横浜美術館で開催されている「ヌード NUDE –英国テート・コレクションより」は、その題名通りヌードに関連する作品に焦点を当てた展覧会だ。“ヌード”という言葉を耳にすると恥ずかしながら身構えてしまう。それは絵画に限らず、映画や写真においても同様で、まずどこを見たらいいのかがわからないし、どうしてもポルノを連想してしまう。ゆえに注視したり、熟視したりすることがいささか恥ずかしく思え、高尚などと言われるとますます訳がわからなくなるといった具合だ。言わば、“ヌード”に芸術性を見出すことができないのである。
そのような理由からこの展覧会のことを執筆するのは幾分と躊躇した。しかしながら、鑑賞後には新たな魅力を見出すことができたため筆を進めていきたい。まず、一重にヌードといってもそのシチュエーション、ポージングなどが各々異なっており、具体的、抽象的にとその表現方法も多種多様である。そもそもは身体の構造を理解し、素描の訓練を行う重要な意図があったが、時代が経過するに連れてフェミニズムの象徴となったり、パフォーマンスのひとつとして表現されてきた。つまり、作品単体を鑑賞するだけではなく、歴史的側面に紐付けてみると奥ゆかしい。言い換えれば、作品が制作された背景や過程を考えながら鑑賞するとまた違った魅力が浮き出てくるのだ。それが“ヌード”に絞られたこの展覧会の魅力のひとつに違いない。
例えば、本邦初公開であるオーギュスト・ロダンの大理石彫刻である“接吻”。等身大を超えるダイナミックな作品だ。20世紀初頭にこの作品がイギリスで展示された際には、美しい大理石彫刻としての造形が賞賛される一方で、あまりにも過激な表現だったため、若者に刺激が強すぎると判断され、布で覆われるというエピソードが残っている。現代とはあまりにもかけ離れた価値観が存在したことがうかがえ、いかにセンセーショナルな作品であったかがはっきりわかる。このようなエピソードを聞くと、冒頭の私見もまんざら見当違いという訳でもなく、むしろ数百年も前からすでに論議され、そういった歴史の中から世に名高い作品が制作され続け、その作品たちに会することができるのである。つまり、“ヌード”というのはいつの時代でも討論や議論のテーマとなり、その価値を問われてきた。その事実を本展覧会で改めて実感することができたのである。
そのような理由からこの展覧会のことを執筆するのは幾分と躊躇した。しかしながら、鑑賞後には新たな魅力を見出すことができたため筆を進めていきたい。まず、一重にヌードといってもそのシチュエーション、ポージングなどが各々異なっており、具体的、抽象的にとその表現方法も多種多様である。そもそもは身体の構造を理解し、素描の訓練を行う重要な意図があったが、時代が経過するに連れてフェミニズムの象徴となったり、パフォーマンスのひとつとして表現されてきた。つまり、作品単体を鑑賞するだけではなく、歴史的側面に紐付けてみると奥ゆかしい。言い換えれば、作品が制作された背景や過程を考えながら鑑賞するとまた違った魅力が浮き出てくるのだ。それが“ヌード”に絞られたこの展覧会の魅力のひとつに違いない。
例えば、本邦初公開であるオーギュスト・ロダンの大理石彫刻である“接吻”。等身大を超えるダイナミックな作品だ。20世紀初頭にこの作品がイギリスで展示された際には、美しい大理石彫刻としての造形が賞賛される一方で、あまりにも過激な表現だったため、若者に刺激が強すぎると判断され、布で覆われるというエピソードが残っている。現代とはあまりにもかけ離れた価値観が存在したことがうかがえ、いかにセンセーショナルな作品であったかがはっきりわかる。このようなエピソードを聞くと、冒頭の私見もまんざら見当違いという訳でもなく、むしろ数百年も前からすでに論議され、そういった歴史の中から世に名高い作品が制作され続け、その作品たちに会することができるのである。つまり、“ヌード”というのはいつの時代でも討論や議論のテーマとなり、その価値を問われてきた。その事実を本展覧会で改めて実感することができたのである。
オーギュスト・ロダン《接吻》(部分)
1901 – 4 年 ペンテリコン大理石
Purchased with assistance from the Art Fund and public contributions 1953 image © Tate, London 2017
最後に、テートコレクションの大本についても紹介したい。テート・ブリテンとは、1889年に実業家であり、英国美術の収集家でもあったヘンリー・テートが、英国美術のための美術館建設を発案し、1897年に開館した国立美術館だ。国内外の近現代美術を展示するテート・モダン、テート・リバプール、テート・セント・アイヴスの4 つの施設から構成され、およそ7万点のコレクションを有している。4つの施設での年間来場者数の合計はおよそ660万人を記録し、まさに英国を代表する国立美術館のひとつである。僕自身もテート・モダンに訪れたことがあり、美術館だけでなく、周辺の景観も素晴らしい。ちなみにVol.30で紹介したグラグラ橋(ロンドンミレニアムブリッジ)はすぐそばに架かっている。4つすべてを制覇するのは容易ではないが、ロンドンに訪れた際にひとつ訪れてみてはどうだろうか。1901 – 4 年 ペンテリコン大理石
Purchased with assistance from the Art Fund and public contributions 1953 image © Tate, London 2017
テートモダンから見えるテムズ川とセントポール大聖堂
ヌード NUDE ―英国テート・ コレクションより
(2018 年3月24日~6月24日)
会場:横浜美術館
会期:2018年3月24日(土)〜 6月24日(日)
開館時間:10:00〜18:00 *ただし、5月11日(金)、6月8日(金)は20:30まで
(入館は閉館の30分前まで)
休館日:木曜日、5月7日(月) *ただし5月3日(木・祝)は開館
主催:横浜美術館、読売新聞社、テート
協力:日本航空 みなとみらい線 横浜ケーブルビジョン FM ヨコハマ 首都高速道路(株)
後援:ブリティッシュ・カウンシル、J-WAVE
協賛:大日本印刷
観覧料(税込):
一般:¥1,600[1,400/1,500]
大学・専門学校生:¥1,200[1,000/1,100]
中学・高校生:¥600[400/500]
展覧会公式サイト:artexhibition.jp/nude2018/
展覧会公式 Twitter:@nude2018
お問合せ(ハローダイヤル):03-5777-8600
横浜美術館
〒 220-0012
横浜市西区みなとみらい 3-4-1
TEL:045-221-0300(代) FAX:045-221-0317
yokohama.art.museum
アクセス
●みなとみらい線(東急東横線直通)「みなとみ らい駅」3番出口から徒歩3分
● JR線、横浜市営地下鉄線「桜木町駅」から「動く歩道」を利用、徒歩10分
部坂 尚吾
1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。毎月第三土曜日KRYラジオ「どよーDA!」に出演中。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com