話題の大回顧展『DAVID BOWIE is』の見どころなど。
このSTORIESをお読みいただいている方のなかにはもうご覧になった方もいるかもしれませんが、現在、東京品川・寺田倉庫G1ビルにてデヴィッド・ボウイ大回顧展『DAVID BOWIE is』が好評開催中です。本展はイギリスのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)がキュレーションを務め、2013年の同館開催を皮切りに世界9カ国を巡回したものです。300を超える彼のゆかりの品々が展示・上映されていて、音楽を軸にクロスカルチャーを体現するように駆け抜けた69年という表現者の生涯を「サウンド・アンド・ヴィジョン」という彼の楽曲よろしく立体的かつ包括的に一望できる展示です。
デヴィッド・ボウイ大回顧展『DAVID BOWIE is』ドキュメンタリー映画予告編
私は初日に先駆けて行われたマスコミ観覧日に鑑賞してきました。今回はその見所をちらっとレポートしたいと思います。まず展示の序盤ではデヴィッド・ロバート・ヘイウッド・ジョーンズという一人の少年が、どのような青春時代を過ごし“デヴィッド・ボウイ”へと変貌を遂げたのかが克明に紐解かれていきます。特に60~70年代前半についての展示では、ボウイが体験した当時の音楽シーンや世相との関連性にも触れていて、音楽が生まれた背景としての当時の世相を併せて紹介する行き届いたキュレーションに膝を打ちました。
David Bowie – Space Oddity <OFFICIAL VIDEO>
そして彼の直筆のイラストやデッサンも数多く展示されています。やー、ボウイって、知ってはいたけど絵がうま過ぎる(笑)。去年だったか書店で“出世する人は絵でモノを考える”云々といったタイトルのビジネス啓蒙書を目にした記憶がありますが、まさに頭の中で絵を描いて物を考えることが出来た人だったのだなあと思い知らされました。 また物書きのはしくれとして直筆の原稿や楽譜にはやはりグッときました。かの名曲のどこをどう直し書き換えていたのか、思わず目で追ってしまい、それだけで軽く何十分も過ぎてしまいます。カットアップメソッドの導入やコンピュータによるランダムな言語の組み替えによる作詞プログラム(!)の実験など、晩年まで新たなソングライティングについて飽くなき実験を繰り返していた様子が伝わってきます。
さらに日本独自企画として、映画「戦場のメリークリスマス」で共演した北野武氏と坂本龍一氏の最新インタビュー映像も上映されています。これ、時間としてそこまで長い映像ではないのですが、とても興味深いエピソードが語られています。「戦メリ」を未見の方は、ぜひこの機会にDVDでご覧になってから足を運んではいかがでしょうか?
DAVID BOWIE is | デヴィッド・ボウイ大回顧展
ちなみに来日していたキュレーター氏が記者会見で語っていたのですが。ボウイのウエストが26.5インチとあまりに細く、マネキンの準備にはかなり苦労したそうです。えっ……26.5インチって、67センチ!? ほ、細い。まさに痩身の美男子だったのですね。
では本展の鑑賞にあたって、聴いておくべきアルバムとは? これ、原稿を依頼された他のweb媒体やサンデー毎日の連載コラムでも書かせていただいたのですが、もちろん理想を言えば全作制覇でしょう。でも誤解を恐れずにぶっちゃけてしまえば、たとえば昨年リリースされた最新2枚組ベスト盤『レガシー 〜ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・デヴィッド・ボウイ』(ワーナー)を予習しておくだけでも十分だと思うのです。
David Bowie – Let’s Dance
個人的な思いとしては、クリエイティブな仕事に興味のある学生や若者にこそ足を運んでほしいですね。ボウイが自分のヴィジョンを信じて、ブレることなくそれを具現化し続けた記録からは、必ずや何らかの教訓を感じてもらえると思うからです。往年のファンが親子で訪れても楽しいと思います。それと公式グッズのデザインと価格設定がどれも秀逸なので、散財にご用心下さい
(笑)。私はご覧の通りむちゃくちゃ幸福な散財を果たしました……(笑)。
David Bowie – No Plan
ぜひとも足を運んでみてください。それではまた! 内田 正樹
エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。