一度は体験したい 英国伝統アフタヌーン・ティー:3つのこだわり | BRITISH MADE

川合亮平、僕のUK観光道 一度は体験したい 英国伝統アフタヌーン・ティー:3つのこだわり

2021.03.03

こんにちは、川合亮平です。

先日、ある方からこんな質問を受けました。

「川合さん、アフタヌーン・ティーってそもそも何なんですか?イギリス人は午後に必ず紅茶を飲む習慣がある、ということですか??」

あなたならどう答えますか?

僕の経験を踏まえて、ざっくばらんに回答すると、

●何?:
紅茶、プラス3種類(スコーン、サンドイッチ、そしてペイストリー)で構成されていることが多いです。
ペイストリーは小さな甘いお菓子(ケーキ)の総称で、各お店の個性が出やすい部分でもあります。

●どこでいただく?:
だいたいは外で食べますよね。
一般的に、ホテルのラウンジやレストランで、アフタヌーンティーが提供されています。

●どういう機会にいただく?毎日?:
毎日スコーンを頬張ってるアフタヌーン・ティー大好きっ子ちゃんも英国のどこかにいるかもしれません。
でも、一般的には、“ちょっと特別な時に”、というのが僕の個人的印象です。
何かのアニバーサリーにホテルでアフタヌーン・ティー、的な。
特別な会合に評判のお店でアフタヌーン・ティー、的な。

アフタヌーン・ティー © Claridge’s

ちょっとトリビア

そんなの知ってるよ!
というあなたへ、アフタヌーン・ティのちょっとトリビアも付け加えておきますね。

●トリビア1:『午後の紅茶』のあの人がアフタヌーンティー発明者!?
あのドリンクのパッケージの女性:ベッドフォード公爵夫人アンナ・マリア・ラッセルさん(1783〜1857)。
彼女が、今現在知られるアフタヌーンティーの形を導入した人だと考えられています。

●トリビア2:スコーンは実は後付けだった!?
そもそも、ランチとディナーの間の小腹を満たすために考案されたアフタヌーンティー。
もともとは、ケーキ、サンドイッチ、そして紅茶という組み合わせだったようです。
スコーンが導入され定着したのは、20世紀初頭に入ってからだと言われていますよ。

●トリビア3:ハイティー、クリームティー、アフタヌーンティー、全部違うもの。
混同されることもある、3つのティー文化。
厳密には全部別物、ということです。
アフタヌーンティーの時間が、午後2時〜5時(4時が最も一般的)なのに対し、
ハイティーは、午後5時〜7時。
ハイティーはもともと、“労働者の主食”として、パン+肉+パイ(そして紅茶)、という組み合わせのものらしいです。
そして、クリームティーは、10世紀後半にデボンシャー州の僧侶たちが寺院復旧工事に携わる民衆に対して、パンとクロテッドクリーム、イチゴジャムを振る舞ったことに端を発する習慣、とのことです。

へ〜〜〜。

英国屈指のアフタヌーン・ティー スポットは150年の歴史を持つ

クラリッジズ © Claridge’s:クラリッジズの外観

イギリスにアフタヌーン・ティーを提供するホテル・レストラン・カフェは数あれど、名実共にトップクラスなのが、約150年の歴史を持つ5つ星ホテル、クラリッジズのアフタヌーン・ティーです。
https://www.claridges.co.uk/restaurants-bars/afternoon-tea/

アフタヌーン・ティーに関して英国で最も権威があるとされるサイト“Afternoon Tea Awards”にて“Best Traditional Afternoon Tea ”を受賞するなど、これまで数々のアワードを受賞し、予約も数ヶ月とれないという人気スポット。

その魅力の秘密は?

