皆さん、はじめまして。僕はロンドン在住の、役者兼作詞・作曲家兼プロデューサー。ご縁あって寄稿させていただくことになったので、まず今回は、僕自身について書いてみようと思う。イングランド南部のポーツマス出身の僕は、6 歳の頃、祖⽗⺟の家に向う⾞の中で、カセットプレーヤーから流れてきた「オペラ座の怪人」の曲に心を奪われて以来、ミュージカルの魅⼒に憑りつかれてしまった。
演劇の本場とあって、イギリスでは幼いうちから演劇に触れる機会が多い。学校でも演劇の授業があるし、ロンドンはもちろん、地⽅にも、歴史のある⽴派な劇場や劇団、育成学校が数多く存在する。
僕は9 歳の頃「The Pirates of Penzance」の学校公演で初舞台を経験し、11 歳で⻘少年向けのアマチュア劇団に入った。そこで「Joseph and the Amazing Technicolor Dreamcoat」の主役を射止めると、ますます演劇の世界に引き込まれていった。音楽や役を通して自分を表現するのはワクワクしたし、他では感じたことのないような、自由な感覚があったんだ。
National Youth Music Theatre(通称NYMT。エディー・レッドメイン、ジュード・ロウ、シェリダン・スミスなど、映画・演劇界で活躍するビッグネームも多く輩出している)の一員として「Bugsy Malone」に出演した時のことは、今でも忘れられない。ウェストエンドの劇場で毎晩、ウェストエンドの劇場で毎晩、漆喰銃(中身はクリーム!)を乱射できるなんて、14 歳の少年にとっては夢のような仕事だったからね!
その後僕は、BRIT School For Performing Arts(通称「ブリット・スクール」。ロンドン南部にある芸術 学校。エイミー・ワインハウス、アデル、レオナ・ルイスもここの卒業生)のミュージカル科で3 年間学んだ後、Mountview Academy of Theatre Arts(ロンドンの名門演劇学校)に進学し、首席で卒業した。
英国は演劇大国。でもだからこそ役者、それも質の高い役者も大勢いて、仕事を⾒つけること、ましてや満足できる仕事に恵まれることは、容易いことじゃない。ウェストエンドでロングランする作品やツアーの仕事が入れば、数ケ⽉に渡って毎⽇舞台に⽴ち続けることができるけれど、その先の保証は何もない。オーディションを受けるなどして、次の仕事を掴みに⾏く。
ミュージカル俳優にとって、舞台以外に、コンサート出演の仕事も多い。最近も、定期的に出演しているJohn Wilson Orchestra(主にRoyal Albert Hall で上演。97 人編成のオーケストラをバックに歌えるなんて、シンガーとしては最高な環境だ!)の仕事を終えたばかりだ。規模の大きなものから小さなものまで、年間いくつものステージで歌わせてもらっている。
Kerrigan-Lowdermilk のロンドンコンサート(2014 年、St.James Studio Theatre)
よく、「どうして役者になったのか」と聞かれる。僕に言えるのは、パフォーマーは皆、パフォーマーであることを「選ぶ」んじゃない、ということ。舞台上で自分の声や肉体を使って表現してこそ、自分でいられるんだ。役者は、大変なスキルと訓練と覚悟を要する職業で、決して楽な仕事ではないけれど、とてもやりがいはある。何より素晴らしいのは、舞台には、観客を⽇常から遠く離れた想像の世界へいざなう⼒があること。誰にだって、現実世界から離れたくなることがあるでしょ。
⾞でミュージカルの曲に心をときめかせた6 歳の頃、こんな未来は想像もしていなかったけれど、いつしか夢を描くようになり、今32 歳の僕は、多くの人に支えられて、描いた夢を生きている。パフォーマー、作詞作曲家、プロデューサーとして多⽅面から舞台に携わる、忙しくも幸せな毎⽇。僕らは、その可能性を捨てさえしなければ、何だってできるんだ。
あの頃も今も、僕はただ夢中で走り続けている。
演劇の本場とあって、イギリスでは幼いうちから演劇に触れる機会が多い。学校でも演劇の授業があるし、ロンドンはもちろん、地⽅にも、歴史のある⽴派な劇場や劇団、育成学校が数多く存在する。
僕は9 歳の頃「The Pirates of Penzance」の学校公演で初舞台を経験し、11 歳で⻘少年向けのアマチュア劇団に入った。そこで「Joseph and the Amazing Technicolor Dreamcoat」の主役を射止めると、ますます演劇の世界に引き込まれていった。音楽や役を通して自分を表現するのはワクワクしたし、他では感じたことのないような、自由な感覚があったんだ。
National Youth Music Theatre(通称NYMT。エディー・レッドメイン、ジュード・ロウ、シェリダン・スミスなど、映画・演劇界で活躍するビッグネームも多く輩出している)の一員として「Bugsy Malone」に出演した時のことは、今でも忘れられない。ウェストエンドの劇場で毎晩、ウェストエンドの劇場で毎晩、漆喰銃(中身はクリーム!)を乱射できるなんて、14 歳の少年にとっては夢のような仕事だったからね!
