UKロックの今昔を支える楽器の中の人気者
以前、ザ・フーの回でも同じ書き出しで紹介しましたが、今年5月、ギターの老舗ブランドであるアメリカのギブソンが、日本で言うところの民事再生法を米国裁判所に申請しました。経営破綻の主な要因は、他業種への投資や買収による債務による圧迫(要は拡大経営に失敗した)で、むしろギター事業そのものは順調だったそうで、ブランドは今も継続中です。 この時、昨今のヒップホップの台頭と紐付けて、ロックの衰退を象徴する出来事だといった報道も見受けられました。私ももちろんヒップホップだってたくさん聴きますが、ロック育ちの身としては心を痛めました。
では、ここ日本の現状はどうなのか? 先日、たまたま楽器業界の関係者と話をしたところ、そりゃ90年代のバンドブームの頃に比べたら落ち込んだものの、決して売れていないわけではないのだそうです。特にフェンダーやギブソンといった有名どころは、無論モノにもよりますが、昔に比べたらだいぶ安くなったので(昔はマジで高かった……)、かつて憧れていた大人が“大人買い”しているようですし、若い子はアニメやガールズバンド、バンギャル(バンドギャル)の影響で、中高生の市場はどちらかというと主に女性というか元気な“女子”に支えられているようなんです。
このあたり、イギリスの現状もぜひどなたか教えていただきたいものですが、今回はエレキギターへのエールも込めて、あらためてUKミュージシャンの大御所と代表的なエレキギターを(ざっくりとではありますが)検証してみたいと思います。
まず、基本的な話ですが、エレキギターは大半がアメリカのブランドです。これは、そもそもイギリスのミュージシャンがアメリカの音楽に憧れた流れとイコールだと言えます。その大元がフェンダーとギブソンという2大ブランドです。無論、機種にもよりますが、主にフェンダーはシャキシャキしていて音の線が(ギブソンに比べると)細く、ギブソンは(フェンダーに比べると)骨太なサウンドといったパブリックイメージです。
■ フェンダー使いのUKミュージシャン
クラプトンはかつてレースセンサーという、ノイズの少ない画期的なピックアップ(弦の音を拾い増幅させるマイクです)を広めたこともあり、まあストラトを世界中に売った立役者と言っても過言ではないでしょう。
そしてストラトならこの人も。ジェフ・ベックです。
私はかつてフェンダー・ジャパンのショールームでベックのシグネチャー(特注専用)モデルの複製版を試奏させてもらいましたが、ネックの形状がとんでもなくへんで驚きました。だいたいネックの握りって半楕円なんですが、ベックのシグネチャーはほぼ三角という独特のグリップ感でした……。
さらにディープ・パープルのリッチー・ブラックモアです。「スモーク・オン・ザ・ウォーター」や「ハイウェイ・スター」ではなく「ストレンジ・カインド・オブ・ウーマン」を選んでみました。
次はテレキャスターです。
ちなみにこれは有名な81年のツアー映像ですが、1分10秒あたりで、キースが黒のテレキャスカスタムで、ステージに闖入した観客を速攻でブン殴ってます(笑)。
■ ギブソン使いのUKミュージシャン
次はギブソンです。■ エピフォン使いのUKミュージシャン
■ リッケンバッカー使いのUKミュージシャン
やっぱりビートルズとジャムですかね。
このビデオではジョンもジョージもリッケンを抱えています。
■ UK生まれのギターブランド
じゃあイギリスのギターブランドは皆無なのか? そうではありません。ひとつにはゴードンスミスというブランドがあります。あとはゼマティス。
かつてギターを弾いていたけどホコリをかぶってしまっている方も、最近興味が湧いている方も、よかったらぜひ手にとってみてください。私も腕こそ人並み以下ですが、やっぱりちょっとでも弾けると楽しいものですよ(笑)。
個人的にはBRITISH MADE のブランドだと、これからの季節、マカラスターのニットやジョセフ・チーニーのチャッカブーツとギターなんて最高にクールな相性だと思います。しかも今秋から今冬は、クイーンやクラプトンのヒストリー映画も日本公開されます(追ってご紹介の機会があれば)。ぜひ、新たなギターの魅力を見つけてください。ではまた!
関連リンク
ビートルズ! ツェッペリン! ストーンズ!
ジェフ・ベック新作記念。懐かしの“三大ギタリスト”とは?
ザ・フー、伝説のライヴ音源をリリース。
内田 正樹
エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。