「まるで美しいアート作品みたい!」
オレンジ、ダーク・レッド、緑にパープル。小規模ながら、ロンドンのオシャレさんたちで賑わうブロードウェイ・マーケットで、ずらりと並んだ色とりどりの瓶詰めを見て、思わず声に出してしまいました。
それは、カイリー・ニュートン(Kylee Newton)さんが手がける「ニュートン&ポット(Newton&Pott)」のストール(屋台)で売られているジャムやチャツネなどの保存食です。
こうしたイギリス伝統の昔ながらの保存食は、今やスーパーの棚にあらゆる種類のものが並んでいて、自分で作らなくても好きな時に手にいれることができます。
一方で、市販のものに使用される保存料や着色料などを避けたいと、手作りを好む人もいます。また、家庭菜園でたくさん採れた野菜や果物を無駄にしないよう、せっせと保存食を作る人たちもいます。あるいは私のように、以前もらった手作りチャツネがあまりにもおいしくて、レシピを教えてもらい、以来、手作りが習慣になったという人もいるでしょう。
そんな人たちの間で最近人気となっているのが、イギリスの保存食に新風を巻き起こしたニュートン&ポットなのです。
2015年にカイリーさんによるレシピ本『the modern preserver』が発売され、伝統的レシピにはなかった斬新なアイディアと、美しいビジュアルが、メディアでもたびたび取り上げられるようになります。そして今では、ハロッズをはじめとして、ロンドンのみならず、イギリス各地の高級デリなどでもニュートン&ポットの製品が販売されるようになりました。
アートを学び、ターナー賞を受賞したことでも知られる写真家ヴォルフガング・ティルマンスのロンドンのスタジオで10年間働いていたという経歴のカイリーさん。彼女にとって、アーティストやクリエイターの集まるこの地でビジネスを始めるというのは、ごく自然なことだったのかもしれません。
「市場での売り上げは天候によってもかなり差があります。少ないときだと20個くらい、多ければ100くらいでしょうか。
これからクリスマスの時期にかけては売り上げが一気に300個くらいに増えます。というのも、イギリスではチャツネやピクルスなどはクリスマスのディナーテーブルに欠かせないものですから。また、ちょっとしたクリスマスのプレゼントを探している人が購入していくことも多いですね。」
また、イギリス伝統の保存食の一種「ピッカリリ」も人気だとか。
「ピカッリリは、大量の野菜を機械を使わずに手で刻むので、作り上げるのに2日がかりの商品なんです。
そんな風に、私たちの商品は、一般の人が家で作るのと同様に、まったくのハンドメイド。だからそれが市販の保存食よりもおいしくしている秘密なのだと思います。普段、スーパーのジャムに慣れているお客さんが、私たちのジャムを食べて『これはちゃんと果物の味がするわ!』と驚く人もいるんですよ。」
彼女自身のお気に入りを聞くと、常に旬のものを使って料理し、それを食べることが好きなので、季節によって好きなものが変わるとの答え。
「例えば夏ならばアンズとアマレットを使ったジャム。これはクロワッサンにとてもよく合うし、ケーキを焼く時に混ぜてもとても美味しいのです。
また、タマリロのチャツネも大好きです。タマリロはコロンビア原産のフルーツで、私が生まれ育ったニュージーランドではいたるところで育っています。子どもの頃から食べていたこのチャツネは故郷を思い出させる懐かしい味。これをポーチドエッグに載せた朝食は大のお気に入りです。」
幸いなことに、どちらもカイリーさんの著書にレシピが紹介されています。先月末から冬時間となり、午後4時前には暗くなってしまうイギリスの秋の夜長。お鍋でコトコトと野菜と果物を煮込んで、チャツネ作りを楽しみたいと思います。
*Newton & Pottウェブサイト:http://www.newtonandpott.co.uk
*Broadway Marketウェブサイト:https://broadwaymarket.co.uk
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王立キュー植物園、5年の改築を経て再オープンしたヴィクトリア時代の大温室
オレンジ、ダーク・レッド、緑にパープル。小規模ながら、ロンドンのオシャレさんたちで賑わうブロードウェイ・マーケットで、ずらりと並んだ色とりどりの瓶詰めを見て、思わず声に出してしまいました。
それは、カイリー・ニュートン(Kylee Newton)さんが手がける「ニュートン&ポット(Newton&Pott)」のストール(屋台)で売られているジャムやチャツネなどの保存食です。
絵の具のように美しい色彩のガラス瓶が並ぶストール。Photo:©︎Hung Quach
公園では黄色い落ち葉が一面に広がり、収穫祭も各地で行われているこの時期は、冬に向けて保存食を作るのに忙しい季節。イギリスでも、果物や野菜をジャムにしたり、ピクルスやチャツネにすることは、ずいぶん昔から行われてきました。こうしたイギリス伝統の昔ながらの保存食は、今やスーパーの棚にあらゆる種類のものが並んでいて、自分で作らなくても好きな時に手にいれることができます。
一方で、市販のものに使用される保存料や着色料などを避けたいと、手作りを好む人もいます。また、家庭菜園でたくさん採れた野菜や果物を無駄にしないよう、せっせと保存食を作る人たちもいます。あるいは私のように、以前もらった手作りチャツネがあまりにもおいしくて、レシピを教えてもらい、以来、手作りが習慣になったという人もいるでしょう。
