-イギリスに触れたキッカケを教えて下さい。
遠山 「知人から『これ絶対好きだと思うよ。』とおすすめされた“007 スカイフォール”を観た事がキッカケです。2012年公開時に観に行って、スクリーンに映るジェームズ・ボンドを見て『これがイギリスか!』と感銘を受けました。 当時は学校でスタイリスト科を専攻していた事もあり、この人は何を着ているんだろう?といった洋服単体よりも、背景含めた全体像を見ていました。 “007 スカイフォール”のボンドは完璧でした。 季節は冬、コートを羽織る所作、ダークグレーのスーツにネクタイを締めたタイドアップスタイルで映画という世界を動くボンド。 その全てのバランスが衝撃的でしたね。」-思い切りましたね!初めてのイギリスはどのように映りましたか?
「イギリスに辿り着いたとき…街並みにまず感動したのです。 近代的な建物もあるのに、映画で観た英国そのものでした。 景観を損なわず遊ぶ感じが、私の中でイギリスらしさを表しているなと思っています。 道に自然に生えている木1本にしても、様々な要素とミックスされて実は狙ったアートではないか?と錯覚してしまったくらいです。 電線が無いのも印象的でした。 街の景観を大切にするための文化的背景が根付いていて、要素の1つ1つを上手く選んで見せているなという気持ちにはなりました。」-訪英という目的を果たしましたが、その他にはどちらを回りましたか?
「元々アートが好きだったので、美術館をとにかく沢山回っていました。 ロンドンに滞在した4日間で主要な美術館は全て網羅したと思います。 実は映画を勧めてくれた知人はイギリスに10数年間以上住んでいた事もあるアートディレクターなのです。 当時私が生徒で、知人は講師として学校で出会いましたが、アートやフットサルが好きといった共通点があって、歳隔てなく仲良くなりました。 イギリスに行くと伝えるとロンドンのギャラリーの中でも選りすぐりを教えてくれました。今もその人の影響は強いですね。 そんな背景もありつつ、実際に自分の目を通したことで今度はイギリスという国そのものが好きになりました。」-ブリティッシュメイドを知ったきっかけはどのようなものだったのでしょう?
遠山 「シンプルにファッションを仕事にしたいと思っていたんです。 そしてボンドのスタイリング、イギリスらしいスタイリングが格好良いなとずっと心に残っていました。 007でのスタイリングの着眼点は人それぞれ。特にスーツ、靴が多いと思いますが、私の場合はネクタイのディンプル(結び目)に惹かれました。 そこでイギリス製のネクタイを知りたいという欲求が強く出てきました。 早速ネットで<イギリス ネクタイ>と検索してみるとまずドレイクスがヒットしました。 取り扱い店舗はブリティッシュメイド。そこで初めて実物を手にし、お店を知りました。 今からちょうど5年前の話になります。」-最初に手にした1本はどのネクタイでしたか?
「最初の1本はネイビーの50オンスソリッドシルクタイですね。 ラグジュアリーな光沢とズシッとした重量感も相まって当然のように締めやすい。 そして、なによりディンプル。 今まで持っていたネクタイでは綺麗なディンプルが作れなかったのです。 どれで試しても劇中でみたボンドのようにはなりませんでした。 それがドレイクスのネクタイを締めてみると初めて思い通りのディンプルが作れたのです。 『そうか、あのディンプルを作るには良いものを選ぶ事が正解だったのか。』と理解できました。」-ネクタイは全部でどのくらい所有していますか?
「この5年間で30本は買い揃えました。 もちろん職業柄なので多く持ってはいますが、いずれも自分の顔の特徴に合わせたネクタイを選んでいます。 例えば今は髭を生やしているので、顔立ちのトーンは濃い方だと思います。 その場合、個人的には花柄や、明るくムードのある色合いがバランスが良く感じます。 顔は距離的にもネクタイと近いですからね。影響力は大きいです。」-ネクタイを締めることで何か変わることはありますか?
遠山 「これは感覚でしかないのですが、私にとってネクタイは背骨のような体の一部だと思っています。 もちろん人によって違う印象があるので、例えばネクタイを装飾品だと感じている人もいらっしゃると思います。 ただ、芯からスタイルを整えるためものと考えたら、安易な色は選べません。 この5年間で思ったのは、身長、性格といった自分のことを熟知しないと、ネクタイは選べないということです。 単なるモノではなく、自分がどんな人間なのかを客観的に見せてくれるとすら思います。」「ドレイクスのシーズンコレクションはバリエーションも豊富です。 シーズンのネクタイは当然その季節ごとにクリエイティブディレクターであるマイケル・ヒルの今の気分が反映され色や柄が多く入ってきます。 しかし守らなければいけないイギリスの色、トーンのような根っこを感じます。 特にカラーバランスにおいては絶妙ですね。 一見すると派手な柄が、そこまで派手に見えず上手くスタイリングの中に溶け込むのも、ドレイクスのフィルターを通しているからだと思います。 ロンドンで見た街並みのように現代的でありながら、モダンになり過ぎない。そんな奥ゆかしい芸術的な部分に私はイギリスブランドらしさを感じています。」
-昨今だとクールビズも浸透しています。それについてはどう思いますか?
「暑いとタイは締めたくないというのは、仕方がないです。私も外したい時はありますし、スタイリングによってタイドアップしない日はもちろんあります。(笑) それにクールビズの中で1人だけネクタイを締めているというのもおかしいですし、なるべく皆と方向性を合わせる事も必要だと思います。 ただ、ノータイのシャツを着てジャケットを羽織る…それでは何か物足りなさを感じるし、一緒に見えてしまいますよね。 背骨という言葉はそのようなスタイルにも引っかけています。背骨がないとそもそも自ら立てませんからね。」 遠山が愛用するネクタイの一部。ドレイクスはもちろん、ブランドを語る上で欠かせないアクアスキュータムから、バーバリーといった様々なヴィンテージを所有している。
-背骨という表現、言い得て妙ですね。最後に普段のモノとどのような付き合い方をしているか教えて下さい。
遠山 「私は洋服自体ほとんど買いません。 そもそもあまり必要性を感じていません。まず自分に見合っているか、生活で必要なものなのか、自分という人間を表せるものなのか…生活に不必要なものは選ばないという事は1つの判断基準になっています。 私にとって洋服は以上でも以下でもないのです。マイケル・ヒルの言葉を借りれば“JUST CLOTHES(ただの服)”ですね。 ただ、楽しみの1つとして、オーセンティックなアイテムを選んで、歳を重ねて自分と人の目にどう映っていくのか、その経過は楽しみですね。 その上で基本的には、永く着れるモノを選んでいます。だから英国モノを選んでいる部分もあるかもしれません。」■ 関連リンク
→古き良き英国靴の良心 ジョセフ チーニー
→Thanks 5th Anniversary|ブリティッシュメイドの5周年を記念したコラボレーションアイテムが登場。
→若きクリエイティブ・ディレクターが語る。 Drake’sのアジア第1号店が目指す価値観とは
→次のボンドは誰だ!?
BRITISH MADE
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