圧倒的なセンスと没入感
6月なう。いま私がこのテキストを書いている東京は、何だか梅雨をとばして急に夏が訪れたかのような暑さに見舞われています。おそらく「ワクチンはまだか?」とか「五輪、マジやるの!?」とか言っているうちに、あっという間に本当に夏になってしまうのでしょうね。それならこっちから手を伸ばして、豊かな夏の時間を先取りしちゃおうじゃないか、ということで、今回はリリースされたばかりの最新UKミュージックから3作品をリコメンドします。
■ ジョルジャ・スミス『ビー・ライト・バック』
まずはジョルジャ・スミスの『ビー・ライト・バック』です。 Spotify
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ジョルジャ・スミスは1997年生まれウォルソール出身のシンガーソングライター。2018年にもこのコラムで紹介しましたが、今や名実共にUKシーンを代表する女性アーティストの一人と言えるでしょう。彼女は本作のリリースにあたり、コロナ禍を生きるリスナーに寄り添うようなスタンスを意識したとのこと。破格の才能を持つ彼女から届けられた極上のレパートリーは、きっとあなたをひとときのトリップに誘ってくれるはず。
■ イージー・ライフ『ライフ・イズ・ア・ビーチ』
続いてはイージー・ライフの『ライフ・イズ・ア・ビーチ』です。 Spotify
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アルバム1曲目「ア・メッセージ・トゥ・マイセルフ」のイントロからなかなか人をくったようなよく出来たアレンジで笑わせてくれます。ロックダウン中に大半の曲が生まれたという本作では、ヒップホップ、ジャズ、ディスコなど様々なジャンルをはらんだ独特なグルーヴのサウンドとメロウなヴォーカルが光ります。シリアスでディープな日常の問題を綴ったリリックをからっと歌い飛ばすポップな音楽性は、チルアウトしながらもポジティブなパワーをもらえるような、ちょっと不思議な味わいのカラフルなサウンド。アルバム・ジャケットのクリエイティブからもセンスの良さが伝わってきます。
■ ウルフ・アリス『ブルー・ウィークエンド』
最後はウルフ・アリス『ブルー・ウィークエンド』です。 Spotify
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ウルフ・アリスは2010年に女性シンガーのエリー・ロウゼルとギタリストのジョフ・オディの二人で結成され、追ってセオ・エリス(B)、ジョエル・アメイ(Dr / Vo)が加わり現在の編成に。バンド名の由来はイギリスの作家アンジェラ・カーターの短編集『血染めの部屋』収録の短編小説のタイトルから。2015年6月リリースのデビューアルバム『マイ・ラヴ・イズ・クール』がUKチャート初週2位を獲得し、グラミー賞(最優秀ロック・パフォーマンス部門)ノミネート、ブリット・アワード(新人賞)、マーキュリ・プライズ、アイヴァー・ノヴェロ賞、NMEアワード9部門ノミネート&2部門を受賞した、UKオルタナティヴ・ロックの旗手とも言える新世代のバンドです。
マーカス・ドラヴス(アーケイド・ファイア、ビョーク、マムフォード&サンズ)をプロデューサーに起用して制作された本作は、より進化と深化を増したロックが鳴らされています。
ジョルジャ・スミス、イージー・ライフ、ウルフ・アリス。いずれもコロナ禍を生きる各々の思いが反映された、すごい没入感の音楽です。あとそれぞれアート・ディレクションが超クール。ぜひチェックしてください。ではまた!
*文中のアーティスト/アルバム及び楽曲タイトル表記は、いずれも執筆時点で日本盤表記が確認出来た際はそれに準じています。
内田 正樹
エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。