およそ14年前、20歳の頃に社会人となり某アメリカの老舗ブランドで働き始めた私はことあるごとに先輩たちから注意を受けていました。ナカガワ靴磨いてないな、アイロンかけてないね、唇が乾燥してるなどなど。先輩スタッフは新入社員に対してそのブランドらしい服装、身だしなみ、身のこなしをチェックし、口頭での注意を反復的に行います。それにより新入社員はそのブランドらしい販売員として育っていくのでした。
ブランドらしさとは言い換えれば『型』です。販売員が『型』に嵌ることはそのブランドにとって重要なことで、お客様は店舗を訪れた際にその『型』に嵌った販売員を見てカッコ良い、自分も真似したいと思い、またその店に足を運ぶことになるでしょう。
皆様もご存じの通り、紳士服にもその『型』があります。例えば、当時働いていたブランドの着こなしで言えば、段返り金ボタンの紺ブレにはボタンダウンシャツ、レジメンタルタイ、ノータックのパンツにペニーローファーやタッセルローファーを合わせるなど。ではその『型』はどうやって受け継がれていくのでしょうか。
昨今ではそのような紳士服のルールに関する書籍が多数発売されておりそれらを読んで学ぶこともできますが、個人的に最も重要だと思うのはルールを知っている人の着こなしを見て学び、話を聞いて学ぶということです。どれだけ書籍を読んだとしても評価するのは自分ではなく他人です。他人から見て自分がどう見えるのかを客観的に捉えながら、少しずつ自分のスタイルを変化させ改善していくことが最も重要なのだと思います。まずは知識として取り入れ、次に感覚的に理解していくイメージです。
書籍だけでは文章を読んだ本人の捉え方次第で解釈が変わるでしょう。その『型』を本当の意味で知る為には、人から伝え聞いていくしかないのです。現在では気になることがあった時にインターネットで検索すればほぼ調べられないことはないですが、人から伝え聞いた生の声こそを最も大事にしそれをまた後世に伝えていきたいものです。
今回のブログでは私がこれまでに学んだ『型』に則って新作ネクタイの着こなしを考えていきたいと思います。先ほども触れましたが、これはあくまでも私が書いた文章程度ですから、あくまでも参考程度にしていただきつつ実際のところは購入する際にそこにいる販売員と着こなしの相談をしながらあなたにとってベストなネクタイ選びをしていただければ幸いです。
Drake’s – Navy and Olive Grenadine Tie¥24,000(税抜)
Drake’s – Green and White Bengal Stripe Poplin Button-Down Shirt¥31,000(税抜)
Drake’s – Brown Tussar silk Jacket¥139,000(税抜)
Drake’s – Flora and Fauna Print Wool-Silk Pocket Square 50%off¥5,500(税抜)
当時は上のスタイリングのようなそれぞれのアイテムを同色で統一したスタイリングがとても魅力的に感じていました。メインとなるタイの色に対しシャツとポケットチーフを同色でまとめることで、手軽にスタイリングの一体感を演出することができます。色をまとめるだけなので、アイテムさえ揃えることができれば誰でもすぐに挑戦することができるのです。
こちらのタイは毎シーズン1、2本程度しか用意をしていないグレナディン生地を使ったレジメンタルタイです。グレナディンは汎用性の高い生地でありスーツにもジャケットにも合わせることができます。ウール生地の場合は薄手のトロピカルから厚手のツィードまで、コットンツイルやコーデュロイ、リネンなどにも使用可能です。今回の着こなしではセオリー通りに、生地感の強いグレナディンタイに同じく生地感の強いシルクタッサーのジャケットを合わせました。紳士服の着こなしにおいて、このように生地の質感を合わせるということは色合わせ以上に重要なことであります。
Drake’s – Tennis Player Motif Silk Tie¥24,000(税抜)
Drake’s – Blue Ticking Stripe Regular Fit Shirt with Button Down Collar¥25,000(税抜)
Drake’s – Open Weave Wool Jacket 50%off¥79,500(税抜)
