ザ・ビートルズが2000年にリリースしたベスト盤「ザ・ビートルズ1」がお色直しのリマスタリングで最新ステレオ・ミックスとして再リリースされました。さらに今回は収録されている全27曲のミュージック・ビデオが、これまた最新のリペア、リストア、リマスター技術を施され、DVD&Blu-rayとなってリリースされたのです。
そもそも「1」は、ビートルズが全米・全英でセールスチャート1位を記録した全27曲を時系列でまとめたベスト盤でした。今回新たにリリースされたパッケージはCDのみ、DVD(またはBlu-ray)のみ、両方のセットなど計7種類が用意されています。私はCD+ブルーレイに、収録曲のバージョン違いや未収録曲のビデオなどのボーナス映像ディスクが加わった「ザ・ビートルズ1+ デラックス・エディション」(写真)を購入しました。
上位パッケージだけのことはあり、ブックレット、なかなか分厚くて豪華です。データ周りの解説も、その翻訳本も充実の内容です。
デビュー曲の「ラブ・ミー・ドゥ」に始まり「シー・ラブズ・ユー」、「抱きしめたい」、「イエスタディ」、「レット・イット・ビー」等々、言うまでもなく本作の収録曲は、いずれも彼らのナンバーの中でも名曲とか代表曲と呼ばれる類です。
CDは00年盤と比べると、曲によっては音の粒の揃い具合や圧にかなり明確な違いが感じられます。iPhoneに取り込んでイヤフォンで聴いても、曲がよりグッと耳に飛び込んでくるような感触がありますね。
しかし、何と言っても今回の肝はビデオ集にアリ!なのです。
これ、リマスターされた映像の鮮明さがハンパじゃないぞ!近年の映像レストア技術はスゴいというのは、前回書いた007シリーズの再販などを通じて、ある程度は分かっていたつもりだったのですが、いやはやこれ程とは。モノクロも綺麗っちゃ綺麗なのですが、特にカラーの映像については、レストアでここまで鮮明になるものかと息を呑みました。
曲順的に最初のカラー映像は65年のシェア・スタジアムの模様からモンタージュされた「エイト・デイズ・ア・ウィーク」。60年代のファンの熱狂が伝わってきます。そこから5曲を挟んで、「ペイパーバック・ライター」からラストの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」までがカラー映像です。
もちろん鮮明と言っても、現代の地デジ映像みたいな鮮明度という意味ではありませんよ? でもあのビートルズが、ここまで鮮明な色合いで歌っているのを観ると、ちょっとシュールな気分にさせられるくらいのクオリティです。
あらためて観直すと、もちろんラウンドカラーのシャツにタイドアップして細身のスーツを着た“これぞファブ・フォー”という初期のファッションも良いのですが、私は後期の、たとえばアップルレーベルがあったビルの屋上でのセッションで構成された「ゲット・バック」で4人が着ているジャケット姿やコート姿もシブくて好きですね。
特に今年の流行というわけではありませんが、この頃の4人は髪を伸ばし、髭を蓄え、音楽家としての貫禄が感じられます。いまこんなファッションで、冬の街角で屋外ライブをやってくれるメジャーなロックバンドがいてくれたら、なかなかクールだと思いませんか?
もう一枚の特典映像ディスクに収録されているビデオも(まあバージョン違いなんかはマニア向けですが)彼らの解散後に編集された作品も含めて、見応えのあるテイクばかりです。
ブックレットの解説(2000年時)でディーン・マーティンがあらためて指摘していますが、1曲目の「ラブ・ミー・ドゥ」からラストの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」まで。そのほとばしる若さとアイドルのような愛嬌が、急激な加速度で音楽家の貫禄へと変わっていく期間は、およそ8年足らずでした。つまりこの8年足らずで、彼らはロックとポップスの歴史を塗り替えてしまったのだとも言えるでしょう。
そんな数多の名曲を生み出した上に、(前半のビデオはテレビ出演時の映像ですが)まだMTVという概念すら普及していなかった時代に、映像作家たちとこうして様々な創意工夫を凝らし、音楽の視覚化に意欲的だったのです。あらためて、まったくとんでもないグループだったなあと驚くばかりです。
これは毎週音楽コラムを連載している「サンデー毎日」誌のほうでも書かせてもらいましたが、時折、取材で二十代のミュージシャンや俳優・女優さんと話すと、彼らにとっては最新リリースされた曲も、昔の曲も、インターネットや配信を通じて今日知れば、同じ“新曲”という感覚なのだと感じさせられます。
だからこうしたリマスタリングやレストアは、年季の入ったファンに対してよりも、むしろこれからビートルズと出会う新たな世代との“Hello”触れ合いという挨拶の機会においてこそ、有効なのかもしれないなあ、とも思うのです。
「ザ・ビートルズ1+ デラックス・エディション」。お値段は9,800円税抜きとやや張りますが、それを裏切らないだけの楽しさが十二分に詰まっています。冬の夜長のお供としてもお薦めです。
その他、映像のレストアストーリーは以下でご覧いただけます。
https://youtu.be/zh8iGntPpjU
