ハットンガーデン事件は、英国では非常に有名な事件で、本作以外にも映画化やドラマ化されている。例えば、映画「ハットンガーデン・ジョブ」は、主演をマシュー・グードが担い、バジル目線で物語が描かれている。はたまた「ハットンガーデンの金庫破り」では、ティモシー・スポールが主演し、テリー目線でドラマ化されている。題材は同じながらも、異なる解釈で制作された作品を見比べると、さまざまな可能性が考えられ豊かな見解が生まれる。実際、「キング・オブ・シーヴズ」を含め、映像化された作品はそれぞれ作風がまったく異なっている。それは、未だに逮捕されていない犯人がおり、ヴェールに包まれているのも要因の一つだろう。全容が明らかになっていないがゆえに、物語を構成しやすいのかもしれない。マイケル・ケインをはじめとする熟練の俳優たちは、その不明瞭な部分を芝居で表現し、余白に彩を与えてくれるのだ。
『キング・オブ・シーヴズ』
2021年1月15日金 TOHO シネマズ シャンテ ほか全国順次公開
監督:ジェームズ・マーシュ(『博士と彼女のセオリー』)
出演:マイケル・ケイン、ジム・ブロードベント、トム・コートネイ、チャーリー・コックス、ポール・ホワイトハウス、レイ・ウィンストン、マイケル・ガンボン
kingofthieves.jp
部坂 尚吾
1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。毎月第三土曜日KRYラジオ「どよーDA!」に出演中。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com