Drake’s – Shoestring Border Wool-Silk Pocket Square¥13,000(税抜)
個人的に大好きなテニスプレイヤーのモチーフ柄です。このような遊び心満載なモチーフタイは基本的にジャケパンスタイルに合わせ、スーツにはあまり合わせません。もしスーツに合わせるのであれば、カジュアルな生地感のスーツを合わせましょう。例えば、コットンポプリンやツイル、コーデュロイ、リネン生地などがベターです。今回は王道のネイビージャケットに、オックスフォードボタンダウンシャツ、コットンチノを合わせています。
ちなみに、ドレイクスのスタイリングではたびたびボタンダウンのボタンを外して着用しています。これはドレイクスのスタイルのひとつでありますが、やや気崩した印象がありますので実際のビジネスシーンではボタンを留めていただくとキチっとした印象になります。モチーフタイの基本はこのようになります。最近ではビジネスシーンで使われるようなウール生地のスーツにも合わせる方はいますが、まずはこれが基本とだけ認識ください。
Drake’s – Blue and White Super Repp Tie¥24,000(税抜)
Drake’s – Chambray Cotton Button-Down Shirt¥27,000(税抜)
Drake’s – Linen Glemcheck Suit¥202,000(税抜)
どことなく、映画『華麗なるギャツビー』をイメージさせるスタイリングになりました。タイの生地はドレイクス定番のスーパーレップ生地で、斜めに畝が入っており一般的なレジメンタルタイとしてもよく見受けられるややカジュアルな生地感です。主に紺ブレなどのジャケットと合わせることが多いですが、スーツに合わせても美しくどんなスタイルにも使用可能な万能タイです。
今回は爽やかにリネンのグレンチェック生地に合わせてみました。シャツはシャンブレー生地を合わせることでタイのオフホワイトの色も際立ちます。このスーパーレップ生地は生地の特性上あまり大胆な艶は出ない為、シャンブレーやリネンなどの艶があまりない生地とも好相性のように思います。普段のビジネスシーンにはぜひ紺ブレやスーツなどと合わせていただき、清涼感ある色使いをお楽しみください。
マイケル・ヒルのネクタイの結び方
ちなみにドレイクスにはタイを巻くときの細かなルールもあるのです。私が以前勤めていたブランドではフォアインハンドで巻き、ノット部分のくびれをしっかりと作り綺麗な左右対称な三角形を作り立体感を出すように心がけていました。しかしドレイクスで大きく違うのはノットを潰すようにと言われていることです。本来であればノット自体に立体感を出すところではありますが、強く巻いた後に指で潰すことでくびれを無くすように巻くのです。
上の動画でもノットを指で潰しながら締めていることがわかります。ですのでここに掲載されている写真のタイは基本的にくびれがなく、台形の形のノットになっているはずです。この巻き方により、自然で力の抜けた雰囲気が出ますのでドレイクスのスタイルにはよく合うように思います。
Drake’s – Stripe Knit Tie¥21,000(税抜)
Drake’s – Blue Ticking Stripe Regular Fit Shirt with Button Down Collar¥25,000(税抜)
Drake’s – Brown Corduroy Suit 50%off¥94,500(税抜)
私自身待ちに待っていたボーダーのニットタイです。銀座店ではおよそ2年ぶりの取り扱いでしょうか。ニットタイはタイの中でも最もカジュアルなデザインとなりますので、本来であればジャケパンスタイルに適しています。イメージ的にも用途的にも先ほどのテニスプレイヤーモチーフタイの括りに近いのですが、こちらはさらにリラックスした雰囲気があります。このニットタイはどうしてもブラウンに合わせようと思いこちらのコーデュロイスーツと合わせました。
先ほども少し触れましたが、同じスーツでもウールを使ったドレッシーなスーツとこのようなコットンを使ったカジュアルなスーツに分かれます。前者で着用するにはこのタイはカジュアルすぎるため、コーデュロイのようなカジュアルな生地のスーツに合わせています。同様にシャツに関してもスポーティなオックスフォード生地を使用したボタンダウンシャツを合わせることで、全体の雰囲気をカジュアルな装いにまとめました。
