紅茶とは~製造方法と変種について~ | BRITISH MADE

Short story of tea 紅茶とは~製造方法と変種について~ 後編

2014.08.13

2つの変種についてお届けします。

今回は前回触れた、茶ノ木の二つの変種、「中国種」」と「アッサム種」からお話しします。
前回の紅茶とは~製造方法と変種について~ 前編はこちらからご覧下さい。
中国種
中国南西部の雲南省に起源をもつとされる茶の木は、揚子江に沿って冬の寒さに適応するために葉の小さな潅木の茶樹が生き残り、また緑茶として適度な成分の樹が栽培されていったと考えられています。中国種は耐寒性に優れ、冬に凍結する地域でも栽培できます。比較的カテキン含有量が少なく、酵素の活性も弱く酸化発酵(※3)しにくいことから、一般に緑茶向きとされています。中国、日本などの緑茶生産国で栽培されているほか、イラン、グルジア、トルコなど冬の寒さが厳しいところでは中国種を栽培して紅茶を作っています。
アッサムティー2箱分からスタートしたイギリスのブランド「クリッパー」のアッサムブレンド。

アッサム種
1823年、イギリス人M.R.ブルースがアッサムの奥地シブサガルの近郊で野生のアッサム種を発見しました。当時、イギリスの植物学者は、葉が中国種よりはるかに大きく樹木も高木であり、形態があまりにも違うために茶と認めませんでしたが、後に弟のC.A.ブルースがこの植物を栽培し、花や実をカルカッタの植物園に植えられていた中国種と比較、最終的にイギリス王立学会が茶の変種と判断しました。耐寒性が弱く、栽培は無霜地域に限られますが、カテキン含有量が多く酵素の活性が強く発酵しやすいことから、紅茶向きとされています。生育が良く葉も大きく収量があり、アッサム地域はもちろん、スリランカ低地、インドネシア、ケニアなど紅茶の新興産地で無霜地域には、殆どこのアッサム種の選抜品種が導入されています。深みのある赤い水色、やわらかな香り、コクのある力強い味を特徴としています。
という二つのものです。

そして現在では、かつてインドのダージリンやスリランカの高地には中国種が導入されたものがわずかに残っているものの、中国種にアッサム種を交配したアッサム雑種が主力であり、高い評価を得ています。
これらの産地の最上級の紅茶は、花や果物にもたとえられる、優雅で特徴的な香りを持つことで知られています。 尚、例外的に春摘みのダージリンティのように萎凋時間(※1)を長くし茶葉の水分を多く失わせて、その後の発酵が緩やかにして、さらに発酵時間を短めすることで発酵の程度が軽いものもあります。
このようなお茶は、成分的には烏龍茶と殆ど同じでこの為、ダージリンの農園マネージャーなかには春摘みのダージリンは烏龍茶だなんていわれたりもしますが、製造の工程で酸化発酵→乾燥(※4)という作業を順に行うため紅茶に分類されています。

このように、紅茶とは一言ではいえないのですが原則的には茶の葉をしっかり酸化発酵させたもので、例外もありますが重要な製造工程を順に踏んでつくられたものであるといえます。
2回にわけてお送りしてきた紅茶の定義と分類いかがだったでしょうか?
皆様のお茶を選ぶ際や味わう際に読んでいただいた知識が少しでも役立てば幸いです。




※1:萎凋
摘み採った生葉の総重量の約77%は水分(残り約23%は固形分)です。萎凋は、次の揉む工程で作業をやりやすくするため、生葉に含まれている水分の30~40%蒸発します。この結果、生葉の総重量は60~65%に減少します。
従来は、摘み採った生葉を網や麻布でできた萎凋棚に広げて、15~20時間、日陰干しにする「自然萎凋」でしたが、今ではほとんどの場合、萎凋槽を使い、8~10時間、大量の温風を送ってしおれさせる「人工萎凋」が行われています。
萎凋の程度は、葉がしおれた状態で握りしめたときに弾力性がなく、握力をゆるめても塊が解けず、茶葉に指の痕が残る程度で、甘涼しいリンゴのようなフルーティーな香りがするといった状態が目安となっています。

※2:揉捻
茶葉に撚れを与えて、茶葉の細胞組織を破壊し、葉の中の酸化酵素を含んだ成分を外部に絞り出し、空気に触れさせて酸化発酵を促して形を整える作業です。
揉捻発酵時間は45~90分。押さえ蓋で茶葉を強く圧迫しながら揉むので、酸化発酵が進み過ぎるため、発酵を抑える目的で玉解機にかけ、冷却して再び揉む作業を繰り返します。「揉捻→冷却」の作業を繰り返し行っている間に、茶葉は60~70%程度酸化発酵されるので、揉捻にも発酵の段階が含まれると考えられています。

※3:発酵
室温25~26度、湿度90%の発酵室に、厚み4~5cm程度に広げ、2~3時間放置します。この段階で、緑色だった葉が鮮やかな赤銅色になり、紅茶としての芳香を漂わせ始めます。しかし、最近では、揉捻中に温度・湿度を与えて発酵を調整する方法も採用されています。
発酵しすぎると、紅茶の命である香気やアロマが台無しになってしまい、水色も黒っぽくなります。酸化発酵の程度は、茶葉が変化していく状況に応じた「香り」や「色」で判断し、適度な段階で次の工程に移して、酸化発酵を完全に止めなければなりません。

※4:乾燥
発酵終了時の茶葉の水分は約60%です。引き続き化学変化が起こるため、乾燥機に入れ、100度前後の高温熱風で酸化酵素の活性を止め、水分3~5%まで乾燥させます。


2014.08.20
Text by T.Nogami

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野上富巨

野上富巨

紅茶のカフェ「nt(ニト)」店主。幼い頃から紅茶が好きで、様々な飲食業を経て2013年3月紅茶のカフェ「nt(ニト)」を東京西荻窪で開業。日本紅茶協会認定ティーアドバイザー。

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