スーツ姿が引き立つ細巻き蝙蝠傘の存在
ピアレスのSTICK UMBRELLA
桜が散って春が過ぎたらもう雨の季節。梅雨のシーズンもすぐそこだ。雨自体は農作物や自然を育てるための天からの恵み。などということは先刻承知ではあるものの、ことファッション目線で考えると、どうにも“恵み”と割り切れない不自由さが頭をよぎってしまう。そう、衣服は濡れるし湿気で蒸れる(しカビる)。しかも大事な革靴は痛んで時に外観までヘタれてしまうことも……。だからといって天候くらいで着飾ることを諦めてしまうようでは粋な大人とは到底言えない。半分は強がりでもあるが、天候がもたらす諸事情を受け入れ前向きに楽しんでこそ、ゆとりある大人と言えるのだ。だからまずはしっかり雨対策。その基本中の基本となるのが傘の用意である。昨今はPCなど携帯機器の発達から、ビジネス用のブリーフバッグも年々小さくスリムになっている。それにともない傘も小型の折り畳み式がビジネスマンなどには需要があるという。完全オンタイムのオケージョンであれば、合理的な折りたたみ式でも止むを得ないだろう。しかし荷物も少なくこだわったスーツスタイルが許される場合は、特別な傘を手にして出掛けたい。たとえば英国的な細巻きの蝙蝠傘がひとつの理想。シュッと細く巻き上げた傘はステッキにも似ており、開かず片手に携えて歩くだけでも少しだけ背筋が伸びて、どこか紳士然としたルックスになるから不思議だ(飽くまで気分のハナシ)。もちろん雨具としての機能性も十二分。コンパクトな折り畳み傘とは異なり、フルレングスゆえに肩先をもしっかり雨滴からカバーしてくれるのである。
どうせなら英国製のハンドメイドを手に入れたい
なかでもジェントルマンの国の傘ブランドとして、隠れた逸品を今も作りだしているのがピアレスだ。英国北部のマンチェスターにおいて1871年創業の堂々たる老舗が作る紳士用傘は、ヴィクトリア時代の古き良きダンディズムを匂わせる正統派の細巻き型。ハンドルや芯には天然ウッドを用い職人がその手によって丁寧に作りだしており、味わい深く剛健であることに加え、修理することも考えて作られているのがポイントだ。つまり長年愛着をもって使い続けられということ。もちろん手間の掛かるハンドメイドゆえに値段は少々高めとなる。しかし、良いものを長年大事に使い続けることがもたらす発見や思い出はまさにプライスレス。英国製逸品傘の購入は、決して散財にはあたるものではないはずだ。その昔、高級な英国製細巻き傘といえば、シルクやシルクコットンの生地が張られており、雨音もバラバラといった無粋なものでなく、パラリンパラリンと奏でるような音色だったとある先輩から聞いたことがある。コストの関係や生活スタイルの現代化から、今ではシルク張りの傘はほとんど見掛けなくなっており、たまにアンティークとしてビンテージショップを飾る程度。僕も良い出会いがあったら、普段用とは別にそんなシルキーな音色で“鳴く”小粋な蝙蝠もいつかは手に入れたいと考えている。
悪天候に強いのは
やっぱりラバーソール
シューズカバーなら
アッパーの保護も理想的
靴への雨対策ということで、ここ数年気になっているアイテムがひとつある。それが靴に被せるレインカバーだ。ナイロン製のものなどはアマゾンなどでも見掛けるが、それらはどうにもクラシックスタイルにマッチするとは言えないモノばかり。そこへいくとピッティ展示会などにも出展しているSWIMSが手掛けるカバーは、一歩抜きんでた存在と言えるだろう。パッと見はオペラパンプスのような風貌だが、伸縮性あるフルラバーメイドにて本格革靴全体をピッチリと包み込んでくれる逸品だ。羽根の部分は大きく開いておりカバーのまま脱ぎはきが行えるだけでなく、なにより本格革靴のシックな風情を阻害しない薄仕立てが秀逸なのである。ジョン ロブでもSWIMSのカバーを販売していたことがあったと思うが、一部の百貨店でもアンダー1万円にて取り扱いがあるという。雨でもお気に入りの革靴で出掛けたいと考える人は、ぜひ手に入れてみてほしい。 シューズに隙間なくフィットした、SWIMSの手掛けるシューズカバー
ということで、梅雨の季節に用意したいアイテムや対策法をご紹介させていただいた。鬱陶しいと感じがちな雨のシーズンだが、大事なのは工夫次第でいくらでも快適な時間に変えられるということ。雨を個性的に装うチャンスととらえ、いろいろトライしてみてはいかがかと思う次第。 関連アイテムを見る