紅茶に適した水、逆に適さない水とはどのようなものでしょうか?
紅茶といえば飲み物なので水分、ほとんどが水によって構成されていることはいうまでもありません。 しかし、紅茶を淹れる際にこの水について注意することってあまりない方がほとんどなのではないでしょうか?そこで今回は紅茶に適した水についてお話しします。
茶類の中では、紅茶が一番水の影響を受けやすいといわれます。 緑茶も硬水(ミネラル類を多く含む水)に適さないとされていますが、ミネラル類のバランス具合で少し硬めの水で淹れても構いません。しかし、紅茶は水色がかなり変化するので、紅茶向き、向かない水かどうか分かります。 紅茶には淹れるのに適した水とそうでない水があります。これは、そのまま飲んで美味しい水とは違います。 それでは、紅茶に適した水、逆に適さない水とはどのようなものでしょうか?
・ミネラル類(カルシュウム、マグネシュウム、ナトリウム、カリウムなど)を適度に
(20~100mg/リッター)含むこと(これを「軟水」と言います)。
・空気(酸素)を多く含むこと。
・できればpHは、8.0~8.5 (中性は7.0ですので、少しアルカリ寄り)が理想的です。
次に紅茶に適さない水の条件です。
・ミネラル類が全く含まれていないか、100mg/リッター以上含む水(「硬水」と言います)。
・空気(酸素)が極めて少ないか、全く含まれていない水。
・pHが低すぎるか、あるいは高すぎる水。
以上が、紅茶に適するまたは適さない水の条件です。
この条件を考慮にいれて紅茶に適する水あげるとすると、日本では水道水が最適だといえます。
日本では、特定の地域でないかぎりほぼすべての場所が軟水で先にあげた条件を充分満たしているからです。意外とこの3条件を満たす水は少ないものなのです。
但し、水道水のpHは、先に話した通り、幅がありますので、場所によっては、煮沸時間で調整したほうがいいでしょう。
では、逆に紅茶に適さない水をあげるとすると、ミネラルウォーターや純水(真水)です。
ミネラルウォーターは、ミネラル類が一般に高く、空気(酸素)も殆んど入っていませんので、この水を使って紅茶を入れると、紅茶の成分がミネラル類と反応して、水色が黒ずんだり、香りも抑えられて、新鮮感の無い紅茶になります。
ボルヴィックなどの軟水とされるミネラルウォーターも水の硬度は適しているのですが、空気(酸素)が殆ど入っていないという理由で日本水道水と比較すると紅茶に適さないといえます。
もう一つの、純水はミネラル・ウォーターとは逆に、全くミネラル類が無い為、紅茶の中の成分と反応出来ませんので、水色は、ピンク系になり、味もボンヤリとして、味気の無い紅茶となります。紅茶は、茶葉中の成分と、水の中の微量なミネラルとが反応して、香成分、色などが溶出されるからです。なので、適度なミネラル類を含むことは大変重要なポイントになるのです。 微妙な水のバランスが紅茶には必要なんですね。
因に、紅茶で有名なイギリスの水は一部の天然水を除いてミネラルを多く含む「硬水」です。この硬水は沸騰させてもミネラル類は減少しない永久硬水、そのまま使うとどうしても紅茶の水色は黒ずみ、紅茶の特徴である香味は押さえられてしまいます。ですから、イギリスではなかなかストレートで紅茶本来の味の紅茶は飲めないようで、紅茶のブレンドは少しでもこの水に合うように「コク」を重視して行われます。アッサム、ケニヤなど多く使用する所以となっています。
左から「南アルプスの天然水」軟水(硬度約30mg)鉱水 採水地:山梨県、「Volvic」軟水(硬度60mg)鉱泉水 採水地:ボルヴィック、「SOLAN DE CABARAS」中硬水(硬度253度) 鉱泉水 採水地:スペイン、「HAWAII WATER」軟水 深井戸水 採水地:ハラワ水源(ハワイ)
さらに、紅茶に適した水を使って淹れる際の注意点(やってはいけないこと)がありそれは次の様なものです。<長時間沸騰を続けた湯を使うこと>
中の空気が無くなり、カルシウム濃度が上昇し、pHが9.0mg/リッター以上で、アルカリ寄りになって、好ましくない。
<2度沸かしの湯を使うこと>
この場合も、中の空気が不足して、茶葉の成分を溶出させる有効物質に変性が起こり、紅茶にとっては「死んだ状態の水」となります。
<魔法瓶の湯を再度沸騰させて使うこと>
再度沸騰させても空気がなくなっているので、そのままでは紅茶本来の風味は出ません。
以上のことをまとめると、日本で美味しく紅茶を淹れるには、勢いよく出した新鮮な水道水を、沸騰させてすぐに一気に茶葉の入ったポットに注ぐこと。そして、茶葉にあった適度な蒸らし時間をとることが重要ということになります。
ただ、これも個々人の好みでイギリス風に硬水でしっかりとした紅茶の渋みをだしてミルクを入れて飲むのが好きなんていう方もいらっしゃいます。 この美味しい紅茶淹れる知識だけはおさえておいて、色々な水や淹れ方を工夫してみるのもきっと面白いと思います。
野上富巨
紅茶のカフェ「nt(ニト)」店主。幼い頃から紅茶が好きで、様々な飲食業を経て2013年3月紅茶のカフェ「nt(ニト)」を東京西荻窪で開業。日本紅茶協会認定ティーアドバイザー。