2015年9月に発行となった『ミシュランガイドブック・イギリスおよびアイルランド』2016年版で、ロンドン中心部メイフェア地区にある日本料理店「UMU」が2つ星を獲得した。イギリス元首相ブレア氏、歌手のマドンナなどの有名人も足を運ぶ、ロンドン有数の名店をご紹介しよう。
アプローチからドラマを演出する「UMU」を切り盛りするのは、総料理長の石井義典さん。大阪あべの辻調理専門学校を卒業後、「京都吉兆」嵐山本店で経験を積み、1999年からジュネーブの国連大使公邸の料理長に就任。2002年にニューヨークへ移り、2006年より「MORIMOTO」レストランで活躍した経歴の持ち主だ。ロンドンへは2010年、「UMU」2代目総料理長というポジションのオファーを受けてやってきた。
「UMU」はオープン以来、懐石料理の名店として知られていたが、石井さんが目指したのは「イギリスでしか作れない日本料理」。それまでは食材の多くを日本から輸入していたが、和食の要である鮮度にこだわり、地元で調達できるものに変更。ところがイギリスは日本やニューヨークとは異なり、刺身にできる新鮮な魚介類が手に入らないという難点があった。
イギリスでは漁船に氷を持ち込む習慣がなく、漁に出ている数日間の間に獲った魚の鮮度が落ちてしまう。石井さんはイギリス中を探し回って、ようやく南西部コーンウォール地方に日帰り漁を行っている漁師を発見。ロンドンから車で8時間かけて現地に通い、彼らと信頼関係を築くと、一緒に船に乗って魚の鮮度を保つために日本で古くから行われている技法「活け締め」を伝授。その後、ポルトガルの漁師にも同様の技術を教え、納得いく品質の魚が得られるようになった。
さらに、「懐石料理は皿の中だけではなく、日本の文化そのものを楽しむもの」という考えから、厨房の外のことにも細かく気を配る。石井さんは吉兆時代より陶芸や華道、茶道、書道といった日本文化全般を身に着けており、店内に飾る花や什器も厳選されたもののみを採用。料理に自らの書画を添え、箸置きや向付なども石井さんが手掛けたものが少なくないという。
このように伝統的な日本文化を随所に取り入れることに加え、前述の通り「イギリスならではの日本料理」も追求。例えば懐石料理の材料にジビエやトリュフを使うこともある。石井さんを筆頭に、店で働く料理人は名のある日本料理店で修業した実力派で、全員が「唯一無二の料理」を目標に日々研鑽を積んでいるそうだ。
「昨年、ひとつの指標としていたミシュラン2つ星の取得を達成し、UMUは新たなスタート地点に立ちました。ここまで来られたのはすべてスタッフの毎日の努力のおかげ。審査基準が日本やアメリカとは違うミシュランのヨーロッパ版で評価されるのは、日本と全く異なる環境の中で日本料理と文化を理解してもらうという意味でも大きなことでした。これからも素材のよさを大切に、お客様に喜んでもらえる料理を極めていきたいです。」
そう語る石井さんが率いる「UMU」の躍進が、ヨーロッパの日本料理シーンにさらなる影響を与えてくれそうだ。
鮮度にこだわり、日本の伝統的な“活け締め”の技法を地元の漁師に伝授
ヨーロッパの日本料理店で初めてミシュラン2つ星に輝いた「UMU」。著名人も通う有名店だが大きな看板はなく、その外観は目立たず地味な印象だ。店に到着すると目の前にそびえたつのは重厚な木の扉。しかしその前に立ってもドアは開かない。実は、扉の横にある白いパネルに手をかざすとドアが開く仕組みになっており、このシークレット感がこれからいただく食事への期待感を一層駆り立てる。アプローチからドラマを演出する「UMU」を切り盛りするのは、総料理長の石井義典さん。大阪あべの辻調理専門学校を卒業後、「京都吉兆」嵐山本店で経験を積み、1999年からジュネーブの国連大使公邸の料理長に就任。2002年にニューヨークへ移り、2006年より「MORIMOTO」レストランで活躍した経歴の持ち主だ。ロンドンへは2010年、「UMU」2代目総料理長というポジションのオファーを受けてやってきた。
