こういった映画を鑑賞すると、作り手の強いメッセージがいたるところに込められているのではないだろうかと勘繰ってしまう。たとえば、生活必需品が段ボールに詰め込まれて届けられるのは AMAZONへの風刺だろう。最終的に赤ん坊までがそれに詰められて送り届けられるのは度肝を抜かれるともに、警鐘や暗示が含まれているように感じられた。他にも、無機質な家で、温かみの感じられない摂餌とも捉えられるような食事風景。嘲るようなトムの墓穴掘りもなかなかのいやらしい当てこすりだ。冒頭、ジェマは少女に自然の摂理を説くが、それが巡り巡って自分にもやってくるのは痛烈な皮肉だ。このように、本作には多くのギミックがあり、我々が生きる現実社会の問題を映画の中へ投影させている、非常に見応えのある佳作だ。
『ビバリウム』
2021年3月12日(金) TOHO シネマズシャンテ他全国公開
監督:ロルカン・フィネガン
脚本:ギャレット・シャンリー
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、イモージェン・プーツ、ジョナサン・アリスほか
部坂 尚吾
1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。毎月第三土曜日KRYラジオ「どよーDA!」に出演中。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com