
とは言え、創業から40年以上を経た今でも、ラベンハムと乗馬は切っても切れない関係。マネージング・ディレクターを務めるニッキー・サントマウロさんご自身も、社を所有する父のもとに育ち、幼い頃から乗馬に親しんだジョッキーだ。今回は馬を愛し、そしてラベンハムを愛する彼女に、ブランドに息づく歴史や革新性はもちろん、愛すべき乗馬の魅力について伺った。
ーラベンハムが生み出したホースラグは、創業当時、非常に革新的だったと聞いています。
ラベンハムの創業者はエリザベス女王に仕える女官、ミセス・エリオットです。女王が乗られる馬の世話をしていたのはもちろん、彼女自身も乗馬をたしなんでいました。ラベンハムのホースラグは、女王の愛馬のために生まれたようなもの。それまでホースラグはジュート麻でつくられるのが一般的でしたが、ジュート素材は雨に濡れると重くなり、さらに乾きも悪い。彼女は女王の愛馬を思って、ナイロンの表地とコットンの裏地のあいだにポリエステルの綿を挟んだホースラグを編み出しました。すると乾きも早く、とっても軽い。ホースラグにまつわる悩みを解消してしまったんです。

その通りです。「馬専用にしておくのはもったいない!」という声が上がったんですね(笑)。そんな声を受け、ジャケットを発表してから40年余り。現在のキルティングジャケットは、裏地の素材もより軽いポリエステルに変え、フィッティングも細めにはなっていますが、表側に2つのポケットがあり、バックスタイルの裾には2箇所の切れ込みを入れたサイドベンツという基本スタイルは変わっていません。

ー一方でA.P.Cを始め、多くのブランドやスペシャリティストアが、ラベンハムとのコラボレーションを望み、実現しています。グッチから特注を受けたこともあるそうですね。
ラベンハムは、現在に続くホースラグの原点。多くのブランドやスペシャリティストアも、その歴史に注目し、オリジナルを求めていると考えます。さらにラベンハムの製品はキルティング加工から縫製まで、100%自社工場で生産しています。そのため、細かな要望に応えることができる。これもラベンハムの大きな強みです。

ブランディングの方向性を見直したのは、2年前のことです。発表当時は唯一無二だったキルティングジャケットですが、今ではあらゆるブランドに溢れています。あらためてオリジナル性を打ち出すには“origin”、つまりホースラグから歩み出した原点に立ち返ることが一番だと考えました。10年前と比較すると素材も変化しているため、最近では、ホースラグの生地も見直しています。常に着心地や機能性を高め、革新性を失わないことも、ミセス・エリオットから続くラベンハムの精神だからです。それにお馬さんの世界にも、少なからずトレンドが存在しますからね(笑)。

ーニッキーさんご自身も乗馬をされるそうですね。大会に出場されたこともあるとか。
3歳の頃から始め、16歳まで乗馬学校に通っていました。10年ほど前に亡くなってしまいましたが、パートナーは「ロッキー」という名の白馬。乗馬は、馬との関係性を築かないことには成り立たないスポーツですが、いいホースラグを使うことは、馬といい関係を築くためにも欠かせません。


はい、そうです。お客様の中には、私よりも長い30年もの間、同じホースラグやキルティングジャケットを使い続けてくださる方もいます。少しずつ進化はしていますが、そもそもオリジナルの完成度が高く丈夫なことから、リペアを続けることで、ずっと使っていただくことができるのです。こうしたブランドのもとで育ってきたからでしょうか。私自身、ちょっと乱暴に扱ったくらいじゃ、壊れないアイテムが好きなんです。

Interview & Text by K.Oya / 大谷 享子