食材や紅茶のクオリティに対する飽くなきこだわり、
そして、ホテルに一歩足を踏み入れた瞬間から始まる非日常的体験、だと個人的には分析しています。

老舗ならではの重厚感・高級感漂うロビーを歩き、アール・デコ全盛期をイメージしたレストラン・フロアで味わう英国伝統のアフタヌーン・ティー。

そういったトータルな体験が“Magical”であると言われています。

クラリッジズ クラリッジズ © Claridge’s

エグゼクティブ・シェフに独占インタビュー

クラリッジズ マーティン・ネイル氏
そんなクラリッジズのアフタヌーン・ティーを手がけているのが、同ホテルでエグゼクティブ・シェフを務めるマーティン・ネイルさん。

僕が敢行した、マーティンさん独占インタビューをお楽しみください。

マーティンさんは、ホテル内のレストラン(THE FOYER AND READING ROOM)、バー(THE FUMOIR BAR)、ルームサービス、そしてプライベート・イベントでのケータリング、全ての責任者。

クラリッジズが提供する“食”のトップに立つ人物で、笑顔が素敵な話しやすい好人物でした。

クラリッジズ・アフタヌーン・ティー:伝統へのこだわり

川合:
まず、クラリッジズのアフタヌーン・ティーの魅力をズバリ教えてください。

マーティンさん:
そうですね、まずクラリッジズには歴史があります。
アフタヌーン・ティーというのは、それなりの期待感を持って捉えられています。
そして、食(文化)というのは、今はどの国に行っても新しくなっていますよね。食(文化)について言えば、世界はとても小さくなったんです。
そういう背景を踏まえると、人々がアフタヌーン・ティーに期待しているのは、クラシックなあり方であり、我々が提供しているアフタヌーン・ティーがまさにそれなのです。
例えば、サンドイッチの具材にもクラシックなあり方が求められており、パンの耳を丁寧にカットし、中に入れる具材は、昔からの伝統的なものでないといけません。
つまり、キュウリ、スモークサーモン、卵が、クラシックな具材にあたります。
そして、スコーンとクロテッドクリームもそうです。

川合:
なるほど。伝統プラスアルファの何かこだわりはあるのですか?

マーティンさん:
はい。
伝統的なスタイルは守りつつ、我々はさらにエレガントな感じを出し、価値を高めたいと思っています。
常に、高級感を高める努力をしています。
例えば、伝統的にはストロベリー・ジャムも具材に入っていますが、我々はマルコ・ポーロ・ジェリーを代わりに使っています。全ての具材・素材のコンビネーションを考えてそのようにしているのです。
またペイストリーにしても、小さすぎず、大きすぎず、色や形、食感にも気を配って用意しています。
全てがとてもよく吟味されているのです。

注:マルコ・ポーロ・ジェリーは、紅茶の老舗マリアージュフレールが提供する紅茶ジャムです。19世紀、マリアージュ家によって考案されたとされています。

スコーン © Claridge’s

クラリッジズ・アフタヌーン・ティー:食材へのこだわり

川合:
細部まで気が配られているんですね。食材選びの基準などがあれば教えていただけますか?

マーティンさん:
今、イギリスで素晴らしいと思うのは、昔に比べて人々の食に対する意識が高くなったことです。
我々の大切な役割の一つは、イギリスの生産者を積極的に起用して、素晴らしい食材を生産する手伝いをすることだと思っています。

我々が調達する食材は、そういう観点で丁寧に吟味されているのです。
それぞれの食材の背後には、語るべきストーリーがあります。
例えばキュウリを使うときは、最高のキュウリ生産者の元へ行くわけです。
また、卵を使うときは、素晴らしい卵を生産している農場へ。日中は新鮮なハーブや花を食んで過ごしているフリーレンジ(放し飼い)の鶏からとれる卵を使います。
このような姿勢は、我々が使用する全ての食材にあてはまります。

川合:
すごい。食材ひとつひとつを自ら選ばれているのですか?

