さて、大好物の野球の話題を経たので遅れたが、本題の読書である。一冊の名著が長年の時を経て和訳された。タイトルは「紳士靴のすべて」。オリジナルは、「Handmade shoes for men」という靴に関する書籍の金字塔と言っても過言でない代物である。それゆえセレクトショップ、テーラー、靴工房などを訪れれば、必ずどこかにレイアウトされている。事細かく、突っ込んだ内容の専門書になるため、必然的にページの量も膨大だ。正直、原文のままでは、完全に理解するのは少々荷が重かったが、逐語的に訳された本書では、みるみる頭に入っていく。靴の歴史から始まり、構、素材、ケア、アクセサリーといった基本的なことを学び直すにはお誂え向きだ。さらに、ページをめくる度が遅くなったのは、なめし、ブローキング、ピンキングについての箇所である。例えば、なめしに関して触れるならば、準備、実際のなめし、そして、仕上げからクリッキングについて、写真を交えながら、かなりの文字数が割かれている。知れば知るほど奥が深く面白い。なぜならば、靴に関連する職種や業者でなければ、これらの工程をすべて目の当たりにすることは難しい。知ってしまった以上は、その様子を実際に見てみたいと願うのが自身の欲深いところである。そんな欲望を抑えながら、一人ほくそ笑み、ページをめくるのである。
部坂 尚吾
1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。毎月第三土曜日KRYラジオ「どよーDA!」に出演中。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com