8年ぶりの新曲と共に、今こそ聴きたいストーンズナンバーをピックアップ
4月24日、ザ・ローリング・ストーンズが8年ぶりとなる新曲「リヴィング・イン・ア・ゴースト・タウン」をリリースしました。クレジットはもちろんミック・ジャガー/キース・リチャーズ。いわゆる“グリマー・ツインズ”と呼ばれる黄金コンビです。歌詞からも分かる通り、この曲で歌われているのは、まさしくこの新型コロナウイルス禍の世相です。
すでにミュージックビデオもアップされています。
ミディアムなテンポと絡みつくような色気を持った、ソウルフルなテイストの曲調ですね。代表曲で言えば、「ミス・ユー」や「ハーレム・シャッフル」辺りが想起されます。
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以下はメンバーのオフィシャルコメントです。
ミック・ジャガー:「ロックダウンの前に、ストーンズはスタジオで新曲をレコーディングしていた。その中に、いま現在の状況に共鳴するような曲があったんだ。だから、それぞれが個別に作業してこの曲を仕上げた。その曲がこの「リヴィング・イン・ア・ゴースト・タウン」だ。気に入ってもらえると嬉しいよ」ストーンズは以前から次の新作オリジナルアルバムのために、ロサンゼルス、ロンドンでレコ―ディングを行っていました。
キース・リチャーズ:「長い話を短く説明しよう。この曲は1年以上前にLAでレコーディングしていた。以前から作業しているニュー・アルバムに入る予定の曲だった。そしてこの事態になって、ミックと、あの曲を早急に仕上げて出そうということになった。そういうことで「リヴィング・イン・ア・ゴースト・タウン」をリリースすることになった。みんな、気をつけてくれよ!」
チャーリー・ワッツ:「この曲を仕上げるのは楽しかった。現状を表わしていると思うし、聴く人もそう感じてくれるといいなと思っている」
ロニー・ウッド:「この数週間、多くの人たちからメッセージをもらっている。本当にありがとう。君たちが音楽を楽しんでくれているということは、俺たちにとって、すごく大事なことなんだ。今日は皆に新曲を届けるよ。楽しんでもらえるといいな。頭に残る特徴的なメロディの「リヴィング・イン・ア・ゴースト・タウン」だ」
コメントからも分かる通り、つまりこの曲のベースとなるトラックは、驚くべきことに世界各国のロックダウン(もしくは日本のようにそれに準ずる状態)以前に存在していたものだったのです。
時に、優れたアーティストは預言者となります。こうした曲を新型コロナウイルス禍以前から書き下ろしていた辺りに、ストーンズがなおも最前線に君臨する理由の一端を感じずにはいられません。
もっと言えば、“卓越した詩情”と“予見的な視点”、そして“引きの強さ”。さらには時代の描写を臆することなくスケッチし、それをスピーディーに発表(リリース)する度胸とプライドと、もちろんミック・ジャガーの卓越したビジネスセンスですね。つくづく脱帽です。
5月8日からスタート予定だった「No Filter Tour」は、当然、やむなく延期されています。ツアーはもちろんのこと、どこまで作業が進んでいたのかは分かりませんが、ニューアルバムのリリースも楽しみに待ちたいと思います。
ちなみに彼らは日本時間4月19日(日)、WHO(世界保健機構)とGlobal Citizenが主催し、レディー・ガガがキュレートした『One World: Together At Home』チャリティー・コンサートに出演しました。
テレワークで演奏されたのは「無情の世界」。1969年のアルバム『レット・イット・ブリード』に収録されていたナンバーで、新曲同様、まさにいまの世相にマッチしたリリックです。
しかもこれ、もう一段シャレが効いている事実がありまして。実はこの曲、リリースされている曲では、チャーリーではなく別の人(プロデューサーだったジミー・ミラー)がドラムを叩いているのです(苦笑)。もしかしたらテレワークと二重にかけられたユーモアだったのかも?
最後に、私からも、彼らのナンバーから一曲セレクトさせてください。1968年のアルバム『ベガーズ・バンケット』収録の「地の塩」です。
まだまた不安な状況ですが、皆さまのそばで、音楽が何らかの恵みとなることを願って。それではまた!
内田 正樹
エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。