https://youtu.be/03w-RnN7I-U
https://youtu.be/2A0-YjQQPNY
https://youtu.be/YEVqor4JmbU
https://youtu.be/V5uk08jBGtc
そもそも「1」は、ビートルズが全米・全英でセールスチャート1位を記録した全27曲を時系列でまとめたベスト盤でした。今回新たにリリースされたパッケージはCDのみ、DVD(またはBlu-ray)のみ、両方のセットなど計7種類が用意されています。私はCD+ブルーレイに、収録曲のバージョン違いや未収録曲のビデオなどのボーナス映像ディスクが加わった「ザ・ビートルズ1+ デラックス・エディション」(写真)を購入しました。
上位パッケージだけのことはあり、ブックレット、なかなか分厚くて豪華です。データ周りの解説も、その翻訳本も充実の内容です。
CDは00年盤と比べると、曲によっては音の粒の揃い具合や圧にかなり明確な違いが感じられます。iPhoneに取り込んでイヤフォンで聴いても、曲がよりグッと耳に飛び込んでくるような感触がありますね。
しかし、何と言っても今回の肝はビデオ集にアリ!なのです。
これ、リマスターされた映像の鮮明さがハンパじゃないぞ!近年の映像レストア技術はスゴいというのは、前回書いた007シリーズの再販などを通じて、ある程度は分かっていたつもりだったのですが、いやはやこれ程とは。モノクロも綺麗っちゃ綺麗なのですが、特にカラーの映像については、レストアでここまで鮮明になるものかと息を呑みました。
曲順的に最初のカラー映像は65年のシェア・スタジアムの模様からモンタージュされた「エイト・デイズ・ア・ウィーク」。60年代のファンの熱狂が伝わってきます。そこから5曲を挟んで、「ペイパーバック・ライター」からラストの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」までがカラー映像です。
もちろん鮮明と言っても、現代の地デジ映像みたいな鮮明度という意味ではありませんよ? でもあのビートルズが、ここまで鮮明な色合いで歌っているのを観ると、ちょっとシュールな気分にさせられるくらいのクオリティです。
あらためて観直すと、もちろんラウンドカラーのシャツにタイドアップして細身のスーツを着た“これぞファブ・フォー”という初期のファッションも良いのですが、私は後期の、たとえばアップルレーベルがあったビルの屋上でのセッションで構成された「ゲット・バック」で4人が着ているジャケット姿やコート姿もシブくて好きですね。
特に今年の流行というわけではありませんが、この頃の4人は髪を伸ばし、髭を蓄え、音楽家としての貫禄が感じられます。いまこんなファッションで、冬の街角で屋外ライブをやってくれるメジャーなロックバンドがいてくれたら、なかなかクールだと思いませんか?
もう一枚の特典映像ディスクに収録されているビデオも(まあバージョン違いなんかはマニア向けですが)彼らの解散後に編集された作品も含めて、見応えのあるテイクばかりです。
ブックレットの解説(2000年時)でディーン・マーティンがあらためて指摘していますが、1曲目の「ラブ・ミー・ドゥ」からラストの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」まで。そのほとばしる若さとアイドルのような愛嬌が、急激な加速度で音楽家の貫禄へと変わっていく期間は、およそ8年足らずでした。つまりこの8年足らずで、彼らはロックとポップスの歴史を塗り替えてしまったのだとも言えるでしょう。
そんな数多の名曲を生み出した上に、(前半のビデオはテレビ出演時の映像ですが)まだMTVという概念すら普及していなかった時代に、映像作家たちとこうして様々な創意工夫を凝らし、音楽の視覚化に意欲的だったのです。あらためて、まったくとんでもないグループだったなあと驚くばかりです。
これは毎週音楽コラムを連載している「サンデー毎日」誌のほうでも書かせてもらいましたが、時折、取材で二十代のミュージシャンや俳優・女優さんと話すと、彼らにとっては最新リリースされた曲も、昔の曲も、インターネットや配信を通じて今日知れば、同じ“新曲”という感覚なのだと感じさせられます。
だからこうしたリマスタリングやレストアは、年季の入ったファンに対してよりも、むしろこれからビートルズと出会う新たな世代との“Hello”触れ合いという挨拶の機会においてこそ、有効なのかもしれないなあ、とも思うのです。
「ザ・ビートルズ1+ デラックス・エディション」。お値段は9,800円税抜きとやや張りますが、それを裏切らないだけの楽しさが十二分に詰まっています。冬の夜長のお供としてもお薦めです。
その他、映像のレストアストーリーは以下でご覧いただけます。
https://youtu.be/zh8iGntPpjU
https://youtu.be/03w-RnN7I-U
https://youtu.be/2A0-YjQQPNY
https://youtu.be/YEVqor4JmbU
https://youtu.be/V5uk08jBGtc
内田 正樹
エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。