映画の舞台は1958 年、キューバの首都ハバナ。英国諜報員ホーソンは、電気屋の店主ワーモルドをスパイとしてスカウトする。ワーモルドは、愛娘ミリーの将来のためにも金が必要で、この誘いを受諾した。しかし、諜報員としての訓練も経験も持ち合わせないワーモルドは、虚偽の情報をでっちあげて諜報部に流す。その情報に興味を示す諜報部と、その情報をキャッチした別の勢力が働きはじめ、事態はワーモルドの予期せぬ方向へ進んでいく。
また、ヒロインである、モーリン・オハラのトレンチコート姿も見事だ。丸みのある襟を立て、ベルトをきつく絞りウエスト位置を高く保っている。強弱をはっきりとつけ、縦のラインを活かしたシルエットだ。これが、気立ての良い彼女のキャラクターとマッチして魅了される。
陽気なキューバのロケーションを活かした序盤の楽観的な空気から、中盤以降は堰を切ったように増す緊張感。主演アレック・ギネスの醸す湿気のないドライなテンション。これらがうまく構成された結果、個性的な雰囲気が漂っている。痛烈な皮肉も盛り込まれている点がいかにも英国的だ。ハバナのバーで、ダイキリと葉巻なんてとても柄ではないが、旅行の欲求を刺激し、ハバナへといざなう映画だ。
部坂 尚吾
1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。毎月第三土曜日KRYラジオ「どよーDA!」に出演中。
江東衣裳
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