紅茶にもクリスマスティーというものがあって、毎年この時期になると色々な紅茶メーカーからクリスマスティーが販売されます。
今年も遂に12月、年の瀬も間近ですね。月日が流れるのは本当に早いなと感じつつも、街はクリスマスに向けて華やかに彩られ賑賑しい雰囲気でウキウキとした気分にさせられます。ところでクリスマスの飲み物といえばイメージするのはシャンパンやワインなどかと思うのですが、紅茶にもクリスマスティーというものがあって、毎年この時期になると色々な紅茶メーカーからクリスマスティーが販売されます。どれも特徴のある香りブレンドで、だいたいどれもリンゴ・オレンジなどの果物やバラなどの花びらが賑やかにブレンドされていてそれに加え、シナモン・クローブなどのスパイスの香りも加わってとても華やかで暖まるような紅茶となっています。
今回はこのクリスマスティーについてのお話です。
クリスマスティーの起源は、ヴィクトリア時代(19世紀のイギリス)にまでさかのぼります。ヴィクトリア女王は、ドイツのアルバート公と結婚しましたが、クリスマスにツリーを飾る習慣はドイツに起源があり、彼女はその習慣を取り入れました。このロイヤルティーパーティーをかわきりに、クリスマスティーパーティーを計画する伝統が生まれ、1860年代には上流階級の間で人気となります。これはイギリス伝統のアフタヌーンティーパーティーのクリスマスシーズン版なのですが、用意される紅茶が通常とはちょっと異なります。
イギリスを代表する百貨店の一つ「ハロッズ」のクリスマスティー
「ハロッズ」のクリスマスティーは封を開けるとシナモンを初めとしたスパイスの豊かな香り。原材料は紅茶、シナモン、ブラックベリーの葉、オレンジの花、カルダモン、しょうが、クローブ、紅花、香料。
この時に用意されるティーは、茶葉にレモンやオレンジなどの柑橘系の果物の皮や、生姜、シナモン、クローブといったスパイスをブレンドさせたものだったそうです。 果物の皮には、 神経を鎮め気持ちをリラックスさせる他に身体を温める効果があり、スパイスには、殺菌作用があってウイルスや病原菌を殺す効果を持っています。 つまりクリスマスティーというのは、クリスマスの時期に流行る風邪対策としてもブレンドされたティーだったのです。
このクリスマスティーはクリスマスキャロルを歌う人に振舞われる飲みものとなり中産階級、庶民にまでこのクリスマスの楽しみが浸透していきました。 このころのクリスマスには、家族や友人近隣の人たちが集まり、お菓子を作ったり冬の寒さを吹き飛ばしてくれる温かいスパイスの効いた紅茶を楽しんでいたそうです。 このスパイスやシトラスフルーツは、19世紀のヨーロッパでは非常に贅沢品でした。ですから、クリスマスの特別なご馳走として喜ばれていたのですね。
フォートナム&メイソンのクリスマスプティング
このクリスマスティーは大勢の客へのふるまいにもなる、体に良く思い出や記念になる特別な熱い飲み物。
きっと大流行したことでしょう。
元々のヴィクトリア女王達、王侯貴族が飲んでいたものと庶民が飲んでいたものでは材料もレシピも違っていたはずです。時代によって、また家庭の経済状況によっても材料は変わっていったでしょう。クリスマスのお祝いを家族でする、その為のお菓子作りの、残り物の材料で作ったりしたかもしれません。クリスマスプティングやケーキを作った後に、ちょっと残ったスパイスや果物。それを入れた紅茶。シナモンを入れたりオレンジの輪切りを浮かべたり、りんごを混ぜたり、クリームを浮かべてみたり、細かいレシピなんて、あってないようなもの。
それでも、大きな鍋にぐらぐらと湯をたぎらかせて、紅茶の茶葉を放り込み、景気よく砂糖や蜂蜜を入れ、手元にあったスパイスや果物を入れて大量に作る。そしてやって来た者に「良く来てくれたねぇ、さあ、体を温めとくれ」なんて言いながら手渡す。寒い時期には。十分にそれが温かいもてなしであり、最高のご馳走だった。さらにそこに楽しい一時があればそれは思い出の味として心に残る。
そんな素敵な伝統を持つクリスマスティー、各紅茶メーカーでノエルティーやウィンターティーやクリスマスブレンド等の名称でも販売されています。その年限定の趣向を凝らしたブレンドなんていうものもあったりするので、伝統や文化に思いを馳せながら色々と味わってみるのも面白いかもしれませんね。
さらに今回は日本紅茶協会によるクリスマスの季節のおいしいレシピ(アレンジティーのレシピ)もあわせてご紹介するので是非お試し下さい。
「クリスマスシャンパンティー(Ice)」
用意するもの(1杯分)
アイスティーベース(茶葉ニルギリ等)6g/熱湯150cc/グラニュー糖20g
お好みのシャンパン/氷/イチゴ・キウイ・パイナップル等
1.グラニュー糖やガムシロップで甘味を付けた濃い目のアイスティーベースを作る。
蒸らす時間は1~2分程度に。
2.クリスマスカラーの果実(イチゴ・キウイ・パイナップル等)を
シャンパングラスに砕いた氷と共に彩り良く詰める。
3.「1」のアイスティーベースを氷の上からオン・ザ・ロックス方式で8分目まで注ぐ。
4.冷やしたシャンパンを「3」の上から氷に当たるように静かに注ぐ。
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(日本紅茶協会HPより抜粋)
野上富巨
紅茶のカフェ「nt(ニト)」店主。幼い頃から紅茶が好きで、様々な飲食業を経て2013年3月紅茶のカフェ「nt(ニト)」を東京西荻窪で開業。日本紅茶協会認定ティーアドバイザー。