探偵小説の魅力 | BRITISH MADE

ブリティッシュ“ライク” 探偵小説の魅力

2015.12.25

探偵小説が魅力的だ。
探偵と言われると、冷静沈着な”シャーロック・ホームズ”、チャーミングな”エルキュール・ポアロ”、ハードボイルドな”フィリップ・マーロウ”など、誰もが知るシリーズ化された探偵から、知る人ぞ知る稀有な探偵まで多士済々だ。あるいは、フロックコート、ステッキ、パイプなど、クラシカルなファッションアイテムを連想される方も多いのではないだろうか。
なぜならば、個性豊かな探偵達は、幾度となく小説という枠を飛び越えて映画化され、ファッションにおいても重要な役割を担ったからである。それは、探偵小説の人物描写が細かく、服装にも造詣深かったからではないだろうか。例えば以下のような描出がある。

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この文章は「マックス・カラドスの事件簿」という短編集からの剽窃である。記述された服装や装飾品をヒントに、どのような人間像かを”推理”するのはなかなか面白い。みなさんは”マックス・カラドス”なる傑物をご存知だろうか?
彼は、”ホームズ時代最後の名探偵”と称される通り、世界一有名な探偵”シャーロック・ホームズ”よりも少し遅れて世に登場した英国人探偵である。 通常、探偵小説と言えば、凶悪な殺人犯に叡智を駆使して立ち向かうというイメージがあるかもしれないが、彼が遭遇する事件は、殺人よりも、詐欺、横領、窃盗事件などが多い。また、彼は視覚をまったく欠いていながらにして、残りの優れた四感(特に鋭いのは触覚)と、見事な判断力を持ってして何事もなかったように事件を解決していく。その描写は生唾ものだ。

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“マックス・カラドス”初の短編集は1914年に英国で出版された。すなわち、第一次世界大戦が勃発し、トレンチコートが軍服として塹壕で使用された年である。その他には、ラウンジスーツが一般的に定着し、シャツの襟もハードカラーからソフトカラーへ変化していく時代でもあった。言い換えれば、服飾史としても非常に重要な年代でもある。
実は探偵小説の題名には、服装に付随するものや、それにちなんだ題名が少なくない。今回紹介した「マックス・カラドスの事件簿」にも“靴と銀器”という、服装がカギとなるタイトルの作品が収められている。

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このように、歴史とファッションを一緒に紐解いていく楽しみ方もある。今回は職業探偵に特化したが、広義の探偵物(スパイ、警察、怪盗)などを含めると膨大な数があり、紹介できたのはほんの一部である。加えて、国、年代、作者によって、傾向が随分異なるので、色々な作品を読み比べて楽しんで欲しい。

僕は探偵物の小説や映画(特にハンフリー・ボガート)を見ると、服装や歩き方まで感化されてしまうが、あれはボギーだからカッコいい。トレンチコートを着込み、ボーラーハットを被った上に、足音を消して歩いていれば、間違いなく怪しいので要注意である。

Text&Photo by Shogo Hesaka

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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。毎月第三土曜日KRYラジオ「どよーDA!」に出演中。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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