
産業革命をきっかけとして爆発的に広まったイギリスの“主食”ジャガイモ

ジャガイモはもともと南米原産で、イギリスに入ってきたのは16世紀後半。16世紀末にはロンドンでも栽培が始まり、アイルランドではたちまち広まったものの、イングランドとスコットランドではそこまで浸透しなかった。ところが18世紀後半に産業革命が始まると、安くて栄養価の高いジャガイモが労働階級から優れた食材として求められるようになり、爆発的に普及。冷涼な気候を好むジャガイモはイギリスの土壌で育ちやすかったこともあり、ピーク時の1948年頃にはイングランドとウェールズで栽培面積が40万ヘクタールにも上ったという。
ホクホクのFluffyタイプのジャガイモは、ローストやジャケットポテトに最適

それ以外にも、茹でる、ローストする、蒸す、つぶす(マッシュ)、パイにする、サラダにする、スープにするなど、ジャガイモ料理は多種多様で、イギリスではメニューによって品種を使い分けるのが当たり前。タイプ別に大きく3つに分けられるジャガイモの代表品種とおすすめ料理を見ていこう。
まずは“Fluffy”と呼ばれる種類から。これは茹でると中がフワフワ(Fluffy)になるタイプで、“Floury”(粉を吹くような)と表現されることもある。日本でいう男爵のようなホクホクした食感のジャガイモで、ベイクやマッシュ、また皮付きのままオーブンで焼くジャケットポテトに向いている。
Fluffyの代表格は、イギリスで一番人気のあるマリス・パイパー(Maris Piper)。1960年代から栽培されている品種で、イギリス全土で広く見られる。ゴールドの皮と白い実を持ち、水分は少なめ。クリーミーな味わいで、スープにしてもおいしい。
もうひとつ、キング・エドワード(King Edward)もイギリスで一般的なFluffyタイプのジャガイモだ。クリームカラーの皮のところどころに赤い模様があるのが特徴。1902年からイギリスで栽培されている古い品種で、チップスに最適。
Fluffyにはほかにスコットランド原産のシェットランド・ブラック(Shetland Black)、皮も実も赤く、ロンドンのサボイホテルでブルゴーニュ公爵へ供する料理の色付けに使われた歴史を持つハイランド・バーガンディ(Highland Burgundy)、スコットランドのアラン島で品種改良されたアラン・ヴィクトリー(Arran Victory)などがある。
ねっとりした食感のWaxyタイプのジャガイモは、サラダやシチューにすると絶品!

Waxyで最もよく見られるのがシャーロット(Charlotte)。イギリスでは一番人気のあるサラダポテトでサイズは小さめ。丸ごとローストにしてもおいしい。
もうひとつ、新じゃがの中でも群を抜いて美味といわれるのが130年以上前からジャージー島で栽培されているジャージーロイヤル(Jersey Royals)。ジャージー島に打ち上げられる海草を肥料に使い、急斜面の多い海岸線の畑で栽培されており、植え付けや収穫はほぼ手作業。栽培に手間がかかるため、値段もほかの品種の数倍するが、大地の恵みを感じる香りと味わいは格別。EUから「The Protected Designation of Origin」の認定を受けており、ジャージー島以外で同じ品種を栽培しても「ジャージーロイヤル」とは呼べないことが保証されている。
大ぶりでかためのSmoothタイプのジャガイモは、ウェッジズやグラタンにピッタリ

Smoothを代表するのが1960年代にオランダで品種改良されたデザレイ(Desiree)。赤い皮と黄色の実で見分けやすく、イギリスでも広く流通している。
イギリスのオーガニックファーミング(有機農業)のパイオニアであるレディ・イブ・バルフォーから名付けられたレディ・バルフォー(Lady Balfour)もこのタイプ。ベイク、マッシュ、ロースト、チップス、ウェッジズといろいろな料理に使える万能ジャガイモだ。
このように、「ジャガイモ」とひと括りにできないのがイギリスでジャガイモが広く愛される大きな理由。イギリスに出かけたら、ぜひさまざまな種類のジャガイモを楽しんでみよう。
Text by M. Grooby/グルービー美子