「UMU」はオープン以来、懐石料理の名店として知られていたが、石井さんが目指したのは「イギリスでしか作れない日本料理」。それまでは食材の多くを日本から輸入していたが、和食の要である鮮度にこだわり、地元で調達できるものに変更。ところがイギリスは日本やニューヨークとは異なり、刺身にできる新鮮な魚介類が手に入らないという難点があった。
イギリスでは漁船に氷を持ち込む習慣がなく、漁に出ている数日間の間に獲った魚の鮮度が落ちてしまう。石井さんはイギリス中を探し回って、ようやく南西部コーンウォール地方に日帰り漁を行っている漁師を発見。ロンドンから車で8時間かけて現地に通い、彼らと信頼関係を築くと、一緒に船に乗って魚の鮮度を保つために日本で古くから行われている技法「活け締め」を伝授。その後、ポルトガルの漁師にも同様の技術を教え、納得いく品質の魚が得られるようになった。
イギリスのメディアから「懐石キング」と称された総料理長の石井義典さん
“懐石料理は皿の中のものだけではない”をモットーに、日本文化をイギリスで再現
イギリスの和食業界に活け締めを紹介した石井さん。彼の尽力により「UMU」はロンドンで最も新鮮な魚、そして市場には出回らない珍しい魚を味わえる稀有な店となった。さらに、「懐石料理は皿の中だけではなく、日本の文化そのものを楽しむもの」という考えから、厨房の外のことにも細かく気を配る。石井さんは吉兆時代より陶芸や華道、茶道、書道といった日本文化全般を身に着けており、店内に飾る花や什器も厳選されたもののみを採用。料理に自らの書画を添え、箸置きや向付なども石井さんが手掛けたものが少なくないという。
このように伝統的な日本文化を随所に取り入れることに加え、前述の通り「イギリスならではの日本料理」も追求。例えば懐石料理の材料にジビエやトリュフを使うこともある。石井さんを筆頭に、店で働く料理人は名のある日本料理店で修業した実力派で、全員が「唯一無二の料理」を目標に日々研鑽を積んでいるそうだ。
活け締めで処理された新鮮なお刺身。「UMU」の人気メニューは懐石料理、刺身の盛り合わせ、寿司、北アイルランド産の天然ウナギ。
懐石料理と一緒に楽しめる日本酒とワインの品揃えは、ヨーロッパ随一
美食とともに堪能したい日本酒とワインのセレクションが豊富なことも「UMU」の魅力だ。日本酒は蔵元から直接仕入れた選りすぐりの銘柄を160種類以上、ワインも世界から800種類以上を用意。和食は2013年にユネスコの無形文化遺産に登録されて国際的にも注目を集めているが、この数年、ヨーロッパでは日本酒も右肩上がりの成長を続けている。「UMU」ではヨーロッパで人気の高い吟醸酒を中心に、にごり酒や京都の梅酒も提供。日本酒に目覚めたロンドンナーにも好評だ。「昨年、ひとつの指標としていたミシュラン2つ星の取得を達成し、UMUは新たなスタート地点に立ちました。ここまで来られたのはすべてスタッフの毎日の努力のおかげ。審査基準が日本やアメリカとは違うミシュランのヨーロッパ版で評価されるのは、日本と全く異なる環境の中で日本料理と文化を理解してもらうという意味でも大きなことでした。これからも素材のよさを大切に、お客様に喜んでもらえる料理を極めていきたいです。」
そう語る石井さんが率いる「UMU」の躍進が、ヨーロッパの日本料理シーンにさらなる影響を与えてくれそうだ。
日本酒のセレクションはヨーロッパ随一
UMU
住所:14-16 Bruton Place, Mayfair, London
電話:020-7499-8881
営業時間:ランチ12:00~14:30、ディナー18:00~23:00
定休日:土曜のランチ、日曜
URL:http://www.umurestaurant.com/
石井義典ブログ:http://kaiseki-master.blogspot.co.nz/