。一度それを知ってしまうと、やはり、この時期にエルダーフラワーを見かけると、コーディアルを手作りせずにはいられません。作り方はとても簡単ですので、もしも、エルダーフラワーを見つけたら、ぜひコーディアル作りを試してみることをおすすめします。
槇原敬之さんの歌に「Elderflower Cordial」という曲があり、そこでは「土と花の甘い香りのElderflower Cordial」と歌われています。
エルダーフラワー・コーディアルの作り方
材料:エルダーフラワー……10~20個(茎は入れずに、花のみ使用)
水……600ml
砂糖……900g
レモン……1個
クエン酸……30g
作り方:
1.摘み取ったエルダーフラワーについたゴミや虫を水で軽くあらって取り除く。
2.鍋に入れた600mlの水に砂糖を加え、砂糖が溶けるまで煮る。
3.2にクエン酸を加えて溶かす。
4.ボウルに花を入れ、そこに、レモンの皮と輪切りにしたレモンを入れる。
5.4の上から3を注ぐ。
6.ラップをして半日~1日置く(途中ときどきかき混ぜて様子をみて、香りが十分にシロップに移っていたらできあがり)。
7.ざるの上に手ぬぐいなどをかぶせてシロップを漉す。
8.煮沸消毒した瓶に入れて出来上がり。
*ミネラルウォーターや炭酸水で割って氷を入れ、スライスしたレモンやミントなどを加えて飲んだり、ワインやウォッカ等のアルコール類に加えてカクテル風にしてもおいしいです。
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イギリス王室も推進。暮らしに取り入れて豊かなハーバル・ライフを
マクギネス真美
英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。
ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。
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