「おいしいイギリス」に出会う本 | BRITISH MADE

English Garden Diary 「おいしいイギリス」に出会う本

2020.08.20

イギリス料理 イギリス料理はやっぱりおいしい!
「イギリス料理がおいしい。」ということは、‘British Made Stories’ 読者の皆さまならすでにご存知かもしれません。
在英17年の私は、イギリス人義母のイギリス料理を初めてごちそうになって以来、そのおいしさに開眼。義母に教わったり、料理書を読んだり、取材にでかけたりして、イギリス料理について調べたり、食べたり、作ったりしてきました。
レシピ イギリス人義母のレシピ帖は、どんな料理書にも負けないほど大切。
先日、そのおいしいイギリス料理についてセミナーを行ったのですが、参加者の方から「イギリス料理のおすすめ本を教えて欲しい。」というリクエストをいただきました。

イギリスでは毎年、たくさんの料理書が発売されているので、確かに、どんな本がよいのか、迷ってしまうかもしれません。読者の皆さんの中にも、きっとイギリスの料理書にご興味のある方もいらっしゃると思うので、今回は、おすすめの料理書をご紹介したいと思います。
イギリスの料理本 料理関係の本はどんどん増えていくばかり。

1. Mary Berry’s Complete Cook Book by Mary Berry (Dorling Kindersley刊)

Mary Berry’s Complete Cook Book Mary Berry’s Complete Cook Book
日本でもおなじみのテレビ番組 「ザ·グレート・ブリティッシュ・ベイクオフ (The Great British Bake Off)」の初代審査員であったメアリー・ベアリーさんによるレシピブック。1000種類を超えるレシピが掲載されています。イギリス料理以外のものもあるのですが、オーセンティックなイギリス料理はほぼ網羅されています。この本は夫が独立して一人暮らしを始めた頃に、義母がプレゼントしたものですが、今は私のほうが愛用しています。

ある番組でメアリーさんがこの本の制作エピソードを語っていたのが印象に残っています。というのは、この本の制作にあたり、出版社に対して、使用する食品などの経費については、ギャラとは別に支払ってもらうという約束を取り付けてから、本作りに取り組んだというのです。というのも、レシピをできる限り完璧なものにするためには、何度も試作をしなければならない。でも、もし経費がもらえないとしたら、予算のことを考えて「完全ではないけど、もうこれくらいでいいか。」という妥協が出てしまいかねない。でも、そうはしたくなかった。というのです。

このお話を聞いた時、これだけたくさんの種類のレシピを、それほどの思いで作り、撮影し、一冊にまとめられたのだな、と関心しました。すべてに出来上がり写真があり、中には作業工程を載せているものもあるのが便利です。

Mary Berryさんウェブサイト:www.maryberry.co.uk

2. The Kitchen Diary by Nigel Slater (Fourth Estate刊)

The Kitchen Diary The Kitchen Diary
ナイジェル・スレイターさんは、イギリスの新聞『ガーディアン』などでフードコラムを執筆するほか、たくさんの料理書を出版しているフード・ライターであり、多くの料理番組にも出演しています。

私が初めて手にした彼のレシピ本がこの一冊。2006年のクリスマスに義弟夫婦にリクエストしてプレゼントしてもらったものです。

実はこの本、約5cmもの厚さがあります。彼のほかのレシピ本も同様に分厚いものが多いのですが、イギリスの料理書にはこれくらいボリュームのあるものも珍しくありません。イギリスでは、装丁や写真が美しく、どっしりとボリュームがあり、テーブルに置いておいて、ゲストに気軽に手にとってもらったり、インテリアの一部にもなるような本を「コーヒーテーブルブック」と呼びますが、ナイジェル・スレイターさんのハードカバーの本にはそういった意味でも重宝するものも多くあります。

「ダイアリー」という題名の通り、中は、月ごとにナイジェルさんが実際に食べたものが紹介されています。旬の食べ物、素材にこだわる彼らしく、シンプルかつ誠実な印象の料理が登場します。

65ページに登場するトリークルタルトがおすすめです。

Nigel Slaterさんウェブサイト:www.nigelslater.com

3. Pride and Pudding by Regula Ysewijn (Murdoch Books刊)

Pride and Pudding Pride and Pudding
「プディング」というのは、現代のイギリスでは「デザート」全般を意味する言葉です。でも、その歴史は古く、かつては甘いお菓子ではなく、動物の腸や胃袋に、肉や血、ドライフルーツやスパイスなどを詰めて調理したものもプディングと呼ばれていました(現在でも食べられているブラックプディングやハギスなどがそうです)。

そのプディングの魅力にとりつかれ、研究し続けて、この一冊の美しい書物にまとめたのは、ベルギー生まれのレグラ・イズウェインさん。彼女はイギリスに住んでいるわけでも、大学などで食文化を研究しているというわけでもなかったのですが、イギリスの食べ物、とくにプディングへの興味から研究を続け、ブログに発表。彼女自身が撮影した美しい写真とともに人気となり、ついにはイギリスのプディングについての本書を出版することとなりました。

プディングの歴史が詳細に綴られているだけでなく、額縁に入れて飾っておきたくなるような美しい写真を見ているだけでも幸せな気分になる一冊です。14世紀、16世紀、18世紀のレシピなども掲載されています。アンティークの調理道具や器の写真などもあって、とにかくイギリスのプディングの歴史を知るには絶好の一冊です。

Regula Ysewijnさんウェブサイト:www.missfoodwise.com

4. The Official Downton Abbey Cookbook by Annie Gray (White Lion Publishing刊)

The Official Downton Abbey Cookbook The Official Downton Abbey Cookbook
テレビドラマも映画も、日本でも大ヒットした『ダウントンアビー』の公式料理ブックです。日本でもすでに翻訳版が出版されているので、書店でご覧になった方もいるかもしれませんね。

著者のアニー・グレイさんは、テレビのドキュメンタリー番組などでもおなじみの食文化研究家。そのため、時代考証などもしっかりされたレシピが載っています。

他の料理書と違うのは、『ダウントンアビー』の登場人物やさまざまなシーンの写真もふんだんに掲載されているところです。番組のファンなら、料理長のパットモアさんのキッチンの調理道具なども見逃せません。

レシピはアップステアーズ(主人)とダウンステアーズ(使用人)のものに分かれています。イギリスの普段の暮らしで馴染みがあるのは、圧倒的にダウンステアーズのレシピに登場するものです。

234ページに登場するサマープディングがおすすめ。レシピとは違ってしまいますが、冷凍のフルーツ(ベリー)を使っても美味しく作れますので、ぜひ試してみてください。

Annie Grayさんウェブサイト:www.anniegray.co.uk


このように、イギリスには美しいレシピ本がたくさんあります。そして、例年、クリスマスに向けて新しい料理書の出版が続きます(クリスマスプレゼントにレシピ本をプレゼントすることも多いのです)。

レシピだけなら、英語でもかなりわかりやすいと思いますので、ぜひ一冊、イギリスのレシピ本を本棚に加えてみてはいかがでしょうか。


Photo&Text by Mami McGuinness


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マクギネス真美

マクギネス真美

英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。

ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。

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