先ごろ行われた第58回グラミー賞授賞式。
日本ではWOWOWで生中継されたので、ご覧になった方も多かったのでは?
各々の分野における圧倒的な才能だけが出揃った感のある受賞作の数々、特に主要4部門については、年間最優秀アルバムがテイラー・スイフトの『1989』、年間最優秀レコードがマーク・ロンソン feat. ブルーノ・マーズ の「Uptown Funk」、年間最優秀楽曲がエド・シーランの「Thinking Out Loud」、そして最優秀新人賞がメーガン・トレイナーという並びを見ると、今日的なポップセンスが評価を受けた年だったのかなあ、という印象も受けました。
一昨年、昨年とノミネートされていたものの受賞に恵まれず、まさに三度目の正直が実って、年間最優秀楽曲を含む2冠を手にしました。そんな彼のアルバム「X(マルティプライ)」は、プロデュースにエミネムからレッチリまで手がけたリック・ルービンと、「ハッピー」を大ヒットさせたファレル・ウィリアムズという二大巨頭のサポートで生まれました。さすが随所に感じられるクオリティの高さには匠の仕事を感じさせます。
ともあれ、エドの繊細な歌声と起伏に富んだメロディが、多くのリスナーの心を掴んだことを証明する結果となりました。
そして、受賞の合間に行われる華やかなライブ・パフォーマンスの数々もまたグラミー賞の目玉です。なかでも やはりBMR目線で触れたいのは、レデイー・ガガが熱演したデヴィッド・ボウイ追悼パフォーマンスです。共演はこのパフォーマンスの音楽監督も務めたナイル・ロジャース。彼は何と言ってもかつてボウイの『Let’s Dance』をプロデュースした御仁です。この日のためにボウイのタトゥーも入れたというガガは、高いテンションで全10曲のメドレーを披露しました。
やはり強大なアイコンを悼むというのは難しいものですね。ボウイの急逝からこの授賞式までは、さほど日にちもありませんでした。一説にはグラミー賞運営側からガガ以外に何人かオファーしたものの、断られたらしいというニュースもありました。そんななかでナイルを担ぎ出して、突貫工事でこのクオリティだったわけですから、私は率直にガガという世界クラスのアーティストが持つ表現力のクオリティの高さに感心させられました。
ちなみに日本人のトピックとしては、小澤征爾の「ラヴェル:歌劇「こどもと魔法」」による最優秀オペラ・レコーディングの受賞でしょう。このCD、本稿執筆時点で品切れ店が続出しています。実は私も未聴だったのでCDショップまで買いに出かけたのですが、一枚もありませんでした(早く聴きたい…)。
と、いうわけで見応え十分だった当日の模様はWOWOWライブで3/20に再放送されます。興味の湧いた方や見逃してしまっていた日本にお住いの方は、ぜひチェックして下さい。
日本ではWOWOWで生中継されたので、ご覧になった方も多かったのでは?
各々の分野における圧倒的な才能だけが出揃った感のある受賞作の数々、特に主要4部門については、年間最優秀アルバムがテイラー・スイフトの『1989』、年間最優秀レコードがマーク・ロンソン feat. ブルーノ・マーズ の「Uptown Funk」、年間最優秀楽曲がエド・シーランの「Thinking Out Loud」、そして最優秀新人賞がメーガン・トレイナーという並びを見ると、今日的なポップセンスが評価を受けた年だったのかなあ、という印象も受けました。
Thinking Out Loudも収められたEd Sheeranのアルバム『X』
もちろん「え? ケンドリック・ラマーがなぜ年間最優秀アルバムを獲らないの?」とか、言いたいことが山盛りの方もいらっしゃるでしょうが、その辺も含めてグラミー賞“らしい”内容だったのかな、とも感じました。とはいえ、ケンドリック・ラマー(授賞式のライブがハンパじゃない迫力でした)とディアンジェロはその他の部門では受賞を果たしましたから、ブラックミュージックの当たり年だった2015年を象徴する一面もそれなりに映し出した格好となったのではないでしょうか。 Kendrick Lamar『To Pimp a Butterfly』
D’Angelo And The Vanguard『Black Messiah』
Kendrick Lamar – Alright
年間最優秀楽曲を受賞したエド・シーランはイギリスのシンガーソングライターですね。一昨年、昨年とノミネートされていたものの受賞に恵まれず、まさに三度目の正直が実って、年間最優秀楽曲を含む2冠を手にしました。そんな彼のアルバム「X(マルティプライ)」は、プロデュースにエミネムからレッチリまで手がけたリック・ルービンと、「ハッピー」を大ヒットさせたファレル・ウィリアムズという二大巨頭のサポートで生まれました。さすが随所に感じられるクオリティの高さには匠の仕事を感じさせます。
ともあれ、エドの繊細な歌声と起伏に富んだメロディが、多くのリスナーの心を掴んだことを証明する結果となりました。
Ed Sheeran – Thinking Out Loud
また惜しくも受賞は逃しましたが、最優秀新人賞をはじめ3部門にノミネートされていたジェイムス・ベイもイギリスはヒッチンの出身です。同じく「最優秀新人賞」にノミネートされていたトリー・ケリーと共に、ライブ・パフォーマンスで2曲を披露しました。彼はエドに比べると、さらにオーセンティックなロックからの影響を感じさせるシンガーソングライターのようですね。 James Bayのデビューアルバム『Chaos & the Calm』
James Bay – Hold Back The River
彼らは共に25歳。どちらも繊細な歌声からの爆発力とスケール感のあるソングライティングが才能を感じさせる、今後も楽しみなイギリスの新鋭です。そして、受賞の合間に行われる華やかなライブ・パフォーマンスの数々もまたグラミー賞の目玉です。なかでも やはりBMR目線で触れたいのは、レデイー・ガガが熱演したデヴィッド・ボウイ追悼パフォーマンスです。共演はこのパフォーマンスの音楽監督も務めたナイル・ロジャース。彼は何と言ってもかつてボウイの『Let’s Dance』をプロデュースした御仁です。この日のためにボウイのタトゥーも入れたというガガは、高いテンションで全10曲のメドレーを披露しました。
Lady Gaga – David Bowie Tribute by Lady Gaga From The 58th GRAMMYs
ガガのボウイ愛が炸裂したこのパフォーマンス、私はとても楽しめたのですが、ボウイの息子である映画監督のダンカン・ジョーンズはあまりお気に召さなかったようで、SNSに意味深な投稿をしていました。彼女のテンションが「クールじゃない」と受け取られてしまったのでしょうか?(まあたしかにポップだったけど)。やはり強大なアイコンを悼むというのは難しいものですね。ボウイの急逝からこの授賞式までは、さほど日にちもありませんでした。一説にはグラミー賞運営側からガガ以外に何人かオファーしたものの、断られたらしいというニュースもありました。そんななかでナイルを担ぎ出して、突貫工事でこのクオリティだったわけですから、私は率直にガガという世界クラスのアーティストが持つ表現力のクオリティの高さに感心させられました。
ちなみに日本人のトピックとしては、小澤征爾の「ラヴェル:歌劇「こどもと魔法」」による最優秀オペラ・レコーディングの受賞でしょう。このCD、本稿執筆時点で品切れ店が続出しています。実は私も未聴だったのでCDショップまで買いに出かけたのですが、一枚もありませんでした(早く聴きたい…)。
と、いうわけで見応え十分だった当日の模様はWOWOWライブで3/20に再放送されます。興味の湧いた方や見逃してしまっていた日本にお住いの方は、ぜひチェックして下さい。
内田 正樹
エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。