数えきれないほど多くの著名なガーデンが存在するイギリスで、このところ最も注目を集めているひとつを訪ねてきました。それは、イングランド南西部のサマセットにある「ハウザー&ワース・サマセット(Hauser & Wirth Somerset)」のガーデンです。
「アウドルフ・フィールド(Oudolf Field)」。同年9月14日にギャラリーの建物の後にお目見えしたガーデンにつけられた名前です。「Garden」ではなく「Field」。そう、この庭は野趣にあふれ、「オーナメンタル・グラス」と呼ばれる細長いラインの草が印象的な、野原のような庭なのです。ギャラリーの売店で購入できる「Oudolf Field」のブックレットでは「多年草のメドウ」と表現されているように、ここでは「野の花」とよびたくなるような花たち、そして草たちが見事な野原を作り出しているのです。その数はなんと2万6000株。
ふわふわと揺れる草の穂の奥に濃いピンクの花がアクセントをつけているかと思えば、一方のセクションではクリーム色がかった白とモーヴ色のなんとも穏やかな組み合わせがあったり。また、花期が終わって枯れて茶色くなった花さえもしっかりとデザインの重要なパートを占めているというのもよくわかります。
「冬に来た時には、皆枯れてしまっていて、何もなかったのよ。今が一番いい時期かもしれないわ。」と地元に住んでいて度々この庭を見に来るという女性が教えてくれました。
確かに秋のアウドルフ・フィールドは素晴らしいはずです。それが証拠に(?)人気のガーデン雑誌『Gardens Illustrated』の9月号で、この庭の特集が組まれていました。プロはもとよりアマチュア園芸家にとっても、この庭はたくさんのインスピレーションを得ることのできる、現代のイギリスガーデンを代表するひとつなのです。前述の女性は冬には何もなかった、と言っていましたが、実はピート氏のデザインは、草花が枯れてしまった冬の風景さえも計算に入れて植物が選ばれています。だから、できることなら秋に限らず、四季折々に訪れて、その季節ごとの景色を味わってみたいものです。
草と花のバランスが絶妙のデザイン
ハウザー&ワースはチューリッヒに本店、ロンドンやニューヨーク、ロサンゼルスに支店をもつ世界的に著名なギャラリー。そのギャラリーが、サマセットにあった18世紀の農場をコンテンポラリーアートの展示を中心とするアート施設へと改装、2014年にオープンしました。 ハウザー&ワース・サマセット
その全体のランドスケープ・デザインを手がけたのが、現代で最も影響力のあるガーデン・デザイナーのひとりと言われるピート・アウドルフ(Piet Oudolf)氏です。オランダ出身のピート氏はニューヨークの空中庭園「ハイライン」のプロジェクトで世界にその名が知れ渡りました。イギリス内でもイギリス王立園芸協会の「ウィズリー・ガーデン」や、2011年の「サーペンタインギャラリー・パビリオン」内のガーデンをはじめとして、多くのデザインが知られています。「アウドルフ・フィールド(Oudolf Field)」。同年9月14日にギャラリーの建物の後にお目見えしたガーデンにつけられた名前です。「Garden」ではなく「Field」。そう、この庭は野趣にあふれ、「オーナメンタル・グラス」と呼ばれる細長いラインの草が印象的な、野原のような庭なのです。ギャラリーの売店で購入できる「Oudolf Field」のブックレットでは「多年草のメドウ」と表現されているように、ここでは「野の花」とよびたくなるような花たち、そして草たちが見事な野原を作り出しているのです。その数はなんと2万6000株。
華やかなバラ園などとはまったく異なる風景が平がるガーデンです
庭全体は17のセクションに分かれていて、その間の小道は直線ではなく、ゆるやかなカーブを描いています。そのため、道を曲がるたびに目の前に別の景色が広がり、そのつど、各植物のテクスチュアーと形、そして色にはっとさせられます。 中央奥の白い建物はSmiljan Radicによる2014年のサーペタインギャラリー夏季限定パビリオンだったもの
ガーデンを訪ねたのは8月後半でしたが、イギリスの気候ゆえか日本では秋の花とされるワレモコウや秋明菊もすでに咲き揃っていました。そのせいか日本人の私にはどこか馴染みのある風景のように感じる部分があったのは、楽しい驚きでした。 確かに秋のアウドルフ・フィールドは素晴らしいはずです。それが証拠に(?)人気のガーデン雑誌『Gardens Illustrated』の9月号で、この庭の特集が組まれていました。プロはもとよりアマチュア園芸家にとっても、この庭はたくさんのインスピレーションを得ることのできる、現代のイギリスガーデンを代表するひとつなのです。前述の女性は冬には何もなかった、と言っていましたが、実はピート氏のデザインは、草花が枯れてしまった冬の風景さえも計算に入れて植物が選ばれています。だから、できることなら秋に限らず、四季折々に訪れて、その季節ごとの景色を味わってみたいものです。
背景に見える丘や木々も計算してデザインがされています
なお、ハウザー&ワース・サマセットは庭だけでなく、ギャラリーの展示も興味深いものが多く、また地元の素材を使った料理が人気で遠方からも多くの人が訪れてくるレストラン「Roth Bar & Grill」もおすすめです。 ギャラリーに併設のレストランでは、キッチン・ガーデンで育てられた野菜が料理に使われています
(Piet Oudolf氏の名前について、日本では「オウドルフ」「ウードルフ」等の表記もあるようですが、本稿では「アウドルフ」が発音に近いと考え、そう表記しています。) *ピート・アウドルフ氏 ウェブサイト:http://oudolf.com/
*ハウザー&ワース・サマセット ウェブサイト:http://www.hauserwirthsomerset.com
マクギネス真美
英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。
ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。
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