「Bugsy Malone」(映画の邦題は『ダウンタウン物語』)は、全役を子供が演じるギャングスター・ミュージカル。Queens Theatre、1997 年。
その後僕は、BRIT School For Performing Arts(通称「ブリット・スクール」。ロンドン南部にある芸術 学校。エイミー・ワインハウス、アデル、レオナ・ルイスもここの卒業生)のミュージカル科で3 年間学んだ後、Mountview Academy of Theatre Arts(ロンドンの名門演劇学校)に進学し、首席で卒業した。
英国は演劇大国。でもだからこそ役者、それも質の高い役者も大勢いて、仕事を⾒つけること、ましてや満足できる仕事に恵まれることは、容易いことじゃない。ウェストエンドでロングランする作品やツアーの仕事が入れば、数ケ⽉に渡って毎⽇舞台に⽴ち続けることができるけれど、その先の保証は何もない。オーディションを受けるなどして、次の仕事を掴みに⾏く。
Jason Robert Brown 作の「PARADE」(2007 年、Donmar Warehouse)
「Shrek the Musical」のウェストエンド初演(2011 年、Theatre Royal Drury Lane)
「Rocky Horror Show」欧州ツアー。Riff Raff 役で出演。2014 年10 ⽉から2015 年8 ⽉まで、約1 年をかけて欧州を回った。2009 年にも同役で出演している
ミュージカル俳優にとって、舞台以外に、コンサート出演の仕事も多い。最近も、定期的に出演しているJohn Wilson Orchestra(主にRoyal Albert Hall で上演。97 人編成のオーケストラをバックに歌えるなんて、シンガーとしては最高な環境だ!)の仕事を終えたばかりだ。規模の大きなものから小さなものまで、年間いくつものステージで歌わせてもらっている。
「West End Live 2013」。トラファルガースクエアで毎年開催される野外イベント。
Kerrigan-Lowdermilk のロンドンコンサート(2014 年、St.James Studio Theatre)
よく、「どうして役者になったのか」と聞かれる。僕に言えるのは、パフォーマーは皆、パフォーマーであることを「選ぶ」んじゃない、ということ。舞台上で自分の声や肉体を使って表現してこそ、自分でいられるんだ。役者は、大変なスキルと訓練と覚悟を要する職業で、決して楽な仕事ではないけれど、とてもやりがいはある。何より素晴らしいのは、舞台には、観客を⽇常から遠く離れた想像の世界へいざなう⼒があること。誰にだって、現実世界から離れたくなることがあるでしょ。
⾞でミュージカルの曲に心をときめかせた6 歳の頃、こんな未来は想像もしていなかったけれど、いつしか夢を描くようになり、今32 歳の僕は、多くの人に支えられて、描いた夢を生きている。パフォーマー、作詞作曲家、プロデューサーとして多⽅面から舞台に携わる、忙しくも幸せな毎⽇。僕らは、その可能性を捨てさえしなければ、何だってできるんだ。
あの頃も今も、僕はただ夢中で走り続けている。
スチュアート・マシュー・プライス
役者、作詞・作曲家、プロデューサー。
2007年、「Parade」でデビュー。その後「Sound of Music」、「Shrek」、「Rocky Horror Show」や、コンサートにも多数出演。一方、作詞・作曲家、またプロデューサーとしても活躍。作詞作曲は14歳で始め、これまでに5作を発表している。2010年、アルバム「All Things In Time」をリリース。その類稀な歌唱力、表現力、美しい楽曲は高く評価されている。2014年にミュージカル座より依頼を受けて執筆したミュージカル「BEFORE AFTER」が話題となっている。