6月のある日、お世話になった方から久々にメールが来た。わたしに、イギリスにまつわるコラムを書いて欲しい、という内容だった。わたしがコラム!?と驚いたけれど、昔から文章に興味はある。ただ肝心の内容はイギリスに限定したもの。確かにイギリスは好きだ。現にちょうどイギリスに滞在中だし、ファッションも文化も、そして国民一人当たりに対する緑の量が多い、ということも、好きなことの1つだ。緑の中に、地べたにペタンと座ったり、寝転んでいる人たちを見ると、こちらまで平和な気持ちになる。ただ、この世には多くのイギリスファンがいる。わたしよりイギリス好きな人はたくさんいるのに、わたしがイギリスを語るなんて、果たして良いのだろうか。いや、でもイギリスにいるのも何かの縁ではないか。タイミング良く連絡を受けたことに背中を押され、恐縮ながらもコラムを書かせて頂くことにした。
改めて、イギリスについて考えてみることにした。職業柄、ファッションや流行に敏感でいなければいけない世界にいるにも関わらず、思い浮かぶ好きなものは、永く人から愛されているもの、定番、田舎の風景、庭、バラ、紅茶、アンティーク…。流行とはあまりにもほど遠い…。
ふと、テレビのニュースから流れてきたエリザベス女王の90歳記念式典の映像。パッと目を引く蛍光グリーンのドレスに身を包んだ女王が、兵隊の行進を眺めている。今回は蛍光グリーン、さすがだなあと関心させられる。自分が90歳を迎えたときに、果たして蛍光色のお洋服を身につけられるだろうか、などと考えてしまう。『HELLO!』という週刊誌では、まるっと1冊エリザベス女王の特集がされていた。生まれた時からのお写真や、数々の女王のドレス変遷。言うまでもなく鮮やかで、どれも目を引くものである。形はシンプルで単色使いが多いことも、よりエリザベス女王の品を際立たせているのかな、とも思う。さらにシンプルなスタイルに華を足しているのは、ヘッドピースだ。ドレスに合わせた色と、形、大きさ、飾り、被り方もさまざまで、どれもバランスよく控えめに、女王の頭の上で品良く佇んでいるのだ。
そんな女王に憧れてか、イギリスでは近頃ヘッドピースをオリジナルで作るのが流行しているらしい。土台の形を決めて、リボンや羽、花などのパーツをオリジナルで散りばめる。そんなパーツの買えるお店をわたしも訪ねてみた。店内は色鮮やかなリボンやパーツで埋め尽くされている。ちょうどお客さんが店員さんと、ああでもないこうでもないと自分の着る予定のドレスの写真を片手に、オリジナルヘッドピースの相談をしている。次から次へと土台となるピースを出してきては、頭に当てて色や大きさを調整していく。
わたしは残念ながら、ヘッドピースをする機会はないので、リボンを買ってみた。帽子に使う淡い色のグログランリボン。グレイッシュなイギリスの空のような、田舎の風景のような、バラのような、紅茶のような…。これはきっと眺めているだけで、もったいなくて使えないな、と思う。わたしのリボンの缶にまたイギリスの色が加わった。