秋といえば収穫期を迎える農生産物も多く色々な旬の食べ物で市場や食卓を彩ります。この旬紅茶にもあるんですよ。
最近は、気温も過ごしやすい日々がつづいて秋の深まりを感じる時期になりました。秋といえば収穫期を迎える農生産物も多く色々な旬の食べ物で市場や食卓を彩ります。まさに食欲の秋ですね。ところで、この旬紅茶にもあるんですよ。 紅茶それぞれの生産地で様々な時期に摘まれるのですが、最もその紅茶の特徴が出る時期のことをクオリティーシーズンとよび、これが紅茶の旬です。紅茶の茶樹は亜熱帯から熱帯地方に植生します、そしてそれらの地域には大なり小なり雨期と乾期が存在します。なかでもクオリティーシーズンは、乾期にあたります。 香りが非常に大切な特徴である紅茶は、日をよく当てた方がよいと言われます。なぜなら、香り成分を含むポリフェノールは、太陽光線に当たると大量に生成されるからなのです。このような理由からクオリティーシーズンの紅茶は高く評価される傾向にあります。しかし、クオリティーシーズン以外に摘まれたの紅茶がおいしくないという意味ではありません。
それでは、代表的な産地のクオリティーシーズンの紅茶の特徴を見ていきましょう。
ダージリン
ファーストフラッシュ (春摘み茶) 3月~4月
紅茶を入れる前にも茶葉から新鮮な香りが漂うファーストフラッシュ。寒さが和らぎ始める、3月から4月ころに摘まれる一番茶です。生産は極少量です。茶葉が若いうちに摘まれるのでカテキン含有量も少なくその製造過程から発酵の程度が低いです。美しい薄緑色の葉茶殻は緑色で、お茶は透明な黄金色をしています。緑茶や烏龍茶を思わせるような非常にさっぱりとした爽やかな味わいを感じられます。あまり紅茶独特の強さといった印象は感じられませんが、ファーストフラッシュの出荷は紅茶の季節の始まりを感じさせてくれます。
セカンドフラッシュ (夏摘み茶) 5月~6月
旨み甘み渋みをすべて備えたセカンドフラッシュ。夏の最盛期にとれる2番摘み茶です。5月から6月に摘まれる葉から作られます。この頃には日中の気温が上がり、日照時間も長くなっています。茶葉は濃いブラウン、茶殻は円熟味を感じさせる美しい銅色で、お茶は濃く美しい金色です。風味や香りが最も充実し、ダージリンの3回のクオリティシーズンの中でも最上の評価を得ることの多い時期です。
若々しく緑茶のようなファーストフラッシュと比べ、ダージリンらしいコクと深みのある味わいとなります。マスカテルフレーバーといわれるダージリンの特徴がもっともよくあらわれていて、味・香り・渋みともにしっかりしており、最も充実したダージリンが味わえると多くの人に好まれています。
オータムナル (秋摘み茶) 10月~11月
秋の深みある紅茶に仕上がったダージリンオータムナル。4番摘み茶にあたり、熱帯のモンスーンがあけ、乾季へと移りかわる秋に収穫されます。 濃い栗色の茶葉で、お茶は深い銅色です。その年の茶摘が終了する前に取れる茶葉から、熟成した風味豊かな紅茶がつくられます。マスカテルフレーバーは薄くなってしまいますが、代わりにまろやかな甘みとメローカップと呼ばれる熟成した香りが期待できます。収穫量がダージリン茶の年間生産量のわずか5%にすぎず、“幻の紅茶”といわれています。オータムナルはミルクティにも合うほどコクがでます。
アッサム
ファーストフラッシュ (春摘み茶) 3月~4月
アッサムファーストフラッシュは、濃厚でさわやかな風味で甘い香りがします。ファーストフラッシュはストレートで楽しむのがオススメです。
セカンドフラッシュ (夏摘み茶) 4月~6月
