スタイリッシュなスパイ・ムービー3選 | BRITISH MADE

BM RECORDS TOKYOへようこそ スタイリッシュなスパイ・ムービー3選

2018.01.11

「キングスマン:ゴールデン・サークル」公開記念。
英国ムード漂うスタイリッシュなスパイ映画にフォーカス。

現在絶賛公開中のマシュー・ヴォーン監督作「キングスマン:ゴールデン・サークル」。本作についてはすでに拙文を含めた2本のテキストがBRITISH MADEにアップされていますね。

・ 映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』のキモとなる3つのお楽しみ
・「キングスマン:ゴールデン・サークル」公開!
そこで今回は、BRITISH MADE 取り扱いブランドであるドレイクスのレジメンタルタイを着けたキングスマンの雄姿が眩しい本作の公開を記念して、英国ムード漂う3本のスタイリッシュなスパイ映画にフォーカスしてみました。
「キングスマン」シリーズが十二分にカッ飛ばしているので、ここではギャグに走らず(はい、この時点で「オースティン・パワーズ」シリーズと「ジョニー・イングリッシュ」シリーズは除外です(笑))、ここ10年以内の作品から選んでみました。

まずは2015年公開の「コードネームU.N.C.L.E.(アンクル)」です。
20180111_kingsman_1
監督は「シャーロック・ホームズ」シリーズ2作を手掛けたガイ・リッチー。この映画は1960年代に、アメリカや日本で放映されたテレビドラマ「0011ナポレオン・ソロ」のリメイクです。

アメリカとドイツが睨み合いを続けていた60年代の東西ドイツとイタリアを舞台に、核兵器を取り巻くある重要なミッションを遂行すべく、CIAエージェントのナポレオン・ソロ(ヘンリー・カヴィル)とKGBエージェントのイリヤ・クリヤキン(アーミー・ハマー)が抜擢されます。そもそも宿敵同士のCIAとKGBが無理やりタッグを組まされる。その凸凹コンビの関係性が、やがては熟れたバディになっていく。本作の面白さはその辺りにあります。

ん?「イギリスじゃないじゃん! MI6(SIS)じゃないじゃん!?」。はい、おっしゃる通りです。ではなぜこの映画を選んだのか?

実はスピルバーグ作品の常連であるジョアンナ・ジョンストンが手掛けたソロのスーツはCIAのくせしてイギリスの有名テーラー、ティモシー・エベレストで、おまけに靴はやはりイギリスのジョージ・クレバリーのビスポークなのです(笑)。ちなみに、イリヤの服はラルフローレン(アメリカ)とバラクーダ(イギリス)を使用。往年のスティーブ・マックイーンをイメージしたそうなのですが、また何つうヘソ曲がりな設定と衣装のセレクトでしょうか(笑)。

ヘンリー・カヴィルはイギリス人俳優ですが、ご存知の通り、現役のスーパーマンでもあります。実は私、個人的にはダニエル・クレイグの次のボンドはヘンリー・カヴィルが第一希望だったのですが、(イギリス俳優なのに)スーパーマンまで演じて、遂にはソロまで演じちゃったので、もはやボンドは絶望的でしょうね(苦笑)。

とは言え、肝心の本編は小気味良いテンポ進む物語といい、適度にハラハラするアクションと外連味たっぷりのユーモアといい、「キングスマン」とはまた違った形で、現在のシリアス路線の007シリーズが手を出せないスパイ・ムービーの形を提示しています。
そうそう、忘れちゃいけないのがヒュー・グラント。クールなスリーピース姿で英国海軍中佐を演じていますのでそちらもチェックを。

すでに続編の製作も決定しているという本作、ちょっと変則的なセレクトですが、アリシア・ヴィキャンデル演じるヒロインのギャビーが着こなすスウィンギンな60’sモードも目に楽しいし、ニーナ・シモンの歌う「テイク・ケア・オブ・ビジネス」を使うという、サウンドトラックのセンスも抜群な一本なのでぜひ。

