さて、本作「さらば愛しきアウトロー」の主人公フォレスト・タッカーは実在した人物だ。16 回の脱獄と銀行強盗を繰り返して誰一人として傷つけなかった。それどころか、被害にあった人物が「彼は紳士だった」と口を揃えて証言している。
本作を鑑賞後、改めて”紳士”とは何ぞやと考えてみた。僕が思う紳士とは、上品で礼儀正しく、教養の高い男性である。しかしながら、昨今メディアでは、どちらかというと装いにフォーカスされており、伊達男と混同してしまっている部分がある。少々定義が曖昧になっている気がしてならない。無論、装いと教養を兼ね揃えての紳士であることは否めない。実際、本作でのレッドフォードの装いも素敵だが、僕が注目いただきたいのは、彼の品格であり、礼節を重んじる一面だ。
また、スタイルとは一朝一夕に完成するものではない。趣味思考、経験、環境なども各々で異なるため、形成のされ方も千差万別だ。それにより、タッカーのようなオリジナルスタイルを備えている人物はますます魅力的に映る。そのようなことを考えながら、ロバート・レッドフォードが作り上げたフォレスト・タッカーに釘付けにされていた。
俳優ロバート・レッドフォードは、最後にニクい置き土産をしてくれた。本作のタイトルは、まるで彼自身に捧げられたタイトルのように感じられ、なかなか気に入っている。挿入歌であるJackson C. Frank Blues の”Runs The Game”が流れたときは目頭が熱くなった。
『さらば愛しきアウトロー』
7/12(金)、TOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー
公式サイト:longride.jp/saraba/
部坂 尚吾
1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。毎月第三土曜日KRYラジオ「どよーDA!」に出演中。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com