初秋に楽しむ「オン・ザ・ビーチ」
クリス・レアのアルバム『オン・ザ・ビーチ』を含む80〜90年代のアルバムが、最新リマスター音源を使用した2枚組デラックス・エディションとして、10月18日にリリースされるそうです。前述の若手が直接的に影響されているわけではありませんが、長年の音楽ファンのなかには、彼らの音楽の向こうに、源流のひとつとしてAORを思い出す人もいるのではないでしょうか。
AORとはアダルト・オリエンテッド・ロック(和製英語。アルバム・オリエンテッド・ロックはまた別の意味)の略です。基本的にはブラック・コンテンポラリーのグラマーを白人特有のセンスで昇華することで生まれた、ソフトでメロウな曲調のポップスという括りで知られています。大人向けに洗練された、アーバンな雰囲気を醸し出している作品が多いですね。
日本で知られるAORの代表格としては、ボズ・スキャッグス、ボビー・コールドウェル、クリストファー・クロス、ルパート・ホルムズ(イギリス生まれですがアメリカ人)など多くがアメリカ人アーティストですが、クリス・レアは、イングランドのミドルズブラ出身です。
1951年、イタリア移民の父とアイルランド人の母の間に生まれた彼は、ジョー・ウオルシュ、ボブ・ディラン、ストーンズらに影響を受けて音楽を始めます。そしてバンド活動を経て、78年に『何がベニーに起ったか』でソロデビューしました。プロデュースは、最近、映画『ロケットマン』でも人気のエルトン・ジョンを手掛けたガス・ダッジョンでした。
ハスキーかつスモーキーなシブい声色のボーカルとスライド・ギターで、彼は『オン・ザ・ビーチ』の他にも、ヨーロッパ全土でヒットした『ロード・トゥ・ヘル』(1989年)、『オーベルジュ』(1991年)などのヒットアルバムを世に送り出しました。
ちなみに、ちょっと気が早いですが、彼のヒット曲にはこんなクリスマスナンバーもあります。
それではまた。
内田 正樹
エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。