夏のエリック・クラプトン | BRITISH MADE

BM RECORDS TOKYOへようこそ 夏のエリック・クラプトン

2021.08.12

ファーストソロアルバム『エリック・クラプトン・ソロ』50周年盤リリース

8月20日、エリック・クラプトン1970年のファーストソロアルバム『エリック・クラプトン・ソロ』(原題:Eric Clapton)の50周年記念デラックス・エディションがリリースされます。

本作はイギリスの名ギタリスト(ジミー・ペイジ、ジェフ・ベック)を輩出したヤードバーズを経て、ジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカーとのスーパーバンド“クリーム”で一斉を風靡したクラプトンが、スティーブ・ウィンウッドとのブラインド・フェイス、そしてデラニー&ボニー(ツアー〜アルバム参加)と渡り歩いて、ついにソロ名義での活動をスタートさせた一枚でした。

今回のエディションにはレコーディング界の重鎮、トム・ダウドによるミックス (UKヴァージョン)、そして2006年リリースのデラックス・エディションにも収録されていたデラニー&ボニーのデラニー・ブラムレット・ミックスに加えて、初めてエリック・クラプトン本人が手掛けたミックスを収録。さらに収録曲の別ヴァージョン、レコーディング・セッションのアウトテイク、シングル音源が併せて収録されます。

現在、リリースに先駆けて以下のリンクにて8曲(本稿アップ時点。リリース日以降は全曲の模様)が聴ける状態です。本人のミックス、流石にギターがギャンギャンに鳴ってます(笑)。

ちなみにこちらが現在ストリーミングで聴ける従来ミックス(06年バージョンかな?)のアルバムです。アナログで言えばA面6曲B面の計11曲。Spotifyのほうは06年エディションの音源も続けて入っているようです。

本作の楽曲からはJ.J.ケイルの楽曲「アフター・ミッドナイト」が代表曲の一つとなりましたね。またデラニー・ブラムレットと書いた「レット・イット・レイン」もファンには有名です。個人的にはレオン・ラッセルと書いたサザンテイスト(と言うかレオン・ラッセルのテイスト)たっぷりなソウルフルな「ブルース・パワー」が歌詞も含めてたまらない一曲です。

ファーストソロとは言いつつも、参加ミュージシャンには、前述の通りレコーディングの直近まで活動を共にしていたデラニー&ボニーの二人も参加していて、曲調も割とデラニー&ボニーを思わせるものがあります。軽快さもあり、スワンプ・ロックというかサザン・ロックの魅力も混在しています。ホーン(ストーンズでおなじみボビー・キーズ)もピアノもふんだんに入っていて、バンドサウンドとしても楽しいですね。個人的にはどの曲もギターの雄弁なイントロのバリエーションが素晴らしいなあと改めて感心させられます。

ちなみにクラプトンと言えばフェンダーのストラトキャスターですが、彼は80年代後半(だったかな?)から“レースセンサー”というノイズを拾わないクリアな集音が売りのピックアップ(※ギターに付いてるマイクです)を使い始めます。これ以降、彼のギターはテキパキしていてシュッシュとしたような(ボキャブラリー無くてすみません)、つまりちょっと洗練されたサウンドに変化していくのですが、やっぱり70年代のキュルキュルと弾むように鳴りながらも枯れているといったストラトサウンドは良いですね。

ハイセンスなベンディング(※日本ではチョーキング。左指で弦を押し上げるテク)の多用を始めとする巧みなフィンガリングから、聴こえる音に対して指先の動きが少なく(=遅く)見えるため“スローハンド”という二つ名が与えられ、ギターキッズには“God”とまで呼ばれたクラプトン。この頃すでに年がら年中酒だドラッグだと身体はズブズブだったはずですが、ともかくまだ若さと渋みの混ざった歌声といい、スワンプとブルースのテイストが相まった曲とギターといい、当時だからこその魅力が感じられます。筆者はともかく「アメリカ音楽と出会ったイギリス人の音楽」が好物なのでたまりません。

ちなみにデラニー&ボニーとクラプトンが共演したデラニー&ボニー&フレンズ名義のライブアルバム『オン・ツアー・ウィズ・エリック・クラプトン』がこちら。

サザン・ロックに傾倒していたクラプトンは、ファーストソロと同年の1970年、前述のデラニー&ボニー&フレンズのメンバーと組んだバンド“デレク・アンド・ザ・ドミノス”でアルバムをリリースします。デュアン・オールマンも参加した情熱的な傑作『いとしのレイラ』(原題: Layla and Other Assorted Love Songs)です。

これ以降のクラプトンのキャリアについては長くなるのでまたの機会にしますが、ともかくソロ初期のクラプトンには、その後のややダンディズムの香るアルバム群や、「いとしのレイラ」、「チェンジ・ザ・ワールド」などで知られたアコースティックなヒット曲の魅力とはまた違った味わいがあります(まあ筆者はその辺りも結構好きなんですが)。

今回ここまでにご紹介したアルバムと、アメリカはマイアミの香りを運んでくる74年のセカンドソロアルバム『461オーシャン・ブールヴァード』は(リリックはヘヴィなものも多いですが)夏のリビングでのビールやドライブの時間にもよく合うサウンドだと思います。ボブ・マーリーの「アイ・ショット・ザ・シェリフ」も入ってます。

クラプトンの近況ですが、どうも新型コロナウィルスのワクチンを打った初回の副反応にかなり悩まされた模様で、現在は二度目を打たず、いわゆる反ワクチンの姿勢を表明しています。まあワクチンの選択については人それぞれなので多くは書きませんが、ともかく初回は「もうギターが弾けないかと思ったくらい」苦しんだ模様なのでともかく気を付けてほしいものです。

本当は夏によく合うクラプトンでプレイリストを作ろうと思ったのですが、今日ご紹介したアルバムを聴いてもらうのが一番だなと思いました。コロナも厳しい暑さも長引きそうな気配ですが、好きな音楽でも聴いて元気に乗り切りたいものです。よかったらぜひチェックしてみてください。ではまた!

『エリック・クラプトン・ソロ』
アニヴァーサリー・デラックス・エディション 完全生産限定盤
2021年08月20日リリース
販売元‏:ユニバーサルミュージック
パッケージのバージョン詳細は下記リンクにて。
https://www.universal-music.co.jp/eric-clapton/products/uicy-79733/
※文中のアーティスト/アルバム及び楽曲タイトル表記は、いずれも執筆時点で日本盤表記が確認出来た際はそれに準じています。

Text by Uchida Masaki


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内田 正樹

内田 正樹

エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。

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