インドやパキスタンを一度も訪問した経験も無く、初めて今ロンドンで人気のボンベイカフェ『DISHOOM』に行った時は衝撃的だった。世論調査でイギリス人が最も好きな食べ物は、フィッシュ&チップスでも無く、実は日本人も好きなカレー。昔から移民の居住地域として発展を遂げたロンドン東地区のBRICK LANE(ブリックレーン)は世界的にも有名なカレー街である。イギリス人男性にとって3種の神器は、カレー、サッカーとビールだというジョークがあるぐらい、カレーがイギリスに密着した食べ物でそのレベルは非常に高いのも頷ける。
この『DISHOOM』は、今や殆ど存在しなくなったIRANI CAFÉ(イラニカフェ)にインスピレーションされた新種のカレー屋と言って良いだろう。イラニカフェは、ゾロアスター教を信仰するイラン人移民が19世紀にインドやパキスタンに移住して開いたカフェで、1950〜60年代が全盛期を迎えたが現在はイラニカフェ自体も僅か数える程しか存在しないらしい。
食べ物は、その付随する環境による臨場感により味が変わると良く言うが、トータルで良く出来たレストランだとつくづく思う。どの店舗も長蛇の列で1時間〜2時間待ちというのも当たり前。特に夕食は、ある一定の人数が揃ったグループブッキングしかしないので(朝食と昼食は予約可)、予約は絶対に必要。世論一般投票で、英国ベストレストランを2年連続して受賞するぐらいの人気ぶり。
ボンベイでのイラニカフェは、ヒンズー教徒、イスラム教徒、キリスト教徒などが無関係に集まっていたオープンなカフェカルチャーを体現していた憩いの場所だったらしい。まさしくその精神を引き継いでいるモダンストリートインディアン、是非一度お試しください。
この『DISHOOM』は、今や殆ど存在しなくなったIRANI CAFÉ(イラニカフェ)にインスピレーションされた新種のカレー屋と言って良いだろう。イラニカフェは、ゾロアスター教を信仰するイラン人移民が19世紀にインドやパキスタンに移住して開いたカフェで、1950〜60年代が全盛期を迎えたが現在はイラニカフェ自体も僅か数える程しか存在しないらしい。
DISHOOM KINGSCROSSの外観
ロンドンに4店舗、スコットランドのエディンバラに1店舗と各店舗もどこも大人気だが、中でも現在、急ピッチで再開発されているキングスクロスの店舗が実に雰囲気があり、一番お勧めできる店舗。とにかくクラシックな軒並みにあるカレー屋と異なり内装が凝っている。これがまさしくボンベイ発祥のイラニカフェを再現した体裁になっている。新生キングスクロスは、近年セントラルセントマーチンズ大学の校舎を誘致したり、多くのパブリックスペース(公共エリア)を提供し、実にゆとりを感じられるエリア。今後、ヨーロッパのグーグル本社の誘致が決まっている等、商業施設とビジネス施設、公共施設が共存するポテンシャルの高い注目のエリア。敷地面積は、ほぼロンドンのSOHOと変わらないぐらいの広大さである。 Granary Square(グラナリー広場)噴水をフィチャーした広場。こういった公共スペースがあるのも今らしい
建設猛ラッシュの新キングスクロス。 前回のコラムで紹介した『SPIRITLAND』もここにある
映画のワンシーンのようなノスタルジックな内装と人。金持ちビジネスマン、汗かきのタクシードライバー、仲の良いカップル。ベントウッドチェアにセピア色の家族写真の横で学生が朝食を食べている風景。色々な街のキャラクターが集まる憩いの場所であり、作家がモチーフにする題材を探すにはうってつけのような場所。 一瞬、ボンベイに自分が居るのでは?という錯覚させられる場所である。メニューは、ボンベイのストリートフードをインスピレーションに、クラシックなカレーとディッシュをお洒落に盛り付けながら、新感覚のカレー風味なディッシュも楽しめる構成になっていて、そこがイギリスっ子に受けている大きな理由である。 メインのバーエリア。スパイスを効かしたカクテルを出すなどインドとカクテルをうまく調合したドリンクメニューは嬉しい。
地下1Fからの階段で。暖かみのあるガスライト。
イラニカフェの装飾品にインスピレーションを受けた様々な肖像画やファミリーフォトを内装に。
内装をよりしっかりみたい人は、こちらでご覧いただけます。
内装をよりしっかりみたい人は、こちらでご覧いただけます。
砂糖、パワフルなスパイスの融合。ハウスチャイは、彼らのシグネチャードリンクの一つ。オカワリ自由!
