デザイナーであるマイケル・ヒルとの初めての記憶はドレイクス銀座店がオープンする直前の商品説明会の時のことでした。それは2017年の春の頃で、偶然にも彼も私もJM.ウエストンの180シグネチャーローファーを履いていました。私の小さな足とマイクの大きな足を互いに見せ合い親子のような足の大きさの違いに笑い合ったことを記憶しています。
その説明会中もその後も日本滞在中に彼がしきりに言っていたのは、『Nakaさん、それはコンフォータブルか?』という言葉でした。彼のファッションにとってコンフォータブル(快適な、心地よい)であるかどうかということがとても重要な要素を占めていることをその短い期間に私は強く感じることができました。
上写真 AW2017ルックブックより
彼の美学はシューズにも一貫して現れています。ドレイクス銀座店が始まった当初の頃はオールデンのスエードチャッカ―ブーツやコードバンのシューズをスタイリングに取り入れ、その後パラブーツのアヴィニョンなども使用されていました。それらのシューズに共通して言えることは、肩肘張らずにリラックスして履けるシューズだということです。
上写真 AW2017ルックブックより
少なくとも3年以上前からドレイクスのスタイリングにはスエードのチャッカ―ブーツが必ず使われており、特にこのデザインのシューズはドレイクスにとってなくてはならないアイテムの一つでした。なぜドレイクスではあまり表革のシューズを履かないのでしょうか。もちろん履いていないわけではないのですが、これまで見受けられていたのはコードバンやパラブーツのリスレザーなどでありスムースレザーを見ることはほとんどありません。
スーツスタイルに関してもウールのスーツは少なく、印象深いのはコットンツイルやコーデュロイ、リネン生地などカジュアルな雰囲気でラフに羽織れるものばかりです。そういったカジュアルとドレスの間のスタイルを提案しているのがドレイクスの興味深い点でもあり、そのようなスタイルにマッチするのがこのスエード生地でありブーツのスタイルだったのでしょう。
上写真 SS2018ルックブックより
このシーズンではオールデンのペニーローファーを採用していました。生地もいつものスエード素材のものを選ぶことで、リネンスーツのスタイリングもハードな印象になり過ぎず柔らかな印象となっています。スエード生地は皆様も知っている通り、足あたりの柔らかさを持っていると同時にスタイリングの印象も柔らかにしてくれるのです。ドレス過ぎずカジュアル過ぎず、そのバランス感覚が当時からとても新鮮な印象でした。
上写真 AW2018ルックブックより
Drake’s – Clifford Desert Boot ¥46,000(税抜)
このシーズンに初めて登場したのが、現在もドレイクスの定番シューズとして展開しているクリフォードデザートブーツでした。ドレイクスの根底に流れているのはアメリカのアイビースタイルです。それは裕福な家庭に生まれ、勉学やスポーツに励むアメリカ中のエリートが集まる大学の学生らのファッションでした。彼らは伝統を重んじ、ファッションに関しても同様に伝統を重んじます。彼らはメンズファッションのひとつひとつには理由があることを知っており、ドレイクスもまた同じです。
デザートブーツはクラークス社で開発されたそうですが、イギリス軍の兵士が履いていた靴をモチーフにしたそうです。チャッカ―ブーツを長年愛用していたマイクにとって、このシーズンはイギリス由来のシューズを提案した重要なシーズンとなったことでしょう。
上写真 AW2018ルックブックより
この2人のコートの着こなしもとても印象的でした。ロンドンの大学付近で撮られたこのルックにはほぼ毎回デザートブーツを使用しています。コーデュロイのややモダンなコートにサンドベージュのデザートブーツ、ヘリンボーンのラグランコートにはラグビーシャツにタイを巻きながらブラウンのデザートブーツを。どんな服を着ていようが、デザートブーツを合わせるだけでなぜか生真面目で優等生な雰囲気が出るのでした。
上写真 SS2019ルックブックより
AW2018に初めて登場したクリフォードデザートブーツとクロスビーモックトゥチャッカ―ブーツでしたがSS2019シーズンでは二人でそれぞれのシューズを着用することとなりました。おそらくこの頃にはドレイクスのクロスビーモックトゥチャッカ―ブーツが2021年公開予定の007で使用されることが決まっていたのでしょう。このシーズンよりモックトゥシューズの露出が増え始めました。
このようにドレイクスは一貫してスエードやコードバン、リスレザーなどカジュアルな趣のある素材を使用したシューズを長年使い続けてきています。オールデンのチャッカ―ブーツからドレイクスオリジナルのデザートブーツへと提案が変化してきた流れは必然とも言えます。それは、マイクのポリシーの中に『コンフォータブル』という概念があるからでしょう。
長くなってしまいましたが、今シーズンよりこれらシューズがソールをリモデルし登場しましたので簡単にご紹介していこうと思います。
Drake’s – Crosby Moc-Toe Chukka Boot ¥52,000(税抜)
参考までにこれまでおよそ2年間取り扱ってきたクレープソールのものをご覧いただきます。これまでは上の写真のクレープソールのシューズが定番でしたが、下の写真が新しいスタイルのシューズです。
Drake’s – Crosby Moc-Toe Chukka Boot Roughout Suede with Rubber Sole ¥58,000(税抜)
これまでのクレープソールからダイナイト風のラバーソールに変更されています。ダイナイトに比べて、やや軽く、さらに粘りのあるグリップを感じます。クレープソールのものと同様にアンライニングの仕立てですが、それに比べてやや狭く硬さのある印象です。その分、丈夫さと型崩れのしづらさがあるでしょうから求めるスタイルによっての履き分けが重要となってきます。
デザインとカラーの展開は下の2枚の写真をご確認ください。
Drake’s – Crosby Moc-Toe Chukka Boot Roughout Suede with Rubber Sole ¥58,000(税抜)
ラバーソールのモデルには右のカーキが加わりました。
