150万人が観たリオのストーンズ | BRITISH MADE

BM RECORDS TOKYOへようこそ 150万人が観たリオのストーンズ

2021.07.13

ザ・ローリング・ストーンズ『ア・ビガー・バン:ライブ・オン・コパカバーナ・ビーチ』リリース

リオ・デ・ジャネイロの海岸沿いに延々と続く人波がとにかく壮観です。7月9日、ザ・ローリング・ストーンズ『ア・ビガー・バン:ライブ・オン・コパカバーナ・ビーチ』のDVD&Blu-rayがリリースされました。

本作は2006年2月18日、リオ・デ・ジャネイロのコパカバーナ・ビーチで行なわれたストーンズの伝説的なフリーライブの記録映像に新たな編集、ミキシング、リマスターが施された初の単独公式ソフトです。と、いうのも、実はこのライブ、2007年リリースの4枚組ライブ映像BOX『ザ・ビッゲスト・バン』に収録されていたのですが、当時は曲が欠けていました。今回は新たにその「ダイスをころがせ」、「Oh No.ノット・ユー・アゲイン」、「虚しい気持ち」、「悪魔を憐れむ歌」という4曲が追加収録された、言わば完全版としてのリリースです。

映像ソフトのみならず、配信でも音源がリリースされました。Spoify、Apple musicのリンクがこちら。


これ、何が伝説だったかと言うと観客数。その数、何と報道では150万人!! 何なら「いやいや200万人だったのでは?」という説まであるそうです。リオのカーニバルの一週間前だったから観光客も多かったとは言え、いくら何でも尋常ではない数。近くのホテルや民家から沿道にボートまで、リオが人、人、人で埋め尽くされた光景は圧巻。ムスカの名台詞は「人がゴミのようだ」でしたが、こうなるともはや点というか引きの映像だと単なる模様ですね(苦笑)。

当時、私は本気でリオまで行こうと画策したのですが、仕事のスケジュールやら予算のやりくりがゴニョゴニョで断念した苦い思い出が。まあどうせ行ったところで豆粒状態だろうよ?……なんて拗ねたものでしたが、あらためて映像をよく観ると、あらら? ステージ近くが案外ぎゅうぎゅうしていない!? 思ったよりも余裕で観られる環境じゃん!? (どういう仕切りだったの……?)例え豆粒でも一生の語り種。つくづく“後悔先に立たず”だなあと。

あと、客席をよく見ると、まだお客さんの多くがステージをガラケーやデジカメでバシャバシャ撮っている(※ちなみにiPhoneの第一世代は2007年発表!)。ちょっと微笑まくもあり、時の流れに溜息が漏れます。

ざっくりながら独断で見どころを列挙していきます。冒頭、ホテルからステージ裏までを直結させた導線を通ってメンバーが会場入り(なるほど街中は通れないもんね)。一曲目は「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」。これを一曲目からやる時って、何だか「いざ、勝負時!!」という気合いを感じるんですよ。実際、当人たちもこれはかなりアガってましたね。こんだけ何十年も演奏してもなお所々が危なっかしくドタバタ状態でアウトロを閉じる。いや、褒めてますよ? もうねえ、ストーンズはやっぱりこうでなければ。

ブルースとロックの融解した魅力が味わえるのは何といっても「ミッドナイト・ランブラー」。

ミック・ジャガーとキース・リチャーズの絡みがシブい!そしてこの曲はミックが魅せる。見事なハープを吹き、走り回りの踊りまくりでTシャツめくって腹まで出すんですが、もう腹筋が見事にバッキバキ。当時62歳でこの腹とこのダンスエクササイズのようなアクション。やっぱり超人ですよ、この人は。

当時の世界ツアー「ア・ビガー・バン」時のものが踏襲されているセットリストの中で変化球だったナンバーが1958年のレイ・チャールズ版で知られる「ザ・ライト・タイム」のカバー。こうしたソウルのカバーをやる時の彼らの表情がまた楽しそうで良いんです。コーラスサポートの紅一点、リサ・フィッシャーとミックの掛け合いもパワフルです。

咥え煙草を放り投げて(苦笑)からの恒例・キース師匠のボーカルタイムは「虚しい気持ち」、「ハッピー」の二曲。ロニーはスライドギターでキースをサポートします。

さらにステージをパーツごと稼働させてのBステージタイムではミニマムなアンサンブルでライブハウスのようなグルーヴに突入。わー、お客とバンドがめっちゃ近いっ!! 私はこの一ヶ月後の来日公演も観ましたが、やっぱここはえらく盛り上がりました。「ミス・ユー」から「ホンキー・トンク・ウィメン」までの秀逸な流れがシビレます。

クライマックスで私が特筆したいのは「ブラウン・シュガー」。

キースの盟友だったサックスのボビー・キーズは2014年に惜しくも帰らぬ人に。在りし日の勇姿と笑顔に思わず落涙(これがまたいいアングルのカットを使ってるんですよ……)。

ラストの「サティスファクション」のアウトロではチャーリー・ワッツもいつもよりややサービス気味にスネアを叩きまくり、ロニーに至ってはアンプにギター寄せてフィードバックとか始めちゃうというしっちゃかめっちゃかなテンションに(苦笑)。百戦錬磨のストーンズでもこの日は相当楽しかったんだろうし、おそらくマジで緊張していたのでしょう。

未だ先の見えないコロナ禍、今となってはあらゆる意味で夢のようなライブ映像です。夏のリビングで流しっぱなし状態にしても美味い一杯が飲めるこの作品、ぜひチェックしてください。

7月12日、ストーンズは1962年にロンドンのマーキーズ・クラブで行った初ライブから実に59回目の記念日を迎えました。
昨秋にはコロナ禍にも負けずロンドンにフラッグシップグッズストア「RS No 9カーナビー・ストリート」をオープンするなど強気なアクションでファンを喜ばせてくれる四人ですが、今年はチャーリーが一足早く80歳を迎え、他のメンバーも70代の中〜後半です。現在、新作アルバムを製作中との情報もありますが、もうともかく元気でいてほしい!! そして一日も早く、また極上のロックンロール・ライブを見せてほしいと切に願うばかりです。それではまた!
『ア・ビガー・バン:ライブ・オン・コパカバーナ・ビーチ』
販売元‏:ユニバーサルミュージック
パッケージのバージョン詳細は下記リンクにて。
www.universal-music.co.jp/rolling-stones/
*参考資料:同作品同梱ライナーノーツ(執筆:寺田正典、ポール・セクストン)
*文中のアーティスト/アルバム及び楽曲タイトル表記は、いずれも執筆時点で日本盤表記が確認出来た際はそれに準じています。
Text by Uchida Masaki


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内田 正樹

内田 正樹

エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。

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