さて、劇中ではいきいきとした女性3人が中心になって躍動する。だが、彼女たちを支え、勝るとも劣らない存在感を放つ2人の男性が印象的だったのでここで紹介したい。なお、話の筋に関係はないので、安心して耳を傾けていただきたい。1人目は、2つ星を持つ料理人マシューだ。彼がいつも着用しているのは年季の入った英国製ベルスタッフのワックスジャケット(おそらく MCGEE)だ。陽気でタフなように見え、繊細でどこか孤独さが垣間見える彼のキャラクターによく似合っていた。“地味な靴で満足するな、ルブタンを履け”と、イザベラを鼓舞する台詞は、マシューの生き方や哲学がよく表されていて説得力があった。2人目は、ミミと良好な関係を築く奇人フェリックスだ。印象深いのは、発明家の彼がジュール・ヴェルヌの“80日間世界一周”を引き合いに出しミミを魅了するシーンだ。この作品は、僕の大好きな英国人俳優ディヴィッド・ニーヴンで映画化され、このコラムでもすでに紹介している。彼は、旅についてミミにこう諭している。“現代では世界を知るのに旅する必要はない、世界が我々に近づいてくる”。教養ある彼らしい台詞で、ミミ同様に僕もフェリックスに惹かれた。これらには、脚本と監督を兼任したエリザ・シュローダーの趣味嗜好やバックグラウンドが反映されているように感じられた。各々のキャラクターがぼんやりとせず、くっきりと画面に表れいきいきとしている点が素晴らしい。
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ノッティングヒルの洋菓子店
公開:12月4日(金)公開予定
劇場:ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
部坂 尚吾
1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。毎月第三土曜日KRYラジオ「どよーDA!」に出演中。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com