ツイードほど我々の想像力を掻き立てる素材はありません。機能的で耐久性があり、エレガントかつ特徴的なこの生地は、大学教授からハンター、そしてお洒落な男性まで、あらゆる人々から愛されるほどに多用途です。そして、この素材との繋がりを感じさせる唯一の存在はウイスキーなのです。ツイードもウイスキーも「スコットランド」という同じ国を起源としているため、繋がりを感じるのは当然かもしれません。両者には年を重ねるごとに成熟するという共通点があり、その比較を続けるために、私は自分では着用しきれないほど多くのツイードジャケットと、飲み尽くせないほど多くのスコッチウイスキーを所有しています。それでもなお「より多くを手にしたい」と思う欲求が止めどなく沸き起こってくるのです。
私は昨年『Condé Nast Traveler』の記事を執筆するために、ハリス島を訪れました。フライトを終えた私と友人は、車とフェリーを乗り継いでルイス島に到着し、さらにそこから車でハリス島へ向かいました。印象深く広大で、月のような風景が続くこの土地は、「1日の中に四季がある」ことで有名です。例えば朝に霰(あられ)が降った場合、その10分後には必ずと言っていいほど明るい太陽の光が現れるため、霰は喜びを伴うものなのです。
数十年前に製造された織り機に糸をつなげるために、およそ1600回!絡ませてようやく準備完了です。機織り機は足で動かすため、織っている間は職人さんが自転車に乗っているかの様に見えます。ほとんどの作業場には暖房が付いていないため、彼らはペダルを踏むことで体を温めます。私たちがお会いした機織り職人たちはみな顔見知りなので、お茶をしたり機織り機の修理で手助けが必要な時に互いの作業場を訪れます。
一貫してハリス島の住人たちによって行われる工程とは別に、ツイードには驚くほどこの土地に根付いた風合いがあります。焦げ茶色やヘザーグリーン、薄い小麦色といったツイードの色彩が、土地の風景そのものを表しているからです。ツイードという生地はもともと、周りの環境に溶け込んで狩りをしていたこの土地の人々によって生み出されたものですから、辺り一帯の風景がそのまま生地の色彩に反映されています。ツイードは迷彩柄ができる以前に生まれたものなのです。
メーカーでツイードの生地見本を綴った古い本を見せてもらったことも、この旅のハイライトでした。無限に存在する種類豊富な模様と、依然として鮮明な色を見ることができ、膨大な本の中にその全ての名称が事細かに記されているのです。そうしたツイードは、防弾仕様のようなジャケットに使用されていました。当時のものとしては素晴らしい出来栄えのジャケットで、私もコレクションとして大切に所有しています。しかし、今日のツイードジャケットはより私好みで、当時のジャケットよりも少しだけライトな仕上がりになっているため、屋内でも屋外でも活躍しています。オックスフォード・シャツとコーデュロイ・パンツ、そしてニットのネクタイを合わせれば、いつどこで1杯のウイスキーを注がれても準備万端です。