今回紹介する映画は、『クリエイション・ストーリーズ~世界の音楽シーンを塗り替えた男~』だ。英国の歴史に端を発し、ファッション、芸術、建築、車、食など英国文化を軒並み吸収しているが疎いものもある。それがUKロックだ。学生時分に幅広く聞いてはみたものの、時間を忘れて没頭するまでにはいかなかった。本作に登場するPrimal Scream、My Bloody Valentine、Oasisなどがその最たる例で、ギャラガー兄弟のどちらがリアムでノエルなのかがいまだに覚えられない(さすがにボーンヘッドは認識している)。本作を鑑賞するまでは“クリエイション・レコーズ”というレーベルはもちろんのこと、創設者アラン・マッギーすら知らなかった。先に述べた通り、もともと関心がなかったジャンルなだけに足取りが重かったものの、彼の破天荒な生き様やハングリー精神に圧倒されすっかり魅了されてしまった。
英国には、冒頭で述べた王族の荘厳たる儀式が行われる世界から、本作のようにFワードやCワードが連発するまったく違う世界が共存する。さまざまな文化が混じり合って同化し、ひとつの独特な共通文化を形成している点に改めて面白さを感じずにはいられない。本作を鑑賞するタイミングでブレイディみかこさんの著書を2冊読んだことで、後者の世界に引っ張られたのは間違いない。これを機に、ひとつレコード屋に足を運んでクリエイション・レコーズの作品を選んでみようか。
『クリエイション・ストーリーズ~世界の音楽シーンを塗り替えた男~』
https://creation-stories.jp
10月21日(金)より新宿シネマカリテほか全国ロードショー
製作総指揮:ダニー・ボイル
監督:ニック・モラン
脚本:アーヴィン・ウェルシュ&ディーン・キャヴァナー
出演:ユエン・ブレムナー、スーキー・ウォーターハウス、ジェイソン・フレミング、トーマス・ターグーズ、マイケル・ソーチャ、メル・レイド、レオ・フラナガン、ジェイソン・アイザックス
2021年|イギリス|英語|110分|原題:Creation Stories|配給:ポニーキャニオン
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部坂 尚吾
1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。毎月第三土曜日KRYラジオ「どよーDA!」に出演中。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com