本作の監督はジェシカ・ハウスナー。かのミヒャエル・ハネケに師事したオーストリア人だ。テーマをダイレクトに訴えかける演出は見事にハネケイズムを踏襲している。他にも、対象物を通過する個性的なカメラのズームイン、暖色にも関わらずどこか冷淡な印象を与える照明、その照明と共鳴するかのような豊かな色彩の衣装とヘアメイク、雅楽を連想させる音楽など、強烈な個性を放つ各部署を空中分解させることなく見事にまとめあげている。
ビジュアルが個性的な映画は、そればかりが先行し得てして鑑賞後に何が伝えたかったのかがわからないことが多い傾向にある。しかし、冒頭で述べた通り、映画「リトル・ジョー」にはぶれない軸と強力なメッセージ性が付帯する。オリジナリティ溢れる世界観に誘い、緊張感を保ったまま幕を閉じる佳作だ。
リトル・ジョー
出演:エミリー・ビーチャム、ベン・ウィショー、ケリー・フォックス、キット・コナー他
監督:ジェシカ・ハウスナー『ルルドの泉で』
公開:7/17(金)アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー
部坂 尚吾
1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。毎月第三土曜日KRYラジオ「どよーDA!」に出演中。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com