映画監督として知られながらも農場の経営・運営から、レストランの経営まで多角的に展開をしてきたガイ・リッチー。マドンナとの離婚の影響もあったのかなかったのか、レストランビジネスから一時期離脱していたのだが、昨年の末からイングリッシュパブを新しく改築、オープンするという噂を小耳に挟んでいた。オープンしてから3か月後にようやく行く機会ができたので足を運んでみた。ロケーションは、ロンドン市内中心街にあたるフィッツロビア地区。築1792年のイングリッシュパブを改装したいわゆるフランチャイズではない、まさしくオーナーのスタイルが前面に出たパブ。イギリスっぽさがあり、個性のあるパブは前述した通り数は減っている。BTタワー(テレコムタワー)の麓に居を構えるこのパブダイニングは、メインストリートからちょっと入った所にあり閑静なエリアに佇む穴場的な存在であるのが伺える。グランドフロアがパブで上階がレストラン、最上階は貸切専門のプライベートダイニングという構成。イギリスを代表する映画監督/脚本家だけあって、内装はイギリスっぽさを前面に出したまるでカントリーパブに迷い込んだのではないか?と錯覚を覚えるぐらいのインテリアの徹底ぶりに感銘を受ける。
店内に飾られている人物画以外の絵画は、 一人のアーティストにお願いして、その都度描いて頂いている作品らしい。レストランで使用している食材の躍動感を捉え店内のカントリー感を彷彿させる。このペインターの方も、食材と同様にこのパブの世界観を伝えるには欠かせない人物。
先ずはメニュー。
メニューの冒頭に書かれたのがレストランの食材に対するモットー。『Whether foraged, delivered by cycle courier in the early hours fresh from the boat or straight from our farm to your fork, our menu is created using the highest quality & sustainably resourced seasonal produce』
早朝にキャッチした食物を産地直送でそのまま。メニューは最高品質でサステイナブルな季節にあった素材を使用している。その上、 グルーテンフリー(GF)、ベジタリアン(V)ディッシュが多いところは、今っぽい。
パブダイニングとしての社交的な雰囲気、ロンドンの都会的喧騒と相対的なカントリースタイルの内装からフィッツロビアでも静かな趣のあるロケーション。特にそう行ったオーナーの風合いやスタイルが前面に出たパブは、減っているし昔みたいにノスタルジアを感じさせてくれるパブの数は確実に減っている。農場と都市、全体的な食事の方向性も、食材のテキスチャーによる硬さと柔らかさ、味付けの相対性甘みと辛み、甘みと酸味を如何に楽しむか?その意外性を楽しむか?に重きをおいているのではと個人的に感じた。
この相対性/コントラストが全てのメインのコンセプトでは?当日は平日だったのでそんなに忙しくはなかったが、このままひっそりとした存在でいて欲しいし、また行きたいと素直に思えた皆に是非オススメしたいパブダイニング、是非行ってみてください!
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BT(テレコム)タワーの麓もこんなに近くでBTタワーを見たのは初かも?
アルフレスコ(屋外)パブのように外に座れる席も存在する
シェアリングプレートがメインの1階ダイニングエリア
先ずはメニュー。
友人が到着するまでは、とりあえずビールを一杯。このビールは、ガイ・リッチーがウィルシャー/ドーセット境界で経営運営しているビール会社『Gritchie Brewing Company』の地ビール。伝統的なビール精製法で作られていて、ピルスナーよりコクがあり飲みやすいビール。
遅れて向かってきている友人を待ちながら スターターを少しオーダーすることに。
遅れて向かってきている友人を待ちながら スターターを少しオーダーすることに。
鶏皮とロベージ、ブラックガーリックケチャップ。脂っこい鶏皮を引きのばしたパリパリの薄焼きしているので脂っこさがなく甘濃い凝縮されたガーリック味のケチャップとのバランスも抜群。
フェネルのサラダとハリッサソースでマリネートされた海老。ハリッサとは、北アフリカ原産の調味料で、オリーブオイルと赤唐辛子をベースに、クミン、キャラウェイ、コリアンダーなどのスパイスを混ぜたホットソース。間違いない一品。
コーンウォール産の蟹とトマト、バジルソースを色々なテキスチャーで、写真にある蟹がぎっしり詰まったスフレと一緒に召し上がる。トマトは口に入れるととろける若干固いジェル状シートと濃いバジルソース。季節の蟹をプレートとスフレと二度楽しめる。
お店の方が一番おすすめしてくれた一品。鰡(ぼら)の丸焼きだが、プレゼンテーションが斬新。クラッシュされたお芋、グリーンピース、小切されたアスパラガスとサンファイア(野菜)がそのまま背開きされ、盛り付けられている。
Carverダックの定評があるデボン産のダックステーキ。ダックステーキ、今度家で作ってみようと思いながら、これだけで白飯が結構いける。
イギリスで愛されているモンクフッシュ(アンコウ)のスパイス焼き。アーティチョークとアリオリソースで。見かけはまさしくプリプリのチキンソテーだ。日替わりでかわるメニューで前述の鰡の丸焼きと並ぶ今日の当たりの一品。
季節のアスパラガスと小ぶりなポテトのロースト、トラフルマヨネーズ。イギリス人はとにかくポテトが好きなので、必ず必需品としてメニューにポテトがあるとオーダーするはめに。このトラフルマヨネーズはかなり美味しかった。
トウモロコシとハリッサソースのリゾット。懐かしい味、じっくりコトコト濃厚コーンポタージュ、ポッカのスウィートコーンの味がそのまま。
友人の誘いという事で、あのガイ・リッチーのレストランってね?ちょっと期待できないかもという悲観的でダメな先入観を持ちながら行ってみたのだが、変な偏見は持つべきではないと痛感した一日。パブダイニングとしての社交的な雰囲気、ロンドンの都会的喧騒と相対的なカントリースタイルの内装からフィッツロビアでも静かな趣のあるロケーション。特にそう行ったオーナーの風合いやスタイルが前面に出たパブは、減っているし昔みたいにノスタルジアを感じさせてくれるパブの数は確実に減っている。農場と都市、全体的な食事の方向性も、食材のテキスチャーによる硬さと柔らかさ、味付けの相対性甘みと辛み、甘みと酸味を如何に楽しむか?その意外性を楽しむか?に重きをおいているのではと個人的に感じた。
この相対性/コントラストが全てのメインのコンセプトでは?当日は平日だったのでそんなに忙しくはなかったが、このままひっそりとした存在でいて欲しいし、また行きたいと素直に思えた皆に是非オススメしたいパブダイニング、是非行ってみてください!
LORE OF THE LAND
住所: 4 Conway St, Fitzrovia, London W1T 6BB
最寄り駅:Warren Street/Great Portland Street駅から約徒歩5分程
gritchiepubs.com
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日野達雄
英国在住歴19年のメディア/ファッションコンサルタント。
英スタイル雑誌の出身で英/日の雑誌にも寄稿をするライターでありながら、音楽、ファッション、フード、写真と様々なジャンルでのコンサルティング業務に携わる。