コリアンダー、辛めのチリソースにタマリンドソース
お薦めのオクラフライ。若干油っこいが濃いスパイスが効いていてこれは実に病みつきになる
シェフスペシャルの一品『Lamb Raan Bun』 。時間をかけて煮込んだ子羊の足肉が柔らくとてもジューシー。インドスタイルのコールスローに、揚げた青唐辛子が乗ったチップス。今までに見た事がないバーガースタイルは絶品。
24時間かけて煮込んだお薦めのハウスダールカレー。レンズ豆の味もしっかりとしてソースはクリーミーでコクがある。
チキンルービー『Chicken Ruby』。日本にも馴染みのあるスタイルのカレー。味は、イギリス発祥のチキンティッカマサラに似ている。鶏肉をタンドールで焼き、トマトとクルームをベースにしたカレーソース。辛くも無くまろやかでコクのある風味。
チキンベリービリヤニ『Chicken Berry Britannia』。ルーツは、イランにあるらしい。米とカレーを層状に重ねて、融合する香りの高い一品。ボンベイスタイルらしい。
マンゴとフェンネルシードのラッシー。ヨーグルトベースの代表的な飲み物。上記ビリヤニにベリーを入れたり、マンゴラッシーにフェネルシードを入れたりと組み合わせが面白く、何せ美味しい。
見ての通り、ディッシュ自体もクラシックなカレー屋とのアプローチと違いがあり、新しい感覚のカレー屋として長蛇の列が並ぶ理由も十分に分かる。カレーの醍醐味はスパイス。ここの特徴は、あまり通常のカレー屋では感じない組み合わせと素材のフレッシュ感が特徴的だ。クラシックなカレー屋では、お目にかからないディッシュがあるなどメニューも内装と同様に試行錯誤して、カレーを新しい角度で提案したいという意識の高さを感じられる。今までカレー屋と言えば、クラシック/トラディッショナルなスタイルかミシュラン星がつくような高級創作系しか存在していなかったが、『Dishoom』は値段が手頃の上、実にスパイスの使い方が上手い。食べ物は、その付随する環境による臨場感により味が変わると良く言うが、トータルで良く出来たレストランだとつくづく思う。どの店舗も長蛇の列で1時間〜2時間待ちというのも当たり前。特に夕食は、ある一定の人数が揃ったグループブッキングしかしないので(朝食と昼食は予約可)、予約は絶対に必要。世論一般投票で、英国ベストレストランを2年連続して受賞するぐらいの人気ぶり。
ボンベイでのイラニカフェは、ヒンズー教徒、イスラム教徒、キリスト教徒などが無関係に集まっていたオープンなカフェカルチャーを体現していた憩いの場所だったらしい。まさしくその精神を引き継いでいるモダンストリートインディアン、是非一度お試しください。
Dishoom Kings Cross
住所:5 Stable St, Kings Cross, London N1C 4AB
TEL:+44 (0) 20 7420 9321
http://www.dishoom.com/kings-cross/
営業日/時間:
月曜日〜水曜日 9:00〜23:00
木曜日と金曜日 8:00〜24:00
土曜日 9:00〜24:00
日曜日 9:00〜23:00
最寄り駅:地下鉄 KINGS CROS駅から徒歩5分程
日野達雄
英国在住歴19年のメディア/ファッションコンサルタント。
英スタイル雑誌の出身で英/日の雑誌にも寄稿をするライターでありながら、音楽、ファッション、フード、写真と様々なジャンルでのコンサルティング業務に携わる。