Coming to Terms with Tweed | ツイードを甘受し、見つめ直す | BRITISH MADE

Coming to Terms with Tweed | ツイードを甘受し、見つめ直す

2017.12.27

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今回は、Aleks Cvetkovicがツイードに対する若き頃のトラウマを克服し、その比類なき自己表現力に迫ります。(『Common Thread』の創刊号に掲載された記事「The Power to Transport」より)

私はこれまで常にツイードを少し奇妙な存在として捉えていました。しかし今は、無類の洋服好きとしてもっと親近感を持って接するべきだったと感じています。原因は不明ですが、ひょっとしたら、20代前半の時にこの世で最も息の詰まる大学に籍を置き、3年間学んだことで、ツイードに対する心理的なアレルギー反応を起こしていたのかもしれません。

私は、すり減ったドライビング・シューズを履き、必要以上にスリムな赤いチノと派手な緑とオレンジ色のカジュアルなツイードコートを纏ってブラついているような、自意識過剰なタイプの紳士を見ると、今でも少しだけ胸がズキズキ痛みます。
しかしごく最近になって、最も独創的で正真正銘のツイードは、多彩な力を持つ素材だということを知り、このような感覚を抱いていたことを後悔しています。今回私は、スコットランドのハイランド地方に位置する15世紀から続く織物工場を訪れ、自然環境の中で生まれるツイードの背景に触れ、直感的に真実を理解したのです。時の流れとは無縁なその工場は、石橋の下に水が滴る人里離れた小峡谷にあり、荒地のコケや雑草に抗いながら建っています。作業場では、2台の壊れそうな織り機が非常にゆっくりとした速度でガタガタと音を立てながら生地を織っています。縦糸と横糸が、振り子のように左右に揺れる織り機を通過する様子を眺めていたら、ツイードが織られる全ての工程が、自然世界と結びついているのだと感じるようになりました。冷たい川の流れが織物工場の水車をくぐり抜け、肌寒い風が窓ガラスに当たってガタガタと鳴り、作業場に取り付けられた木製のドアの隙間を抜けてヒューヒューと音を立てている中で、ツイードは織られているのです。
cluster_image_one_v2The_Power_to_Transport シングルブレステッド グレーヘリンボーン ハリスツイード ウールジャケット ¥170,000.00 (ドレイクス銀座店にて取扱)
重要なのは、本物のツイードは、粗野で素朴かつ古い歴史と品位を持った、極めて伝統的な生地だという点です。優秀な機織り職人たちは、変化することのないハイランド地方の風景をインスピレーション源とし、最も基本的で古くから継承されるツイード生地は、そうした風景の要素を反映しつつ従順にデザインされるものだと認識しています。ツイードは辺り一帯の世界を補い、同時に挑むものとして生まれました。
私が好きなツイードは、深緑色でパッチポケットがあり、背中にベルトが付いたブレザーや、茶色のダブル・カジュアルコート、寒いスコットランドの海岸線を表した色を使い、フロントが段返りの3つボタンで革のくるみボタン(leather football buttons)があしらわれたソフトな仕上がりのジャケット、また、ラベンダーやヘザーの花で微妙な色合いを演出した薄いグレーのヘリンボーン・ブレザーなどです。個人的に20代の頃見ていた、まとまりのないチェックや、相反する色彩をあしらったものはさておき、ツイードは真の意味で洗練されるための力を持ち、儚い生地で、類い稀な島を起源とする素材なのです。

ツイードは、素朴で頑丈な織物でなくてはならず、背景とのつながりを持った時にこそ最良の品質となるため、秋を思わせる風景の色と結びつくべきだと思います。また、ツイードには荒々しさがあるため、着る時に自分らしさを見失ってはいけません。独特なスコッチウイスキーに氷を加えないのと同様に、ツイードはストレートな自己表現ツールであり、余計な手を加えるものではないのです。

こうした気づきとは別に、凍えるように寒いスコットランド北部への旅で得たことは、最大限にシンプルであることがツイードの美しさであり、その価値を認識できるようになったことです。ツイードは質感や色調が繊細で、頑丈だけれど気取らずに着られる素材です。ツイードはワードローブを支える主力アイテムで、頼り甲斐があり、独特で、慌ただしく出かける毎朝の悩みをひとつ減らしてくれるような存在です。最後に、ツイードは最も基本的な生地だからこそ、長年に渡って受け継がれてきたのでしょう。

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Drake’sのフルライナップはドレイクス銀座店(ブリティッシュメイド 銀座店に併設)にてご覧頂けます。



執筆:Aleks Cvetkovic
『The Jackal』ライター
www.instagram.com/aleks_cvetkovic

ロンドン発の最新ラグジュアリー・メンズ雑誌『The Jackal』の副編集長で、『The Rake』の元編集者。長年に渡り、上質なメンズウェアやタイミングの良いドラマチックな間合い、そして強い酒に情熱を注いでいる。

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