ウイングチップシューズで 足元からブリット気分をアピール | BRITISH MADE

ウイングチップシューズで 足元からブリット気分をアピール

2015.12.20

チャーチ革靴左からChurch’s(チャーチ)メンズシューズ、GRAFTON、CHETWYND、BURWOOD。

ウイングチップの正式な英国的呼称は“フル・ブローグス”

チーニー革靴左からJOSEPH CHEANY(ジョセフ チーニー)のレディースモデル、MILLY(BLACK、CONKER)、右奥、Church’sレディース、BURWOOD。

大人のスタイルをより説得力あるものにランクアップさせる“飛び道具”として、見逃せないのが英国式本格靴の存在。プレーントゥにはじまりキャップトゥやモンク系など各種揃っているのが英国靴ワールドの凄いところ。どれもそれぞれの魅力を備えているが、なかでも今季はウイングチップが異彩を放っている。
一応、「今季」と書いたが実はもう3~4年くらい前からウイング熱は盛り上がりをみせており、ここ最近モードやレディースシーンでもさかんに取り上げられるようになり広く表面化した、という捉え方が正解かもしれない。確かにツルッとしたプレーントゥなどよりウイング状の飾り革やパーフォレーション、ギンピングを施した一足は非常にデコラティブなルックス。意匠を凝らしたモードスタイルを受け止められる強い個性があるように思う。

日本では米国式にならってウイングチップと呼ぶこのシューズ。正式な英国的呼称はフル・ブローグスだ。モノの本によると18世紀スコットランドには労働者向けに作られた“ブローガン”という靴があり、雨天の使用などに耐えるよう穴開け加工やギザギザのエッジを備えるようになったという。現在のように高級靴然としてきたのは1900年代頃からで、それまではもっぱら狩猟用の実用靴として用いられてきたとの説が有力だ。
現在ではスーツなどに合わせる人も多いが、本来はアウトドア・ギアゆえに、シックなスーツでも狩猟やスポーツのエッセンスが香るツイーディな紡毛生地やカントリーチェックをあしらったスーツに合わせるのが筋道(ブラインドブローグ系はまた別)。などなど、もっともらしく書いたがそれはあくまで前提で、今季はもっと自由にウイングチップで遊ぶことが許されるシーズンなのだと思う。


お気に入りの3足を もう10年近く履き回して

革靴(右手前より順に)フローシャイムのインペリアル。内装は例のグリーンステッチ。コードバンのアッパーにダブルソールの一足は非常に味わい深く堅牢な作り。ヒールもオールレザーで昔ながらの仕立て。ベージュのシボ革アッパーがカントリーな雰囲気を盛り上げる。
ローソンヒルというブランドがロークブラザーズに別注した一足。グルリの出し縫いは白色で、それも寛ぎを感じさせる一因。今はなきアラン・マカフィーのバルモラル式フルブローグス。いかにも英国という面構えが実に好ましい。最後に、番外編としてロイヤルツイード(チーニー製)のスリッポン。

ちなみに筆者が持っているウイングチップのメインは上記の3足。アラン・マカフィー(昔のチャーチと同様の匂いがする)とローソンヒル(ローク製)とフローシャイム(米国製でごめんなさい)だ。本来であればチャーチのチェットウインドかバーウッドあたりを持っておかないとカッコが付かないハズだが、なぜか出会わなかった。というよりも先に彼等に出会ってしまい、別れられずグズグズの関係が続いているといった感じなのだ。

しかしその3足で足りてしまうといえば足りてしまうわけで、明るいニットスタイルなら薄茶のローソンヒル、重厚なコートスタイルのときはダブルソールのフローシャイム、そしてモダンなブラックスタイルのときはアラン・マカフィーを履く、という具合。
個人的にウイングチップを足元に取り入れたくなるのは春夏よりも秋冬が多い。というのも上記の3足はほどよく原初のアウトドアテイストを残しており、非常にタフなルックス。ゆえにヒラッとした薄着の時よりも、着込んだスタイルにマッチするように感じるからだ。定番的なウイングチップの作りがそうであるように、複数の革を切り替えたデザインはそれ自体が“重ね着”をイメージさせ、さらに無数のパーフォレーションはローゲージニットなどにも通じる豊かな素材感を思わせるところも秋冬に起用する理由だ。もちろん昨今はバリエーションも増えており、吟味すれば春夏に合うウイングチップも探しだせるだろう。


コスパを考えても やっぱり英国製が理想

カントリーシューザウジョセフ チーニーの「AVON C」

さて、今季新調したいという人はどういう一足を選ぶべきか。お奨めはもちろん伝統的な英国メイドである。チャーチももちろん良いが、本来の意味でのブリティッシュな本格靴を求めるときに見逃せないのがジョセフ チーニーだ。英国靴のメッカであるノーザンプトンにて1886年に創業した老舗であり、本格グッドイヤー製法のシューズを今に伝える貴重な正統派だ。昨今はコレクションも増えており、なかでもカントリーコレクションのウイングチップは、昨今トレンドのラギッドスタイルにマッチするマッシブな外観が大きなポイント。今風の美観を幾つも備えつつ、極めてトラッドデザインゆえに長年にわたり履き続けられる堂々の逸品なのだ。

最後に今年らしい履き方提案しておきたい。“味わい深い素材感”をひとつのトレンドとする今季、ベースとなるウイングチップはスコッチグレーン素材のものを選ぶ人も多いはず。ブラックであれば装い全体をモノトーンに仕上げてモダンなシャープさを演出したい。たとえばローゲージのフィッシャーマンセーターにツイード調ジャージ製のリブ裾付きイージーパンツを合わせて。ブリム広めのフェルトハットで仕上げるのはどうだろう。茶革のウイングチップならワーク色を強めたラギッドなレイヤードスタイルがよく似合いそう。
ウーリーなベージュ系パンツにバーブアーに代表されるオイルドブルゾン、それにチェック柄ツイードジレを挟めば、モダンなカントリージェントルマンを気取ることができるはず。昨今はカジュアルやスポーツスタイルに人気が集中しており、足元にスニーカーを合わせる人も多い。しかし肩肘張らない装いにこそ、どこかに重みや説得力を持たせることがマストだ。本格靴はそんなバランス取りアイテムとしても抜群の効果を発揮する一品だと思う。



Text by T.Hasegawa / 長谷川 剛

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