先日、会社の定期健診を受けに人形町まで行ってきました。
病院というものがどうしても好きになれない私は、朝から憂鬱。
電車を乗り、健診会場に向かい診察を受ける。ただそれだけですが、良い気分はしません。
健診はあっという間に終わり、食事も済ませもう帰ろうと思い歩いていると。おや?と目を奪われるものがありました。
突然、目前に現れるユニオンジャック。仕事柄、なんとなく通り過ぎるわけもいかず、店前の看板に目をやりました。
紅茶とスコーンとメニューには記載。これはいかにもブリティッシュ。そして入口には小庭。
こうなると、入らざるをえない使命感にかられます。
勇気を持って扉を開けると、そこには英国を感じさせるかわいらしい飾り付けと、食器、雑貨、家具たちが並んでいました。
異空間といえば大げさですが、ナチュラルで温かみのある雰囲気は、東京の都心にあるとは思えない穏やかさを感じさせます。
太陽の光が注ぐ店内は明るく、清潔感があり、なんとも言えぬ居心地の良さ。席に着くとすっかりこのお店に魅了されていました。
こんなお店との出会いに興奮してしまい、オーナーに自分がブリティッシュメイドで勤めていること、このお店に感動したことを伝え、お話をさせて頂くことに。
突然のお願い快く応えてくれた、オーナーの慶本さん。
お店をオープンするきっかけは、日本でもよく目にする英国関連の雑誌。その雑誌編集者の方と仲良くなり、英国の事を改めて知り、ティールームの魅力を再認識したそう。
元々料理やお菓子を作るのが好きだったそうですが、日本の整ったお菓子とは違う、素朴な魅力をもったイギリスのお菓子にも興味を持ち自作するように。
素朴ながら、どこか温かみがあり、味わいがある。洋服にも当てはまるところはあるかと思います。
イギリス製品の持つ少し不器用な感じは、裏を返せば大きな魅力。
洋服と食べ物、ジャンルは違うかもしれませんが、そうした部分で互いに共感できる部分がありました。
すっかり話に夢中でしたが、話しているだけでは、このお店の良さは語れません。メニュー表に目を向け、気になるものをチョイス。
食事あとだったこともあり、まずは紅茶をお願いしました。
出てきたのは、先ほど目に入ってきた植物が描かれたカップアンドソーサー。
こうした茶器や食器類も慶本さんがイギリスで購入し、お店に並べているそう。
近くで見るとより可愛らしく、実際に紅茶を注ぐと、紅茶の色が引き立つ工夫がされています。
紅茶本来の色が見えるよう、飲み口より下に柄はなく白地になっています。
ちょっとしたことですが、紅茶をより楽しんでほしいというイギリス人のこだわりを感じました。
甘党な私は時間を置いて、濃い目の紅茶に砂糖とミルクをしっかり入れてひとくち。
ミルクに負けないほどいい渋味がありつつ、香りは華やかで後味がよい、非常に口当たりのいい紅茶です。
ポットにはティーバッグで茶葉が入っています。
抽出する時間によって濃度が変わっていくので、
ストレートで飲みたい場合は早めに茶葉を取り出すのがおすすめです。
紅茶だけでは飽き足らず、次はスコーンを注文。カウンターに並ぶお菓子たちはどれも手作り。
既製品とは違う温かみを感じられ、表面につく焼き色ひとつひとつがなんとも美味しそう。
お菓子の知識がないので教えていただいたのですが、スコーンにできる横割れは”オオカミの口”と言われ、
上手に焼けたスコーンにはこのオオカミの口が必ずできるそうです。
このオオカミの口をぱかっと開き、そこにクロテッドクリームやレモンカードを塗って食べるのがイギリス流。
私はどちらも初めて口にしたのですが、クロテッドクリームが甘くないということを初めて知り驚きました。
濃厚というよりも、口溶けが良くさっぱりしており、レモンカードと合わせるとちょうどいい酸味と甘さになります。
食後だったにも関わらず、あと二つ三つ食べたいと思わせる味でした。
こうしてお茶とスコーンを楽しみ、イギリスについて話してみたり、そんなことをしている間に時間はあっというまに過ぎていきます。
お店に来ていた常連の方ともお話し、すっかり和やかな雰囲気。イギリスが好きという共通点が、いつもより簡単に人を繋いでいきます。
その傍らには、ご夫婦で来ている方、本を片手にゆったりと過ごす方もおり、楽しみ方も人それぞれ。
普段生活をしていると、こんな風に時間を有意義に使うことを忘れがちです。
社会人であれば仕事や、家庭もあるでしょうし、自分の時間をおざなりにしていることが多いのではないでしょうか。
私もその一人ですし、読者の方にも思い当たる節があるのではと思います。
そんな時に、ゆっくりティールームに足を運び心を休める。
美味しいものを楽しみ、さまざまな会話に華を咲かせ、時間を過ごす。
きっとイギリスの地で過ごす方々も、そんな時間を大切に生活されているのでしょう。
それが日本で、しかも都心の真ん中でできる贅沢は格別です。
ティールームで素朴な温かみある時間をぜひ。
今日はそんなおすすめでした。
インタビューや撮影に応じてくださった、慶本さん。改めてありがとうございました。
素敵なお店とこのような縁に感謝を込めて。またお店にも足を運びますね。
青山本店 栃堀