セカンドフラッシュはアッサムの三つの茶葉の中で、一番収穫量が多く、モンスーンの時期に収穫されます。アッサムセカンドフラッシュは濃厚でモルティーフレーバーといわれる、芳醇な甘みと力強い味、クリームのような風味が特徴。セカンドフラッシュはミルクティーに向いています。また、ファーストフラッシュと比較すると、セカンドフラッシュはより甘い味わいがあります。
アッサムの中でも、クオリティーシーズンのピーク(評価がさらに高くなりやすい)とされているのは、4月から6月にかけてのセカンドフラッシュです。タンニン含有量が豊富な特徴があり、淹れた紅茶が冷めるとクリームダウンという水色が濁る現象が起きます。
オータムナル (秋摘み茶) 9月~11月
秋に収穫された茶葉ならではの濃厚な味わい。重くしっかりした渋みが特徴で後味は癖がない。黒味がかった濃い赤色の水色をしています。ミルクティーにすると、渋みがやわらぐでしょう。
※アッサムは、ダージリンと同様、収穫されるシーズンによって味や香りに違いがあります。しかし、ダージリンと比べるとその味や香りの変化ははなくおだやかであるといわれます。
ウバ 8月~9月
この地方は7~8月にかけて南西モンスーンが吹き、その影響で霧が発生します。しかしその霧は山脈を越えてきたそよ風によって払われ、直射日光で一気に茶葉が乾かされます。これが甘いフレーバーと渋みを紅茶に与えるのです。なのでクオリティシーズンは8、9月の乾期。この時期の紅茶は収穫量が少ないのですが、芽の伸び方が遅く成分がじっくりと蓄積されるので品質がよく、フラワリーな香りにメントール系のフレーバーが加わり、とても爽やかな味わいです。
ディンブラ 1月~2月
ディンブラはスリランカの山岳部の南西斜面、ウバの反対側で地域。1月~2月にはこの地方にスリランカ特有の季節風が吹き、山岳地帯に当たったその風は乾いた風となって茶樹に送られます。これが茶葉にフラワリーな香りをつけます。そしてこの時期がディンブラのクオリティシーズンとなるのです。ディンブラはクオリティシーズン以外でも、セイロン高地産茶としての高品質を維持しています。そこがディンブラの最大の強みとも言えます。このように常に安定した品質の紅茶を作れるのは、クオリティシーズン以外は季節による茶葉の変化がないためです。
ヌワラエリヤ 2月~3月
ヌワラエリヤは標高1800mのリゾート地としてイギリス人が開発した町で、ヌワラエリヤはスリランカの紅茶産地の中でも最高地にあります。避暑地とされるだけあって、日中の気温は20~25℃ですが、朝夕は5~15℃と涼しくなります。この温度差が渋みを育成するのに役立ち、ヌワラエリヤ茶の濃厚で刺激的な味を決定づけます。クオリティシーズンは2~3月。この時期のものは、薄いオレンジ色の水色、ダージリンティに似た繊細な風味を持っています。
◆ 中国
キームン 4月?5月
中国安微省祁門県で4~5月に手摘みされた新茶は、17もの製茶工程を経て完成し8月に出荷されます。 長い時間と手間をかける事から「工夫」紅茶とも呼ばれます。
紅茶の旬、いかがでしょうか?
日本のお茶屋さんにクオリティーシーズンの紅茶が入荷するのは輸送方法や保存方法の違いから時期にバラつきがありますが、アナウンスがあるので好きな紅茶のクオリティーシーズンを覚えて狙って購入してみるのも面白いのではないでしょうか、きっと新しい味わいに出会えると思います。
野上富巨
紅茶のカフェ「nt(ニト)」店主。幼い頃から紅茶が好きで、様々な飲食業を経て2013年3月紅茶のカフェ「nt(ニト)」を東京西荻窪で開業。日本紅茶協会認定ティーアドバイザー。