映画!リマスター!新作! 元気過ぎるUKレジェンドたちの近況。
前回は期待の新星を紹介しましたが、今回はベテランです。まあニューカマーもどんどんリコメンしていきたいんですが、どっこいレジェンド級がまだ俄然元気。というか、元気過ぎるんですよ……(笑)。まずはビートルズ。現在公開中の映画「ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK – The Touring years」を劇場で観ました。
1962年のメジャーデビューから70年のポール脱退による事実上の解散までが約8年間。そのうち彼らがファンの前でライブを行っていた期間はデビューから66年8月までの約4年間しかなかったのです。この時期にスポットを当てた編集で、コアなファンにしか知られていなかった史実が新鮮な味わいで伝わってくる象徴的な場面があります。64年のアメリカ南部ゲイターボール公演の一幕です。人種による座席分けという当時の現地でまかりとおっていた風習を、「黒人と白人が別々の場でライブを観る必要などない」という意思によって、(スターとはいえ)イギリスから来た20代そこそこの白人青年たちが毅然とした態度で一蹴するのです。
オバマという黒人初の大統領が生まれるなんて、まだ夢のまた夢だった時代のアメリカでの出来事ですよ。つまり本作は懐古的な映画ではなく、むしろ2016年の今だからこそ有効な機能性を持った、ビートルズをよく知らない人にこそ観てほしい作品だと思いました。
そして肝心のライブ演奏がまた凄まじいのです。劇場でも映画本編終了後にシェイ・スタジアムのライブ映像が30分間上映されますが、映画と連動してお色直しされた「ライブ・アット・ザ・ハリウッドボウル」は、彼らが公式に残した唯一のライブアルバムです。
画期的なソングライティング。折れない姿勢。若き肉体の躍動。それらは彼らが伝説となった要因の一片であり、ロックンロールという音楽の真髄でもあるのだと感じられました。
お次ぎはレッド・ツェッペリンです。先ごろリリースされた「コンプリートBBCセッション デラックス・エディション」は、彼らが1969年から71年の間にイギリスBBCラジオのプログラムに出演した際のライブ音源で編まれた2枚組のCDです。97年に一度発売されたものに8曲の未発表音源を追加して、リーダー兼ギタリストのジミー・ペイジが最新リマスタリングを施していたものです。
もうひとつには最新の技術を駆使して再現させることで、以前のテクノロジーでは再現できなかったこのバンドのとんでもないバンドマジックと異常な情報量を現代のリスナーへリアルに届けること。三つ目には彼自身が許容できる未発表トラックを収録することで、一時代にはびこった違法な海賊盤とそれに等しい音源を全世界から一掃したい(と、どうやらマジに思っているあたりがまたペイジという人物の興味深いところ)といったところでしょうか?
最後はちらっとローリング・ストーンズ。つい先日、突如11年ぶりのニューアルバム『ブルー&ロンサム』を12月2日にリリースするとSNSを通じて電撃発表しました。
というわけで、ポールもリンゴもいまだ現役だし、ペイジはもういいかげんにツェッペリンかソロプロジェクトに重い腰を上げてくれるのでは?と期待してしまうし、ストーンズは言わずもがなのフルスロットルという2016年です(笑)。まだまだ元気なUKレジェンドたちから、まだ当分は目が離せない模様です。ではまた!!
内田 正樹
エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。