舞台となるのは1993年、イギリス・ウォルヴァーハンプトン。主人公ジョアンナは、文学、哲学、映画など古典に傾倒し、過去の偉人たちと議論を深める想像力豊かな中学生。裕福ではないが、計7人の個性的な温かい家族と暮らしている。しかし、学校ではうだつが上がらず、詩のスピーチでは大失敗を犯し苛めの標的になってしまう。この環境を変えたいジョアンナは、音楽の名門誌D&MEのライターに応募し、新たに”ドリー・ワイルド”という名でロック評論家としてのキャリアをスタートさせる。出だし好調なドリーだったが、特集記事で失敗し袋小路に入る。彼女は、本来志した文章のスタイルを捨て、辛辣なコラムニストへと変貌することで富と名声を集めるが、その代償として大きな落とし穴が待ち受ける。
劇中にはさまざまなジャンルの音楽が流れるが、とりわけ多いのはライブハウスでの演奏シーンだ。監督のコーキー・ギェドロイツは、スクリーンを通してもライブの臨場感が表されることの重要性を説き、音楽のクオリティまで追求した。劇中の設定は90年代だが、編成形態は3ピースや4ピースが多く騒々しくはあってもシンプルな音で、2000年代のガレージロックリヴァイヴァルも想起させた。自身は残念ながらジョアンナのようにUKロックに心酔することはなかったが、レディオヘッド、リバティーンズなどその時代を象徴するバンドが頭をよぎった。同年代に一世風靡したビョークの登場もあいまって、最も音楽に情熱と時間を注ぎ、ジャンルに囚われることなくありとあらゆる音楽を聞いた自身の大学生時分を思い返しノスタルジックな気分になった。
『ビルド・ア・ガール』
公式サイト:https://buildagirl.jp/
10/22(金)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
原作:キャトリン・モラン著「How to Build a Girl」
脚本:キャトリン・モラン
監督:コーキー・ギェドロイツ
製作:アリソン・オーウェン『ウォルト・ディズニーの約束』『エリザベス』、デブラ・ヘイワード『レ・ミゼラブル』 『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズ
出演:ビーニー・フェルドスタイン、パディ・コンシダイン、サラ・ソルマーニ、アルフィー・アレン、フランク・ディ レイン、クリス・オダウド、エマ・トンプソン
コピーライト:© Monumental Pictures, Tango Productions, LLC, Channel Four Television Corporation, 2019
配給:ポニーキャニオン、フラッグ
提供:フラッグ、ポニーキャニオン
原題:『How to Build a Girl』 2019 年/イギリス/英語/105 分/DCP/アメリカンビスタ/カラー/5.1ch/R-15
Twitter:https://twitter.com/buildagirl_jp/ #ビルド・ア・ガール
Instagram:https://www.instagram.com/buildagirl_jp/ #ビルドアガール
部坂 尚吾
1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。毎月第三土曜日KRYラジオ「どよーDA!」に出演中。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com