続いては2012年に公開された「裏切りのサーカス」です。
20180111_kingsman_2
原作は元MI6諜報員にして、スパイ小説の大家である作家、ジョン・ル・カレが1974年に書いた小説『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』です。これをトーマス・アルフレッドソンが監督した本作は、主人公のジョージ・スマイリーをゲイリー・オールドマンが演じ、「キングスマン」にも登場しているコリン・ファース、トム・ハーディ、ベネディクト・カンバーバッチといった名優たちが共演しています。

東西冷戦下。イギリス秘密情報部(通称サーカス)とソ連情報部(通称モスクワセンター)は水面下で様々な情報戦を繰り広げていました。長年の作戦失敗や情報漏洩から、サーカスの長官であるコントロールは内部にソ連情報部の二重スパイ“もぐら”がいることを確信します。

「もぐら」に関する情報源と接触するため、サーカスの一人をハンガリーに送り込むも作戦は失敗。責任をとってコントロールと彼の右腕であったジョージ・スマイリーは引退を余儀なくされます。しかし紆余曲折あって、スマイリーは引退したにも関わらず“もぐら”探しを要請されます。

原作とは少々設定や展開が異なりますが、ひたすら暗く、渋く、息を飲む駆け引きが繰り広げられます。結末も難解で、もしかしたら一度の鑑賞では「ん? どういうこと?」となるかもしれませんが、劇中の彼らが迷い込む疑念の迷宮を観客である私たちが追体験するようなミステリー的要素が秀逸です。

そもそもスパイは影の存在であり、そこにはヒーローもスターもいない。ましてや勝者などいるはずもないという、スパイが本来持つ宿命をひたすらシリアスに描いた一作です。ちなみに撮影監督のホイテ・ヴァン・ホイテマはのちに「007スペクター」(2015年)の撮影監督を手掛けています。

ファッション的な注目はもちろん、キャラクターの個性付けを的確に表現したスーツの着こなしです。実は本作、ポール・スミスがクリエイティブ・サポートを担当。衣装のみならず、時代背景に即した小物選びや通底するトーンまで、作品全体のクリエイティブに関わっているのです。こちらもすでに続編が決定している模様です。スマイリーの次なる活躍に期待しましょう。

最後はやはりジェームズ・ボンドを登場させましょう。はい、「007スペクター」です。
20180111_kingsman_3
本作については過去にもこのコーナーで紹介していますが、あらためて選んだ理由は、(「キングスマン」公開記念なので)現在までのところ、クレイグ・ボンドの作品の中では(かなり少ないながらも)最も細かなユーモアを加味した作品だからです。これは前作「スカイフォール」が英国映画史を塗り替える大ヒットを記録した一方で、一部の批評家や長年のボンド・ムービー・ファンから、「ちょっとシリアス過ぎないか?」という声が上がったことを受けての演出だったようです。

ボンドと洒落た会話の応酬を見せるQ(ベン・ウィショー)のセリフは、「キングスマン:ゴールデン・サークル」でハル・ベリー(元ボンドガール!)演じるステイツマンのメカ係であるジンジャーに応用されています(笑)。どのセリフがそうか、劇場で探してみてはいかがでしょうか。

本作のファッション、スーツは言わずと知れたトム・フォードが担当。他にも英国ブランドではクロケット・ジョーンズやサンダースが使われています。

で、過去にも紹介しましたがあらためておさらいです。先代のピアーズ・ブロスナンと、当代のクレイグによる「007 カジノ・ロワイヤル」でボンドが愛用しているシューズは、我らがBRITISH MADE取り扱いのチャーチですよ。こちらもぜひチェックを。

いかがでしょうか。英国人なのに紅茶嫌いなボンドといい、ともかくスパイヒーローには偏屈な美学を持った男が多いことが分かりますねえ(って、こんなまとめでいいのか!?(笑))。いずれもソフト/配信共に入手/鑑賞が可能ですので、気になった未見の作品があったら、「キングスマン:ゴールデン・サークル」と共に、ぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか。ではまた!

Text by Uchida Masaki

関連リンク
過激にして華麗な、あの英国スパイが帰って来た! 映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』のキモとなる3つのお楽しみ
「キングスマン:ゴールデン・サークル」公開!
次のボンドは誰だ!?


plofile
内田 正樹

内田 正樹

エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。

内田 正樹さんの
記事一覧はこちら

同じカテゴリの最新記事