Drake’s – Clifford Desert Boot Roughout Suede with Rubber Sole ¥52,000(税抜)
クリフォードデザートブーツにもラバーソールモデルが加わりました。
左:Drake’s – Crosby Moc-Toe Chukka Boot ¥52,000(税抜) COL:003/Tobacco
右:Drake’s – Crosby Moc-Toe Chukka Boot Roughout Suede with Rubber Sole ¥58,000(税抜)COL:002/Light Brown
注意いただきたいのは同じようなカラーでも、クレープソールのものとラバーソールのものとではカラーが微妙に違うことです。また、レザーの質感も前者の方が毛足が長く、後者の方が少々毛足が短いように思います。また、革自体の厚みには変化をあまり感じません。
左:Drake’s – Crosby Moc-Toe Chukka Boot ¥52,000(税抜) COL:003/Tobacco
右:Drake’s – Crosby Moc-Toe Chukka Boot Roughout Suede with Rubber Sole ¥58,000(税抜) COL:002/Light Brown
コバを横から見ると色の違いも見受けられます。クレープの方は底面からクレープの淡い茶色、革のナチュラルな断面のベージュ、アッパーの革の断面と少し色合いが明るくカジュアルな印象ですが、ラバーの方は底面から黒に近いラバー、革の断面に少し色を入れたこげ茶、アッパーの革の断面と暗めの色でまとめてあり、落ち着いた印象です。
こうしてみると、カジュアルに軽快なスタイリングにしたい場合はクレープソールを、チャッカ―ブーツ感覚で足元に重みをもたせたい場合はラバーソールをお選びいただくべきかと思います。もしかすると普段レザーソールやダイナイトソール等の重厚感のあるシューズをよくお召しの方には、ラバーソールであればご自身のスタイルに取り入れやすいかもしれません。しかし思い切ってクレープソールまでカジュアルダウンさせてみるのも粋でしょう。
実際にこれらのシューズをスタイリングに取り入れてみました。
Drake’s – Crosby Moc-Toe Chukka Boot Roughout Suede with Rubber Sole ¥58,000(税抜) COL:001/Dark Brown
Drake’s – Primary Colour Block Brushed Lambswool Jumper ¥61,000(税抜)
Drake’s – Brown Patchwork Heavyweight Suede Five-Pocket Chore Jacket ¥181,000(税抜)
Drake’s – Bright Red Ribbed Geelong-Angora Beanie ¥10,000(税抜)
今季ポイントとなるパッチワークのチョアジャケットにはダークブラウンで合わせます。もちろん、サンドベージュやカーキシューズも合いますが、濃い色のシューズを選択することでコーディネートのポイントとなるアウターとセーターを引き立たせることができるように思います。あくまでもシューズはブラウンのアウターの延長として捉えてのコーディネートです。
Drake’s – Clifford Desert Boot Roughout Suede with Rubber Sole ¥52,000(税抜)COL:002/Brown
Drake’s – Sky Blue Cashmere Seed Stitch Jumper ¥61,000(税抜)
Drake’s – Beige and Brown Glen Check Wool Jacket ¥148,000(税抜)
Drake’s – Navy Ribbed Cashmere Beanie ¥25,000(税抜)
英国調のブラウンのグレンチェックのジャケットにオーソドックスなチャコールグレーのトラウザーズのスタイルにはブラウンのクリフォードブーツを合わせました。シューズはジャケットの色を拾いつつ、セーターとニットキャップの色を同系色に落ち着かせ、色使いがシンプルになるようにしてみました。シューズのブラウンが良いアクセントとなり、伝統的なグレンチェックのジャケットを柔らかいニュアンスでまとめることができました。
Drake’s – Clifford Desert Boot ¥46,000(税抜)COL:001/Sand
Drake’s – Camel Lambswool Shawl Collar Cardigan ¥61,000(税抜)
Drake’s – Natural Ribbed Lambswool Beanie ¥9,000(税抜)
Drake’s -Blue and White Broad Stripe Poplin Long Point Collar Shirt ¥31,000(税抜)
エレガントなキャメルカラーのカーディガンにはサンドベージュのクリフォードデザートブーツを合わせてみます。こういった場合、白いスニーカーなど合わせても素敵だと思いますが、デザートブーツを合わせることで少し大人な印象に持っていくことができます。このように全体の印象を軽快にしたいときはサンドベージュを足元に持ってきましょう。これは春夏秋冬問わず、一年中活用してください。リネンのジャケットからツィードのジャケットまで幅広く楽しめますし、スニーカーの代わりに履く感覚でお使いください。
Drake’s – Clifford Desert Boot ¥46,000(税抜)COL:001/Sand
最後に私が約2年履いているクリフォードデザートブーツもお見せします。左が私が普段履いているシューズですが、雨の日も晴れの日も防水スプレーなど一切せずに無頓着に履いているものとなります。ボールジョイントとその先の小指部分も足の形が出るくらい馴染んでいます。本来、雨染みや汚れなど気になるようであれば防水スプレー等をかけるべきですが、そういったことも気にせず履くのもひとつの考え方かと思います。最も重要なのはあなたにとってこのシューズが『コンフォータブル』であるかどうかです。
Drake’s銀座店 Naka
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