英国ではこのミルクの入れ方によって美味しさが変わるという論争が起こったのです。
前回、前々回と少し専門的な話がつづいたので今回はちょっと肩の力が抜けるような話をしたいと思います。紅茶その代表的な飲み方は、1870年頃から流行ったティー・ウイズ・ミルクと呼ぶ紅茶と牛乳を一緒に混ぜたミルクティーです。 イギリスの水で紅茶をいれると硬水であるため、水色がコーヒーのように黒っぽい色になりこのためブラックティーと呼ばれます。これにミルクを入れると、おいしそうなクリームブラウンになります。 ミルクティーのまったりとした味わいたまりませんよね。
みなさんはどっち派でしょうか?
そんなものどっちでも好きな方でいいじゃないかと思う方もいるかもしれませんが、この論争なんとイギリスでは130年間に亘り続いていた論争なのです。 さすがは、紅茶の国とよばれるだけはありますね、そのこだわりも半端ではないようです。 ところが、この長きに亘って続いたこの論争に、イギリスで最も権威のある王立化学協会が2003年に決着を付けたのです。 それは、「ミルクが先=MIF」の方がタンパク質の熱変性が少なく、さらっとしたおいしさになるということを化学的に立証して発表しました。 これで、論争にも終止符がうたれるかと思いましたが、その後も反論や新説が発表されるなどして、今でも論争は続いているようです。
さらに、日本ではこんな意見もあります。
日常的に紅茶をいれている方は自分の使っている茶葉の適切な量も湯量も特徴など判っているわけですから、ミルクを先に入れた方が良いと思います。 しかし、日本の牛乳は、高温で殺菌されホモジナイズ(均質化)されているため風味が最初から損なわれているのであまり気にしなくても良いと思います。
そして、ミルクを後から入れた方がよい場合もあります。 初めて使う茶葉などはどの程度力があるのか判りませんし、カップに注いだ色も楽しみたい。 まずはブラックティーで飲んで、後に気が向けばミルクティーで楽しむ。 また日本の水はイギリスの硬水と違うので、茶葉の種類によっては、ブラックティーだけで十分に美味しいものがあります。茶葉によりミルクティーが合うものがあれば、自由にミルクを入れてみる。 なので日本ではミルクインアフターの方が無難かと思います。
旨い牛乳を手に入れるのも大変ですし、とても価格が高いのが難点。
ミルクをいれる順序だけでこんなに主張が別れる紅茶、本当に面白いですね。
シロニバリ農園のアッサムのミルクティー。しっかりとしたコクとどこか甘みを思わせる味わいが特徴です。
ちなみに当店(Cafe nt)では、成分無調整の牛乳をクリーマーに入れてお出ししています。 ですので、ミルクインアフターでお客様は紅茶を飲まれているわけですが、御要望があれば先にカップにミルクを注いだ状態でお出しする事も出来ます。 どちらの飲み方でも、1杯の紅茶を美味しく味わえたなら素敵ですね。
野上富巨
紅茶のカフェ「nt(ニト)」店主。幼い頃から紅茶が好きで、様々な飲食業を経て2013年3月紅茶のカフェ「nt(ニト)」を東京西荻窪で開業。日本紅茶協会認定ティーアドバイザー。