ストーンズ、イエス、ジェネシス、エルトン、ポール。それぞれのツアー・プラン。
先月のこのコラムではキース・リチャーズのソロワークスについてお届けしましたが、その後、キースは久々にソロバンドを率いてNYの「LOVEROCKS NYC」というチャリティ・ライブ・イベントに出演しました。ベースは同イベントの音楽ディレクターを務めたウィル・リーが務めるというレアな編成で「999」、「ユー・ガット・ザ・シルバー」、「ビフォー・ゼイ・メイク・ミー・ラン」の3曲を披露しました。そして3月14日、否が応にも盛り上がる予告映像でザ・ローリング・ストーンズはヨーロッパツアーを発表。タイトルは「Stones Sixty」。文字通り60周年の記念ツアーとなる模様で、現時点ではスペイン、ドイツ、イギリスなど13公演がアナウンスされています。しかもイギリスはまさかのリヴァプールとかのハイドパーク!!
(リヴァプール、まさかのポールがゲスト!?なんて無いですよね? ん? んん!?)
一進一退を繰り返すウィズ・コロナのなか、ライブ関連の興行も少しずつ増えてきています。日本でも今年のサマソニ、FUJIROCK共に海外勢招聘の復活を宣言しています。そこで今回はUKベテラン勢の最新ツアープランにスポットを当ててみます。
[イエス]
まずはイエス。コロナ禍のため2度延期されたイギリスツアーですが、先日、6月からの開始をアナウンスされました。当初1974年のアルバム『Relayer』をフィーチャーする予定だったこのツアー。『Close to the Edge(邦題:『危機』)』を全曲演奏し、バンドの幅広いレパートリーから他の名曲も演奏するセットに変更するそうです。ちなみに『危機』再現ライブは2019年の来日公演(2月22日)でも披露されています。
彼らの5thアルバムである『危機』はバンド初のヒット作にしてプログレッシヴ・ロックの名盤の一枚として知られる名盤です。
ただ、この3曲の擁する音の展開と情報量が半端じゃない。是非、一聴して、一緒に本作について描かれているwikipediaも読んで下さい。ぶっ飛びのエピソードの釣瓶撃ちでかなり面白い。ちょっと笑えてくるくらい壮絶です(笑)。
[ジェネシス]
続いてはジェネシス。3月7日のベルリンを皮切りに14年ぶりのツアー「The Last Domino?」のヨーロッパツアーが開幕しました。このツアーは彼らのフェアウェルツアーで今後3月26日まで12公演を予定しています。現在71歳を迎えたフィル・コリンズは、長年患っている腰や背中の神経疾患のためドラムの演奏が出来ません。あれだけバイタリティに溢れ、バンド、役者、ソロシンガー、ドラマーと八面六臂の活躍をしていただけにちょっと寂しいですが、14年ぶりとなるツアーではコリンズの二十歳の息子・ニック(20歳)がドラムを担当。椅子に腰掛けながらライブに臨む父のサポートを務めています。
イエス同様、ジェネシスもかつてはプログレバンドとしてスタートしましたが、途中でかなりポップ路線へと舵を切り、「インヴィシブル・タッチ」などのヒットを放ちました。
今回のツアーのセットリストは基本的にこのベスト盤がベースとなっていますのでぜひチェックしてみてください。
[エルトン・ジョン]
最後はエルトン・ジョン。こちらもジェネシス同様フェアウェルツアー「Farewell Yellow Brick Road」を展開中。途中、コロナの影響で中断していましたが、1月19日のアメリカ・ニューオーリンズ公演からおよそ2年ぶり再開。現在もツアー中です。当日は2021年のアルバム『ザ・ロックダウン・セッションズ』からデュア・リパとコラボしたNo.1ヒット・シングル「Cold Heart(PNAU Remix)」をライヴ初披露。プライベート・ジェットの緊急着陸。ロシアのウクライナ侵攻に対するウクライナ支持表明。スケートボードブランド“パレス”とのコラボ発表。1975年ツアー時のファッションがフィギュア化などなど、さすが御大、ツアー中も話題が絶えません(笑)。さらにはつい先日、スティーヴィー・ワンダーとの初のデュエット曲「Finish Line」のミュージック・ビデオも公開されました。ゴスペルのような力強い歌唱に沿って、互いの人生におけるエポックメイキングなシーンや、数々の視点を通して捉えた人生の歩みが展開されるという泣かせる構成のビデオです。
GOT BACK. NORTH AMERICAN TOUR 2022
— Paul McCartney (@PaulMcCartney) February 18, 2022
“I said at the end of the last tour that I’d see you next time. I said I was going to get back to you.
Well, I got back!” – Paul
More info: https://t.co/KhK4WK8Wlr #PaulMcCartneyGotBack pic.twitter.com/106IYKd4fz
世はヒップホップ全盛時代ですが、個人的には60〜70年代に花開いたプログレやロック、ポップスの魅力をいまあらためて検証したくなっています(※惜しくも天に旅立ってしまうアーティストも多いので)。周年。名盤再現。フェアウェル。どっこい終わりなき生涯現役と、その姿もアーティスト各々のパーソナルとキャリアによって様々ですが、いずれにせよ無事の完走を祈りつつ、今夏以降、このいずれか(または全て)が日本でも観られるよう切に期待します。それではまた。
内田 正樹
エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。