Drake’s – Multi Stripe Silk Cotton Tie¥24,000(税抜)
Drake’s – Multi Stripe Poplin Long Point Collar Shirt¥31,000(税抜)
Drake’s – Cotton Ripstop Games Blazer Mk. II¥94,000(税抜)
Drake’s – Cotton Ripstop Single-Pleat Games Chinos¥61,000(税抜)
印象的なマルチストライプタイは先ほどのスーパーレップ生地と同様にドレイクス定番のシルクコットン生地となります。スーパーレップ生地よりも斜めに入った畝が細かく、コットンが含まれていることでスーパーレップ生地よりも少々の重さと張りがあるのが特徴です。タイの柄自体がややヴィンテージ調の雰囲気があるため、同じくヴィンテージ調の柄のシャツを合わせてみました。柄や色使いはわかりやすいところですが、重要なのはそれぞれのアイテムが持つイメージです。
ジャケットはカジュアルな仕立てでややゴージラインの低い設定となっていることで、昔ながらのハンティングジャケットのような雰囲気を醸し出しています。その低いゴージラインの少し下にシャツの衿が上手く入り込んでいますが、これが一般的に売られているワイドカラーシャツなどではゴージラインと衿先がほぼ同じ位置になってしまうでしょう。それでは見栄えとしては悪いため、このような衿の開きのやや狭いシャツを合わせることでしっくりと合わせることができています。
また、このような芯地をあまり用いていないカジュアルなジャケットですので、柔らかな芯地の衿を持つシャツを合わせています。このようにぱっと見で分かる柄だけでなく、ひとつひとつのディテールの仕立てや雰囲気を合わせていくことでスタイリング全体の雰囲気に統一感を持たせることができるのです。
Drake’s – Medallion Patchwork Silk Tie¥24,000(税抜)
Drake’s – Multi Stripe Poplin Long Point Collar Shirt¥31,000(税抜)
Drake’s – Blue Corduroy Suit¥153,000(税抜)
最後はパッチワーク風の小紋タイを合わせました。これが個人的には一番スタイリングが難しく、タイの中に様々な要素が複雑に絡み合っていることで結果的にこの独特な存在感のあるタイになっているようでした。シルク100%で厚みと重厚感があり、ひとつひとつの柄は艶のあるエレガントでクラシックな小紋タイです。
そういった雰囲気がありながら、パッチワークにしたことでややコンサバな雰囲気も同時に持ち合わせています。このタイが持つエレガントな雰囲気を尊重すべきなのか、コンサバでカントリー調の雰囲気を尊重すべきなのか、どちらの要素に振ってスタイリングを組むかがとても悩ましいところでした。
最終的に重視したのはこのパッチワーク柄でした。全体の雰囲気を統一させるために全てのアイテムをグラデーションを作るようにブルーで統一させています。
また、クラシックな雰囲気を尊重させるべくシャツは昔ながらの雰囲気のものを選び、パッチワークのコンサバな雰囲気を尊重させるべくジャケットはコーデュロイで合わせました。同系色のコーディネートを作る際は、シルク、コットンポプリン、コーデュロイなど様々な生地を同時に組み合わせることがポイントでした。
以上が私が先輩方から受け継いだ『型』でした。ネクタイは好みのものを合わせるのももちろん楽しいのですが、こういったセオリーを頭に置いたうえでスタイリングを考えていくとより楽しく着用できるようになるはずです。
もしお手元のネクタイで使い方がわからないものがあったり、挑戦したいネクタイがあるがどう合わせたら良いかわからないなどあればお気軽に銀座店までご相談にいらしてください。
また、今週末1/30(土)、31(日)はドレイクス銀座店で簡単なドリンクをご用意する予定です。無料でお配りをさせていただきますので、よろしければこの機会に新作の一部をご覧になってはいかがでしょうか。
2021年春夏の新作商品も少しづつ入荷しておりますのでまた皆様とお会いできることを楽しみにしております。
Drake’s銀座店 Naka
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