そんな人たちの間で最近人気となっているのが、イギリスの保存食に新風を巻き起こしたニュートン&ポットなのです。
2015年にカイリーさんによるレシピ本『the modern preserver』が発売され、伝統的レシピにはなかった斬新なアイディアと、美しいビジュアルが、メディアでもたびたび取り上げられるようになります。そして今では、ハロッズをはじめとして、ロンドンのみならず、イギリス各地の高級デリなどでもニュートン&ポットの製品が販売されるようになりました。
ニュージーランドの出身のカイリーさん。友人にプレゼントとして作っていたチャツネやジャムが評判を呼び、それがビジネスにつながったという。Photo: ©︎Hung Quach
「ブロードウェイ・マーケットで商品の販売を始めたのは約5年前からです。このマーケットがあるハックニーに住んでいるので、12年前に開設されたときから、客としてよく来ていたのです。ここの素晴らしいところは、ただおいしいストリート・フードが売られているというだけでなく、陶磁器やジュエリー、木工作品、革製品といった、たくさんの素晴らしい手仕事による作品も集まっていることなのです。」 アートを学び、ターナー賞を受賞したことでも知られる写真家ヴォルフガング・ティルマンスのロンドンのスタジオで10年間働いていたという経歴のカイリーさん。彼女にとって、アーティストやクリエイターの集まるこの地でビジネスを始めるというのは、ごく自然なことだったのかもしれません。
「市場での売り上げは天候によってもかなり差があります。少ないときだと20個くらい、多ければ100くらいでしょうか。
これからクリスマスの時期にかけては売り上げが一気に300個くらいに増えます。というのも、イギリスではチャツネやピクルスなどはクリスマスのディナーテーブルに欠かせないものですから。また、ちょっとしたクリスマスのプレゼントを探している人が購入していくことも多いですね。」
部屋にオブジェとして飾っておきたいような、美しい見た目のピクルスも人気がある。Photo: ©︎Hung Quach
一番人気の商品は「 キャラメライズド・レッド・オニオン・チャットニー」とのこと。モダンなツイストの効いた組み合わせが多いニュートン&ポットの商品の中では、イギリス人にとって最も馴染みのあるものというのがその理由のようです。また、イギリス伝統の保存食の一種「ピッカリリ」も人気だとか。
「ピカッリリは、大量の野菜を機械を使わずに手で刻むので、作り上げるのに2日がかりの商品なんです。
そんな風に、私たちの商品は、一般の人が家で作るのと同様に、まったくのハンドメイド。だからそれが市販の保存食よりもおいしくしている秘密なのだと思います。普段、スーパーのジャムに慣れているお客さんが、私たちのジャムを食べて『これはちゃんと果物の味がするわ!』と驚く人もいるんですよ。」
右端の鮮やかな黄色がピッカリリ。イギリス人に特に人気だ。
伝統的イギリスのレシピだと、ジャムはフルーツと砂糖を同量で作る、というものも多いのですが、カイリーさんのレシピではフルーツと砂糖の割合を6対4にしています。だからこそ、砂糖の甘みが強い普通のジャムよりも、果物の味をしっかりと感じることができるのです。 彼女自身のお気に入りを聞くと、常に旬のものを使って料理し、それを食べることが好きなので、季節によって好きなものが変わるとの答え。
「例えば夏ならばアンズとアマレットを使ったジャム。これはクロワッサンにとてもよく合うし、ケーキを焼く時に混ぜてもとても美味しいのです。
また、タマリロのチャツネも大好きです。タマリロはコロンビア原産のフルーツで、私が生まれ育ったニュージーランドではいたるところで育っています。子どもの頃から食べていたこのチャツネは故郷を思い出させる懐かしい味。これをポーチドエッグに載せた朝食は大のお気に入りです。」
ストールでは、たいていの商品の試食が可能。タマリロのチャツネはカイリーさんの故郷の味でもある。
色々と試食をさせてもらい、最終的に私が買って帰ったのは、ビーツとオレンジのチャツネと、リンゴとトマトのチャツネ。どちらも確かに野菜とフルーツの味がしっかりして、甘すぎるということがありません。前者はヤギのチーズに、後者はソーセージと合わせたら、あまりにもおいしくて、あっという間に瓶の中身が減ってしまいました。幸いなことに、どちらもカイリーさんの著書にレシピが紹介されています。先月末から冬時間となり、午後4時前には暗くなってしまうイギリスの秋の夜長。お鍋でコトコトと野菜と果物を煮込んで、チャツネ作りを楽しみたいと思います。
カイリーさんの著書『the modern preserver』。
*Newton & Pottウェブサイト:http://www.newtonandpott.co.uk
*Broadway Marketウェブサイト:https://broadwaymarket.co.uk
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マクギネス真美
英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。
ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。
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