マーティンさん:
そうですよ。我々が調達しているハムにまつわるこんなエピソードもありますよ。
ある年のクリスマス、私は友達らと過ごしていたんですが、その時、ものすごく美味しいハムが食卓に登場したんです。
感激した私は、友人にすぐに確認しました。どこのハムだ?って。
イギリス西部ウェールズの近く、シュルーズベリーという地域の食肉業者から入手したということでした。
それで、私は早速、その翌日にシュルーズベリーの生産者に直接会いに行ったんですよ。
以来、クラリッジズのアフタヌーン・ティーの食材として彼のハムを15年間にわたって使っています。

アフタヌーンティー © Claridge’s

川合:
素晴らしい。足で稼ぐ、と言う感じですね。

マーティンさん:
その通りです。
彼の農場に行って、彼が手がけるハムを堪能して、その場で契約して、即クラリッジズで使い始めたんです。
私の仕事でまず大切なことは、ベストな素材を見つけることなんですよ。
そして、それらの食材を使って最高のコンビネーションを生み出す、ということですね。

川合:
紅茶にもマーティンさんのこだわりが反映されているんですね?

マーティンさん:
もちろん。
トレゴスナンという紅茶農場がイギリス西部コーンウォールにあり、我々はここの紅茶を使っています。
紅茶とコーヒーを選ぶときにまず大切にしていることは、私自身が知識を得るために専門家の話をしっかり聞くことです。
この茶葉はどこから来ているのかを知ることや、私が彼らの食材を購入することで、地元の経済に貢献できているか、という視点もとても大切になってきます。

(注釈):トレゴスナンは、英国産紅茶を生産している英国唯一の農場なんです。現状は難しいかもしれませんが、農場見学なんかも随時行っており、観光地としても注目スポットなのです:詳しくはwebsiteにて

アフタヌーンティー © Claridge’s

クラリッジズ・アフタヌーン・ティー:社会的責任のこだわり

川合:
食材提供者とのパートナーシップが大切という事ですね。

マーティンさん:
そうですね。
紅茶・コーヒー製造者を含む全ての食材業者は、ただ単に厨房の裏に毎日来て、食材を置いて行くだけの人たちではありません。
我々は彼らと個人的に親身になりたいと思っています。
彼らの仕事についてもっと知りたいのです。
その食材がどこから来るか知りたいのです。
さらに、我々が彼らに支払ったお金がどのように彼らの仕事に還元されているかも知りたいのです。
つまり、我々は彼らの食材を使うことで。コミュニティ全体の手助けをしたいとも思っているのです。
特に紅茶とコーヒー製造者に関しては。この考え方、コミュニティに還元する、ということは本当に重要なのです。
また、イギリス全体のことを考えると、もちろん、国の経済に貢献していることにもなりますし、イギリスの農家がより良い食材を製造し、彼らのビジネスの安定化に貢献していることにもなるんです。

アフタヌーンティー

そこまで言われたらもう食べるしかない、という気が個人的にはしているのですが、あなたはいかがですか?

自由に渡英できるようになったら、ヒースローから一直線でクラリッジズに行くぞ!思われているあなた、
予約は必須ですので、その点だけご注意くださいね。

ロンドンには本当に様々なタイプのアフタヌーン・ティーが存在しますが、
迷った場合はとりあえずクラリッジズを選んでおけば間違いなさそうです。
その後に、他の老舗を訪れていくのもよし、変わり種にチャレンジしていくのもよし、です。

川合亮平でした。

アフタヌーンティー

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Text by R.Kawai


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川合 亮平

川合 亮平

(かわいりょうへい)

通訳者・東京在住

関西の人気テレビ番組で紹介され、累計1万部突破の『なんでやねんを英語で言えますか?』(KADOKAWA)をはじめ、著書・翻訳書・関連書は10冊以上を数える。

通訳者としては直近で東京五輪関連のビジネス会議、アスリート通訳に携わる。その他、歌手のエド・シーラン、映画『ファンタビ』シリーズのエディ・レッドメイン、BBCドラマ『シャーロック』のベネディクト・カンバーバッチ、マーティン・フリーマン、ヒットドラマ『ダウントン・アビー』の主要キャストなど、ミュージシャン、俳優への通訳・インタビューも多数手がけている。

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