都会の喧騒を忘れさせる自然と人の共存 「Lizzy’s at the Coal House Cafe」 | BRITISH MADE

Food For Thought 都会の喧騒を忘れさせる自然と人の共存 「Lizzy’s at the Coal House Cafe」

2017.02.14

今月紹介するカフェは、隠れ家中の隠れ家。1833年以来、一般へのアクセスを閉ざされていた旧コールハウス(石炭取扱店)を再利用したカフェとロンドンのワイルドライフが豊富な貯水池の組み合わせ。ハックニー地区にあり、11ヘクタールの規模を誇る「Woodberry Wetlands」は、1833年に完成し、この地域を潤わす水源として歴史を歩み出す。
時代の流れと共に、劣化の道をたどり、まさしく忘れられた存在になっていたのだが、長年の地元愛による復興のキャンペーンを受けて、 貯水池への塩素やリン酸ナトリウムの使用を辞め、着実に様々なワイルドライフが集まる都会のオアシスとしての復活の道を歩き出した。それが昨年、2016年に完全復興となり、一般客にオープンした。
案内看板 鑑賞できる野鳥を紹介
woodberry wetlands 「Woodberry Wetlands」への入り口
このキャンペーンを引っ張ってきたのは、「London Wildlife Trust」。彼らの功績が無くてはここは存在していないだろう。 都会のワイルドライフを保護していくことを目的に活動している団体であり、今や、野鳥や渡り鳥が季節に合わせて集まる憩いの場として、この貯水池が復旧するまでに至った。カワセミ、鶯と蜂や蜻蛉が飛び回る緑豊かな湿地。ロンドンにこんな場所が存在するのは嬉しい驚きだ。マナーハウス地下鉄駅から徒歩10分、建築的重要建造物に指定されているコールハウスをカフェとして再稼働し、美味しい珈琲と食事を提供しているロンドナーにもあまり知られていない隠れ家である。オープンと同時にあのイギリスの人間国宝的な存在であるSir David Attenborough(デイビッド・アッテンボロー)が訪問したと聞いてからもこのエリアへの期待度の高さが伺える。(ガーディアン紙からの記事)
貯水池 貯水池
看板 「London Wildlife Trust(ロンドンワイルドライフトラスト)」
旧コールハウス(石炭取扱店)を再利用した小さなカフェは、レザボアの脇の小道にぽつりと存在する。オーナーのリジーさんは、女優を目指し、カフェオーナーに転職した面白い経歴を持つ方。詳細はこちらのリンクを!
カフェの外観 外観「Lizzy’s at the Coal House Café」
カフェの内観 内装
メニューは決まってシンプル。珈琲のクオリティもハックニー地区で3本の指に入ると思う。シンプルだが、素材に拘りしっかりとした下味が特徴。味付けもモダンで、オシャレなヨーロピアンカフェメニューだが、クオリティが実に高いし、値段も良心的。週末は、地元の人で賑わうので、週中が狙い目。
メニュー メニュー
この地域は、ユダヤ系の移民が多く住むスタンフォードヒル(STAMFORD HILL)が目と鼻の先。ソルトビーフの歯ごたえと下味がしっかりとして肉厚の自家製ソルトビーフロール(バーガー)。ユダヤ人街への彼らなりのトリビュート的な一品。
20170214_soltbeaf ソルトビーフロール
パンチェッタ パンチェッタとガーリックピーズ、ローストトマトのバジルオイルソース
トーストは、サワードウブレッドかライブレッドから選べる。パンチェッタのカリカリ感とニンニクとグリーンピースのソテーの相性が抜群。トマトの上に、すりおろしの生姜をふんだんに乗せて、ローストした意外と絶妙なバランスを醸し出すアイデア抜群のローストトマト。
バナナケーキ ホームメイド バナナチョコーレートケーキ
全てのケーキもシェフにより自家製。クリームチーズで甘みをおさえたケーキも抜群です。
コーヒー 珈琲
イーストロンドンでも評価の高い珈琲
天気が良い日は、店内から階段を上がり屋上へ、広大な貯水池が一望できる爽快感。実に春が待ち遠しい。
20170214_loof 屋上からの眺め
中東料理に触発されたレーズンとクミンでソテーされたキノアとカリフラワーのサラダ等、メニューも現在のロンドンの人種の坩堝を表現しているようなコスモポリタンな料理で構成されている。ほとんど全ての食材は、ロンドンのローカルビジネスから仕入れをするなどコミュニティーの為に存在するカフェ。ロンドナーでも、ハックニーにこのような場所が存在することを知らない人も多い。ましてや、このリジーコールカフェの存在を知っている人は未だ少ないだろう。
この安定感と小さなスケールだが、街の喧騒を離れた落ち着ける自然をバックに楽しめるカフェ。オーナーのリジー曰く、近い将来には、夜のサービスも始めたいらしい。彼女の今後の動向に目が離せないし、その成長がより楽しみだ。

Lizzy’s at the Coal House
住所: Lordship Road, London, N16 5HQ
(ウッドベリーウェットランド入り口からのアクセス)
TEL:+44 20 8809 6207
http://www.woodberrywetlands.org.uk/
営業日/時間: 毎日 9:00 – 16:00
最寄り駅:地下鉄Manor House駅から徒歩10分程
instagram
Text&Photo by Tatsuo Hino

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日野 達雄

日野達雄

英国在住歴19年のメディア/ファッションコンサルタント。
英スタイル雑誌の出身で英/日の雑誌にも寄稿をするライターでありながら、音楽、ファッション、フード、写真と様々なジャンルでのコンサルティング業務に携わる。

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